小祝さくらは今、人生初めての時間を過ごしている。まず、ギプス生活。当初はギプスが重いことにびっくりした。
「ゴルフをやっているときの何倍も肩こりがひどくなったり、首も痛くなったんです。寝るときは首より上の位置に手を上げておかないと血行が悪くなってむくんだりする。こういうことですごく体が疲れましたね」。そして、ゴルフができる日々はなんてありがたいんだろうと思ったという。

久しぶりに帰国した竹田麗央と会ったさくら。「楽しい時間を過ごすことができました」(Ph/本人提供)
「本当に左手が使えないことの不自由さと大変さを感じて、手が使えることに感謝しました。右手だけで全部やらなければいけない生活なので、ご飯も作れないですし洗い物もできない。ウーバーにお願いしたり、外食したりしていましたね」
以前の自分の夢が、案外疲れるものだとも感じたという。「毎日韓ドラを見ながらゆったりと生活することに憧れてもいたんです。でも実際にめっちゃ見る時間ができると、長時間座っていることがしんどくなることがわかった。5時間くらい座っているとお尻が痛くなるんです」
座って見過ぎである。「そうですね。深夜まで見てしまうこともあってよくないんです。でも、肌の調子がめっちゃよくなりました。毎日メイクもしないし、日にも当たらないから。グローブを着けない右手が白く戻ったし、ニキビも治ったり、肌もつやつやに。普段、相当負担があることをしていたんだなあと思いました」
以前ハマっていたパズルもやろうとしたけれど、「作りすぎて家にもう置くところがない。それにパズルを作る大変さもわかってるわけですよ。ずっと首が下を向いてるから痛くなるし、難点も多くて……」と真顔で話すさくら。

こいわい・さくら/1998年北海道生まれ。ニトリ所属。8歳でゴルフを始め、17年のプロテストで合格。19年初優勝、ツアー通算12勝。「1つ1つ前に進んでいっています」(写真/大澤進二 今年7月の明治安田レディス2025にて)
いろいろと〝暇つぶし法〟を検討した結果、アルバイトをしてみたいなという考えに至ったという。
「アプリで調べたりもしました。いい経験になるかなと。たとえばライブスタッフなんかだとバレないし、新聞配達も候補に挙げました。夜中の2時から朝の7時までと書いていたので、日焼けしないし、涼しいうちに稼げるし、夜中まで起きているという生活も正されるかなと思ったんです」。相変わらず、とんでもないことを思いつくプロゴルファーである。
そして、最近ギプスが外れたさくら。取ったとき、さすがに驚いたという。「筋肉が落ちているのにびっくりして。タルタルな感じでした。蒸れてふやけている感じ。1、2カ月くらいで戻ると言われたんですけど……」
戦っていないせいか、顔が穏やかだとも言われるらしい。「今年は治療に専念すると決めて、ゴルフができないとわかった段階で、ゴルフしたいとは思ってはいないです。でも、練習できるようになったときにきちんと当たるのかなとか、来年はどうなるんだろうとか、感覚は元に戻るのかなとか、そういう不安はあります」
不安は隠しつつ、日々前向きに生活しながら、準備期間を過ごしているのである。
※週刊ゴルフダイジェスト2025年11月25日号(ゴルフときどきタン塩より)

