「道具を生かして振る」なんて、耳にタコができるほど言われてきた。だから、何度だってトライしたし、できずに諦めてきた。どうやったら「シャフトをしっかりしならせ道具を生かせるのか?」。その答えのひとつは“自分が頑張らない”ことではないか? 『ゴルフは道具を使うスポーツ』という根本に立ち返ることで見えてきた、飛距離アップ最大のヒントがここにあるという。月刊ゴルフダイジェスト12月号の内容を「みんなのゴルフダイジェスト」でも一部紹介する。

クラブに任せたことで僕は生き返った

画像: 田中秀道プロ:20年近く不調だったが、昨年「コスモヘルスカップ」で15年ぶりのトップ10フィニッシュを果たした

田中秀道プロ:20年近く不調だったが、昨年「コスモヘルスカップ」で15年ぶりのトップ10フィニッシュを果たした

日本ツアーで10勝を挙げ海外ツアーにも参戦。しかし、ドライバーイップスの発症により昨年の3月までゴルフをしたくないと思う状況だったという田中秀道。現在シニアツアーに参戦できるようになったのは、軟らかいシャフトを手にしたことがきっかけだという。

「昨年の春先のことですが、おじいちゃんが使うような〝ふにゃふにゃなクラブ〞を練習場で打ってみたんです。というのも、誰もいないコースで3球打って3球とも隣のホールに飛ぶような状態だったので、何か突拍子もないことをしなきゃと思い、使ったことのないような軟らかいクラブにしてみたんです。気持ち悪いくらいのふにゃふにゃだったんですが、実際に打ってみると気持ちいいドローが出て、ある意味イメージ通りのフック回転がかかって……〝もうこれでいいんじゃない?〞ってなったんですよ。そしたら、試合でも怖さなく震えずに打てるようになったんです。

つまり、今までのクラブがハードスペックだったことに気づいたんです。軟らかくしたことで自分のフィーリングが戻ってきました。今では、シャフトのしなりを感じながらポンと打ったら、自分が頑張らなくても右に出てドローするイメージ通りの球が出てくれます。しなりを生かして打つとこんなに楽なんだと実感しています」

若いころはXXXくらいの硬さを使用して体を目いっぱい使っていたが、今はシャフトをしならせて打つスタイルに変化しフレックスは“S”に。

先端を意識するからそこを速く振れる

画像: ベテランプロ達は先端が猛烈に走ってた!

ベテランプロ達は先端が猛烈に走ってた!

9月の日本シニアオープン、予選会を突破して見事出場権を得た、早川佳智プロ。そこで熟練プロたちのクラブ使いに舌を巻いたという。

「どのプロもクラブさばきがうまくて、ヘッドにきっちり仕事をさせていました」と早川プロ。ヘッドが「猛烈に」動く振り方。これは「クラブを振る=手元を振る」になりがちなアマチュアとは、正反対のクラブの使い方だ。

「奥田(靖己)さんのスウィングを見させてもらったんですが、クラブの先端がとんでもなく走っていました。これはもちろんヘッドを動かす意識があるからで、ヘッドの重さ、ヘッドの位置をずっと感じているからこそなせるワザです」

【プロ】ヘッドを動かす意識が強い
▶しなりが大きくヘッドの運動量が多い

画像: ヘッドに意識を持って行こう!

ヘッドに意識を持って行こう!

グリップエンドを支点としたヘッドの振り子運動を、いかに大きくするかというのがプロの思考。そこにシャフトのしなりや遠心力が加わることで、超高効率スウィングになる。

ヘッド意識のメリット3選

①ヘッドの位置がわかるようになる
ヘッドの運動量を増やすには、スウィング中の場面、場面でヘッドがどこにあるのかを把握していないと難しい。ヘッドに意識を向け続けていると、ヘッドの位置に敏感になれる。

②ヘッドの重さを感じられる
グリップを必要以上に強く握り締めるだけで、ヘッドの重さは「消えて」しまう。ヘッドを動かす意識があれば、確実にその重さ(遠心力)も利用しようとするはず。

③クラブがどんどん走る
切り返しで「ヘッドの円弧」を大きくして振ろうとすれば、勝手にタメが深くなってシャフトが強くしなり、リリース時のしなり戻りも大きくなる。

【アマチュア】グリップの意識が強い
▶力んでシャフトがしならない

画像: みんなグリップを動かすのに必死!

みんなグリップを動かすのに必死!

クラブを指でつまんでぶら下げ、つまんだ部分を勢いよく左右に動かしてもヘッドはほとんど動かない。これが、手元だけを振っていて先端がまったく動いていない状態。

グリップ意識の弊害3選

①インパクトでひじや腰が引ける
切り返しで手元をボールに向かって直線的に引っ張ると、シャフトをしならせられない。クラブ抵抗(重さ)を感じられず、腕や体だけが先走ってしまう(=ひじ、腰の引け)

②腕に力が入る
手元を速く動かそうとするほど、握っている手に力が入る。とくに切り返しでグリップ圧が強くなると、シャフトのしなりを感じなくなり、先端を動かせない。

③手元しか動かない
トップから手元をボールに向けて振ると、ヘッドの円弧は小さくなり、クラブの運動量は増えず手元の運動量だけが増えていく。

スウィングの 原理原則に立ち返る

腕はたてに上げてローテーションさせる

画像: 両手のひらを向かい合わせにして腕を下げたところから、ひじを曲げて手を右肩方向に上げるのがテークバック。一度おろして左肩方向に上げるのがフォロー。これが「たて振り」の土台

両手のひらを向かい合わせにして腕を下げたところから、ひじを曲げて手を右肩方向に上げるのがテークバック。一度おろして左肩方向に上げるのがフォロー。これが「たて振り」の土台

アマチュアは腕や体を横に動かして考えがち!

腕をローテーションさせずに、体の回転だけでクラブをよこ振りするのは「ドアスウィング」といって、昔から悪いスウィングの代表格とされる。理由は単純、飛ばないから。

レッスンの常套句である、「腕を使わずに体でスウィング」とか、「フェースを返さずにインパクト」といったものは、まず特定の症状があってその対症療法であるケースが多いことを忘れてはならない。スウィングの原理原則から言えば、腕は振らなければならないし、フェースも返さなければならない。

「本当に腕を振らなかったらシャフトがしなるほどの速さは出せません。正しい腕の振り、フェースローテーションはクラブの運動量を増やすカギでもあります。よこ振りの意識が強いと体だけで開いて閉じる打ち方になりやすい。ひじをうまく使ってたて振り要素を入れるのがコツです」

腕の動きのイメージ「小さく前にならえ、これでトップが完成です」

画像: 左から:手を下げたアドレス→体をねじるとローテーションの入ったトップに!

左から:手を下げたアドレス→体をねじるとローテーションの入ったトップに!

アドレスの前傾姿勢のまま、小さく「前にならえ」をしたら、腕のたての動きは終了。あとはそのまま上半身を右に回すだけで、コンパクトだがヘッドを動かしやすいトップになる。

ポイント①両肩をくるっと回すイメージ

画像: 画像右のように流れないよう注意しよう

画像右のように流れないよう注意しよう

トップで左肩をあごの下に持ってくるイメージで回すと、肩がたて回転するので腕(クラブ)もたてに動かしやすくなる。

ポイント②右肩を下げて下ろす

画像: 右肩が出るのは“よこ”の証拠

右肩が出るのは“よこ”の証拠

トップで早くボールに当てたい意識があると、右肩がボール方向(前)に出てしまうためよこ回転要素が強くなる。右肩を下げて回すとたて要素を維持できる。

文/菅原大成 写真/ARAKISHIN、三木崇徳、大澤進二、岡沢裕行、Getty Images
協力/東名古屋カントリークラブ、六甲国際ゴルフ倶楽部
※この企画に登場するアマチュアの方にはボランティアとして協力いただきました

※月刊ゴルフダイジェスト12月号「シャフトのしなり最大化計画!」より

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「頑張らない」ことで本当に飛距離が出るのか? この記事の続きでは、JLPGA公認のドラコン大会「ドライビング女王コンテスト」を舞台に、驚異の277ヤードを叩き出したアマチュア選手の後藤あいさんが実践する、「体が頑張らない」ためのクラブの選び方とスウィングの極意を徹底分析している。続きは月刊ゴルフダイジェスト12月号、Myゴルフダイジェストにて掲載中!

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