
こいわい・さくら/1998年北海道生まれ。ニトリ所属。8歳でゴルフを始め、17年のプロテストで合格。19年初優勝、ツアー通算12勝。「私は元気です。少しずつ、前に進んでいきます」(今年5月のワールドレディスにて。写真/姉﨑正)
小祝さくらは、暇な時間があまり好きではない。けっこう予定を詰め込むタイプだ。だから今、左手首を手術して過ごす毎日も、案外忙しくしている。
「下半身のトレーニングや酸素カプセルに入ったりして体のケアをしています。酸素カプセルは、ケガの回復や疲れを取ること、美容などのためにいいらしいんです。確かに、元気になる気はします。最初は毎日、今は2日に1度になっていますけれど」
皆さんご存じのように、小祝さくらは人生で初めての手術をした。「手術は内視鏡で、寝ているだけだったので痛くはなかったんですけど、準備のための注射が痛かったですね。術後も痛みはありましたけど……でも入院自体は1泊で終わったんですよ」
入院は、〝親知らず〟の抜歯以来だ。今年7月の試合途中、打球後に今まで感じたことのない痛みを感じてから3カ月。「あのときは、ゴルフ人生終わってしまうのかな、と思うくらいの痛みを感じて。でも、まだ引退はしたくないと思いました」
「そのあともなかなか痛みが治まらなくて、ずっと原因がわからなくて病院を回ったんですけど、4つ目でようやく原因が判明したんです。それで手術の話が急遽出ました。それならば一日でも早く決断したほうがいいと思って、トレーナーさんやマネジャーさんたちと皆で話し合って、ひと晩改めて考えて決めました」
この先を考えての、根拠ある決断だ。決めたら迷いはない。このへんは小祝さくららしい。「皆さんから心配や応援の声をいただいて、本当に嬉しいですし、ありがたいなあと思っています」
人生で初めてのギプス生活だ。「ひじが動くと手首も回転してしまうので、固定しているんです」。 このあと抜糸して、状況を見ながらリハビリ生活に入る。無理をせずに、一つずつ。ずっと、ほぼゴルフだけと向き合ってきた小祝さくらにとって、初めてのことだらけの日々だ。
「こんなにゴルフをしないことも初めてです。最初は無理やり買い物に行ったりしていたんです。気晴らしにもなるし、今まで服を買いに行くタイミングもなかったので、その反動かもしれません。それに、ゴルフウェアではなくて私服を着る機会が増えたから(笑)。よく考えたら、あまり私服を持っていなくて。結構買いましたよ。でも、すぐに飽きてしまって」

手術前、今まであまりできなかった買い物に行ったり、祈願のために神社へ
電車に乗って移動もしている。「運転もできないですから。でも、電車は時間通りに動くし、安いし、いいことしかないです」。妙なところで〝しっかり者〟の顔がのぞく。
「全然気づかれないですよ。満員電車にも乗りました。腕がつぶれるかと思いました。人に寄っかからないとどうしようもないですし、世の中のサラリーマンは大変だなと思いました。皆さん、毎日朝から闘っているんですね。私は、8時台の電車には二度と乗らないと決めました」。さくらの〝初体験〟の日々は、次回に続く。
 
				
				
 
						
						


 
	 
	 
							 
							 
							