標高の高いコースと海抜0メートルのコース

菅平グリーンGC
日本は国土の約7割が山岳地といわれている。その結果、比較的平坦な場所に人が集中することになり、そのぶん広大な敷地が必要となるゴルフ場は山の麓などに造られることになる。ゴルフ場建設に理想的な場所は海岸に接する場所、つまりリンクスランドなのだが、平地が少ない日本では難しいといえる。
山が多い日本で一番標高の高いゴルフ場はどこか調べてみた。長野県の上田市と須坂市を結ぶ国道406号線近くに菅平グリーンGCがあった。開場は1975年7月、18H/6804Y/P72の規模でコース設計は日本で最も多くのコースを設計した富澤誠造によるものだ。コースは標高1650メートルにあり日本一高い。
2番目に高いコースも調べてみた。やはり長野県にある清里アーリーバードGCで、標高は1435メートルだった。コースは野辺山高原にあり、夏の平均気温は25度とかなり涼しいようだ。ホームページを閲覧すると、セルフプレー、ドレスコードフリー、1人プレーOK、愛犬同伴プレーOK、ジュニア含む家族でゴルフ、当日予約OKとかなりユニークな運営スタイルで、夏休みに家族で訪れるのはいいかもしれない。コースは18H/6686Y/P72だ。ついでに3番目に高いコースも調べた。同じく長野県で茅野市豊平にあるフォレストCC三井の森で標高は1427メートル、コース規模は18H/6858Y/P72だ。コース設計は、台湾出身で日本に居住し長期に渡り活躍をした謝永郁プロ。

富士クラシック17番
標高ベスト3はいずれも長野県にあるゴルフ場だった。山岳地が多い長野県では必然的に標高が高くなるのだろうと、1000メートル以上あるコースの数を調べると実に33コースあった。山岳地の多い山梨県で1000メートル超は10コースあり、標高1193メートルの富士クラシックが一番高かった。このコースを設計したのは異彩といえるデズモンド・ミュアヘッドでコースのデザインコンセプトは葛飾北斎の「富嶽三十六景」で造形的には非常にユニークだ。
やはり10コースあるのが群馬県。一番高いのは太平洋C軽井沢リゾートで標高は1331メートル。浅間山を指呼の距離で眺めながらのプレーになり印象的といえる。他の県で1000メートル超のコースはないかとさらに調べると岐阜県に3コースあった。最も高いのは1343メートルの鈴蘭高原CC、2番目はデイリー郡上CCで1054メートル、白鳥高原CCは1015メートルで3位。今回の調査で日本に1000メートル超のゴルフ場は56コースあることが分かった。
では最も低い場所にあるコースを調べてみた。考えてみれば海抜の低い土地にあるコースになり、すぐに思いつくのは河川敷だ。岐阜県長良川流域にあるあんぱちパブリックGCは海抜5メートルで9H/2801Y/P34のコースだ。河川敷のコースは、場所柄いずれも海抜が低いといえる。だが、海抜で表記するのならば海に近いコースはないか探してみた。

海が続いている様に見える若山GC
山口県山陽小野田市にある若山GC梶コースが、海抜という表現に最もふさわしいコースだろう。コースは厚狭川の河口から瀬戸内海に突き出した半島にあり12H/3575Y/P44という海に浮かぶシーサイドコースで、コースの外周は盛土がされ波しぶきの侵入を防いでいるほど海面に近い。このコースはかつて海底炭鉱の跡地で、石炭を掘る際に出るボタを周辺に積み上げた結果、陸地とつながって半島状の土地なり、廃坑の後に客土し芝の種を撒きゴルフ場にしたという歴史を持つ。平日3400円、土日祝5200円で1日中この料金でプレーすることができるのがいい。海に突き出した半島にあるため風が吹くと難易度は増し、風の方向や強さによってはボールが戻って来るほどだ。
臨海工業地に造られたコースは幾つかあるが、若山GC梶コースほど海面に近いコースはないだろう。
文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中



