「東京2025デフリンピック」ゴルフ競技は20日、男女個人戦最終日を迎え、メダリストが決定した。
画像: 「ナイスプレー」も「がんばれ」も。会場いたるところで見られる人々の「きらきら」の手振りは、静寂の空に浮かぶ星のように輝く

「ナイスプレー」も「がんばれ」も。会場いたるところで見られる人々の「きらきら」の手振りは、静寂の空に浮かぶ星のように輝く

快晴のひんやりとした空気のなか選手たちはスタート。この日も両手を顔の横で「きらきら(ひらひら)」と動かす「拍手」でティーグラウンドに迎えられ、静寂のなかスタートしていく。選手はそろいのユニフォームを着て、チームメンバーも観客も「国旗」を振る姿に、大きな国際大会であることを感じさせられる。3日間では一番静かだったものの時おり名物の風が吹き抜け、時間の経過とともに硬く、速くなっていくグリーンとの闘いとなっていった。

そんななかプレッシャーに打ち勝ち金メダルを獲得したのは――。

画像: 女子表彰台。金メダルはインドのディクシャ・ダガール。銀はフランスのマルゴー・ブレジョ、銅はカナダのエリカ・ドーン・リバード

女子表彰台。金メダルはインドのディクシャ・ダガール。銀はフランスのマルゴー・ブレジョ、銅はカナダのエリカ・ドーン・リバード

女子は、インドのディクシャ・ダガール。68・65・72の11アンダーで回って14打差で圧勝し、21年のデフリンピックに続く連勝となった。

「フェアウェイの芝、風などの様子をよく見て、状況をつかんでプレーすることができた。2つ目の金メダルはとてもアメージングです。両親など周りのサポートに感謝します」。彼女は欧州ツアーを舞台に戦うツアープロで2勝を挙げている。東京、パリのオリンピック代表でもあるのだ。次の目標は、「ツアーに出場することと、そこで成績を出すことを続けていきたい」とのこと。

画像: 男子表彰台。金メダルはドイツのアレン・ジョン。銀はアメリカのケビン・ホール。銅はドイツのニコ・ガルダン

男子表彰台。金メダルはドイツのアレン・ジョン。銀はアメリカのケビン・ホール。銅はドイツのニコ・ガルダン

男子は、ドイツのアレン・ジョン。66・70・69のトータル11アンダーで回り9打差の圧勝。こちらも欧州ツアーで戦うツアープロの実力を見せつけた形だ。しかもデフリンピックは17年、21年、25年と3連覇。

「大変誇りに思います。3年連続ドイツの選手として1位を取ったこと、大変うれしいです。3日間厳しい試合が続きましたが、これまで積み重ねてきたプレーをすれば自分はできると信じて、強い気持ちを持って金メダルを取りにいきました」

さて、日本選手の結果を個々に紹介しよう。まず入賞となる8位以内に入ったのは、76・76・75の11オーバーで回り7位となった前島博之。

画像: 常に笑顔でプレーしていた前島

常に笑顔でプレーしていた前島

「今日はメダルを目標に追いかけて行こうと頑張りました。バーディを取ってよいスタートを切ることができましたが、とても難しいピンポジションだったので、いろいろと考えてしまった。同じ組の選手もとても苦しそうだったので、同じ気持ちだったのでしょう」

後半は10、11、12番で連続ボギー、15番は惜しくもバーディパットを外すも、17番ではリベンジのバーディパットを沈めた。

画像: 前島選手の家族や鳥取県立ろう学校の教え子・同僚たち(この大会に合わせて修学旅行を組んで上京したとのこと!)の大きな応援に、「とっても力になりました。そのおかげで、ショットが真っすぐ飛んでとてもよかったです」

前島選手の家族や鳥取県立ろう学校の教え子・同僚たち(この大会に合わせて修学旅行を組んで上京したとのこと!)の大きな応援に、「とっても力になりました。そのおかげで、ショットが真っすぐ飛んでとてもよかったです」

「最低限のライン、入賞に入ることができてとてもよかったです。聞こえないことで平衡感覚にズレがあります。右が下がっていたりすることに気付かないことがあるのでそこを意識してプレーしました。また、風が強くてもブレがないように丁寧に1つ1つチェックしながらスウィングしました」

以前、デフリンピックの陸上競技には出場したことがある前島。

「ゴルフ競技は初めての出場。今回は昨年の世界デフと違い、プロたちが参加していましたので、そのなかで3日間連続70台で回ることができたのは収穫です。これからはパープレーではなく、アンダーで回れる力を身に付けたい。メダルが取れなかったのは悔しいですが、後悔のないプレーはできました。まずは明日の男女ペア戦でメダルを取ることに集中したい。力を合わせて1打1打丁寧にプレーしていきたいです」

女子でも入賞者が。それは80・76・87の27オーバーで回り、7位タイの辻結名。

画像: 調子が上がらないと嘆いていた辻のキャディは叔父でプロゴルファーの小林伸太郎。「心強かった? アドバイスは的確だった?」と聞くと「はい、ふふふ」。試合後、辻の頭を優しくなでながら「頑張った、頑張った」と言う小林の姿が印象的だった

調子が上がらないと嘆いていた辻のキャディは叔父でプロゴルファーの小林伸太郎。「心強かった? アドバイスは的確だった?」と聞くと「はい、ふふふ」。試合後、辻の頭を優しくなでながら「頑張った、頑張った」と言う小林の姿が印象的だった

最終日、ショットが乱れてスコアを崩したが、「調子がよくないなかで大会に入っていったので……。今日の前半はOBとかも多くて、流れも悪かった。後半も出だしはOBを打ってしまいましたけど、それ以降は立て直せたかなとは思います。前半打ちすぎて吹っ切れたんですね(笑)。3位以内を目指していたので、申し訳ない気持ちでいっぱいになっています。協会の人や応援してくれる方に対してそういう気持ちがあるけれど」と自分のプレーに納得いかない様子ではあったが、「普段の試合と雰囲気も特に変わらなかったので、1つの経験として、これから大学などの試合でも今回の反省を生かして頑張れたらいいなと思います。まずは明日もあるので。明日は前島さんとペアですけど、ゴルフも上手いし飛距離も出るので頼りにしています。メダルを目指して私も頑張りたいです」と前を向いた。

渕暢之は85・83・81で33オーバーの20位。

「1日目と2日目が不甲斐なかったので、3日目は最低でも70台を出そうと回ったけど、アウトコースでちょっとやらかしてしまって……でも、ある程度は満足しています」といつもながらの明るい笑顔を見せてくれた。

中島梨栄は87・88・89の47オーバー15位。デフリンピック、フットサルの日本代表だったが、個人競技のゴルフは初出場。

「ゴルフではたとえば打ったときミスしたら仲間の声がないですよね、助け合うプレーがなくて、自分の戦いというところはツラい部分もありました」とサバサバとした表情で語り、気持ちをペア競技に向けた。

さて、選手兼日本デフゴルフ協会事務局長でもある袖山哲朗は、83・88・80の35オーバー23位タイと実力を発揮出せないまま終えたことがとても悔しそう。

「苦しかった、プレッシャーもあった。70台を出したかった」と言いながら、選手として細かくプレーの反省と分析をしつつ、「日本のデフゴルフ界が発展するために、チームも自分ももっと頑張っていきたい」と事務局長の顔を覗かせて言葉を締めくくった。

画像: 男女混合のチーム戦でこのメダルを日本チームが獲得できるか、期待したい!

男女混合のチーム戦でこのメダルを日本チームが獲得できるか、期待したい!

今日(21日)はゴルフ競技の最終日を迎え、男女混合のチーム戦(フォアサム方式)が行われる。最後まで日本代表選手たちの戦いを応援しよう。(文中敬称略)

撮影/小林司

日本代表の5人は?

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