
海のそばにあり、朝日も夕日も美しい若洲ゴルフリンクス。東京メトロ新木場駅から都営バスで約10分ほど
日本代表選手たちの戦いを見てみよう。男子は、前島博之が初日76で10位タイと好スタートを切り、2日目も76でトータル8オーバー、5位タイとメダルに手が届く位置にいる。渕暢之が85、83で24オーバーの23位タイ、袖山哲朗が83、88で27オーバー25位につけている。
女子は、辻結名が初日80で8位タイ、2日目に76と伸ばしトータル12オーバーで6位と、こちらも最終日次第でメダル獲得も。中島梨栄は87、88の30オーバー15位につけている。

日本大学ゴルフ部でプロを目指す辻結名選手。キャディを務めるのはゴルフを始めるきっかけをくれた叔父でプロゴルファーの小林伸太郎
試合後、夕日のなかで遅くまでパッティング練習をしていた辻に声をかけると、「昨日ほど今日は風がありませんでした。前半ショットがバラついて4オーバーだったのですが、後半は落ち着いてきてイーブンパーで回れました(トータル4オーバー)。明日はイーブンパーくらいで回れるように頑張りたい。目標は……3位くらいかな」と控えめに答えてくれた。
男子トップは、ドイツのアレン・ジョンでトータル8アンダー。2位はこちらもドイツのニコ・ガルダンで2アンダー。3位はアメリカのケビン・ホールで1オーバー。女子トップはインドのディクシャ・ダガールで11アンダー。彼女は21年のデフリンピック女子個人では金メダルを獲得している。2位はフランスのマルゴー・ブレジョで2オーバー、3位はカナダのエリカ・ドーン・リバードで8オーバーとなっている。

新井麻衣女子代表監督。「ここに来て初めて役職を知りました(笑)。でも応援団長だと言っています」
プロゴルファーで日本女子監督を務める新井麻衣は、「選手の皆さんの調子は悪くないです。でも試合経験の少なさが出ている選手もいます。地元開催のプレッシャーはそんなにないんですよ。皆さん楽しんで、自分にできることをやろうと言っていますから。ちなみにトップの選手たちはめっちゃ上手いです(笑)」
新井は袖山哲朗と同級生。ジュニア時代初めて出場したゴルフダイジェストのジュニアカップで知り合い、親御さんともに意気投合。その後一緒に練習したりしていたという。
「袖山くんは大学(日体大)に進学して、私はプロになったので、なかなか会う機会がなかったんですけど、私が3年前からスタジオレッスンを始めて、その頃に聴覚障害者の方のイベントがあるのでレッスンしてもらえないか、と話をくれたんです。その後も定期的にレッスンをしています。皆さんめっちゃ優しいし、明るいし、いつ行ってもウェルカムなんです。もっと何か私にできることはないかと探していたら、『今回オリンピックやるから監督やってよ』と(笑)。チームはファミリーのようなノリです」
デフゴルフを教えることに関しては、すごく難しいと言う。
「手話という言語を私がわからないので、やはりコミュニケーションが難しい。たとえば母国語を知らない人同士が、お互いにかろうじて知っている英語を使って会話をしている感じです。ボキャブラリーが一気に減りますから深いことを伝えるのは難しいんです。だからとにかくシンプルに、必ず言い切る。でも、普通のアマチュアの方が5球かかることを、彼らは2球で理解します。たとえば、インパクトのときにもう少し体の軸を左に寄せましょうねと伝えると、普通の方だったら6割くらいから徐々になんですけど、彼らはいきなり8割9割までいける。感性も鋭いですし、感覚と体をリンクさせることが上手いですね。やりすぎたらケガにもつながるので、少しずつ、とお願いするんですけど、できちゃうから頑張ってしまう。責任をもって言葉を伝えないといけません。ラウンドでは、三半規管が弱い方が多いので、“真っすぐ”が難しいんですよね。アドレスもそうですし、ラインの読み方だったり。でも、こういったことも含めてデフゴルフの魅力を知ってほしいですし、いろいろな方に広まってほしいです。そして本大会もぜひ見に来ていただきたいですね!」
会場は東京都が運営する若洲ゴルフリンクス。20日は個人戦の最終日(21日は男女混合のチーム戦を開催)。無料で観戦できるので、日本選手たちを応援しに、ぜひ訪れてみよう。(文中敬称略)


