熱戦が繰り広げられている「東京2025デフリンピック」。ゴルフ競技は21日、男女ミックスチーム戦が行われた。

ミックス団体競技は、18ホールのフォアサムストロークプレー方式(ペアは各ホールで交互に1球ずつ打つことで、1サイドとしてプレー)で行われ、各ペアは男女1名ずつで構成、各国から最大2ペアまでエントリーできる。

昨日までの個人戦とは違う、和気あいあいとした雰囲気で各チームスタート。なかにはプレーの歩行中に記念撮影する選手も! 各国国旗を持ったチームや家族、ギャラリーも一緒に盛り上がっていた。

日本は、渕暢之・中島梨栄チームと前島博之・辻結名チームが出場。渕・中島チームは9オーバーの9位タイ。前島・辻チームは、前半の上がり3ホール、前島の300ヤードショットと、アプローチを得意とする辻の寄せが見事にかみ合い、トップと1打差の2位タイに浮上。しかし後半は、硬く速くなっていくグリーンなどで細かいミスが続き、ボギーを重ね、結果は8オーバーで8位入賞となった。

「メダルを取ることを目標にしていました。前半終了したときにはすごくいい位置にいた。でも後半はペースが乱れてかなり崩れた。それでも最低限の8位入賞にはギリギリですがくい込めたので、いい結果だったと思います」(前島)

「昨日はドライバーが悪かったのでそこは意識しました。1回曲がったけれどそれ以外は何とか。でも、パッティングのタッチを出すことがいつもより難しかったです。前半の最後のほうはよかったし、優勝を狙える位置だったと思うので後半はすごく悔しいですけど、それを次に生かせたらいいと思います」(辻)

金メダルは2アンダーで回ったラッセル・ボウイ、エリカ・ドーン・リバードのカナダチーム。銀はドイツチーム、銅メダルはアメリカとのプレーオフを制し、こちらもドイツチームが獲得した。

画像: 優勝したカナダチーム。個人戦のリベンジを果たしての金メダルだ。「この大会は、最も楽しい時間の1つとして記憶に残るでしょう」

優勝したカナダチーム。個人戦のリベンジを果たしての金メダルだ。「この大会は、最も楽しい時間の1つとして記憶に残るでしょう」

「日本で試合ができて本当に楽しかったです。私たちはグループとして上手くプレーできました。良いショットと悪いショット、お互いを支え合っていました。ユニークな形式でのプレーで、通常、ゴルフは自分のためにプレーしますが、一緒にプレーするパートナーがいて、相手に失望させたくなかったんです」(カナダチーム)

チーム戦の熱気のなか、ゴルフ競技は4日間の幕を閉じた。

画像: 日本代表チームと総監督と女子監督とチーム通訳の進藤洋子さん。「次のデフリンピックでは、メダル獲得を目指します!」

日本代表チームと総監督と女子監督とチーム通訳の進藤洋子さん。「次のデフリンピックでは、メダル獲得を目指します!」

デフゴルフ日本チームが初めてデフリンピックに出場した今大会を、野尻房男総監督に総括してもらった。

「選手たちは本当に頑張ったと思います。4日間は苦しい部分もたくさんあったと思います。すごく神経をすり減らすような思いを持ちながらプレーしていることが、外から見ている私にもわかりました。今回に関しては選手を褒めてあげたいなと思います。デフゴルフ協会として、今回初参加という意味では、個人戦、チーム戦ともに入賞できて、まずまずの結果だったと思います。しかし、課題も結構見えてきたなと思っておりますので、4年後のデフリンピックに向けて、その課題をどうすればいいのか、女子監督の新井麻衣プロとも相談しながら今後のプランを作っていきたいです」

その課題とは、ズバリ、ボールを止める技術と経験値だという。

「硬いグリーンのときに手前でボールを止める技術が必要です。また、特にミックスチームの経験値がまだまだ低いので、積み上げていく必要がある。メンバーは全国いろいろな場所に住んでいますし、都合を合わせるのがなかなか難しいのですが、何とか頑張っていきたいですね」

デフリンピックが終わったからといって、デフゴルフ協会の活動が終わるわけではない。ここからが大切なのである。それは、選手自身にとっても、また、デフゴルフ界自体にとっても同じだ。

「これをきっかけにもっとデフゴルフが広がっていくことを願います。実は昨日、今回手話での解説をやってくれた柳田さんから聞いたのですが、解説を見て、ゴルフの経験のない人がゴルフに興味をもってくれたみたいです。耳が聞こえない人でも、今回をきっかけにゴルファーが増えたらいいなと思います。また、韓国では2年前にデフゴルフ協会が立ち上がったばかり。今回は出場していませんが、一昨日に勉強のためにわざわざ協会の方がいらっしゃって、どうすれば世界デフゴルフ協会に加盟できるか、私自身もわかる情報もなどをお伝えしました。今後参加するアジアの国も増えていけばいいなと思います」

選手たちも皆、自身の目標とデフゴルフの発展を口にする。

まずは全員、4年後のデフリンピックで今大会の“リベンジ”を誓う。

画像: 辻・前島チーム。「辻さんのアプローチは200点満点。何度も助けられました。私がパターを入れることが難しかった」(前島)

辻・前島チーム。「辻さんのアプローチは200点満点。何度も助けられました。私がパターを入れることが難しかった」(前島)

個人、団体とも入賞を果たした前島博之は、「次のデフリンピックではメダルを取るのが目標。ゴルフは人生の1つです。年を取っても長く続けることができるスポーツということがゴルフの最大の魅力なんじゃないかな。私自身もこれからもゴルフを最大限楽しんでいきたいと思います」。

プロゴルファーを目指す辻結名は、「ドライバーの飛距離とパッティングという課題が見つかりました。もっと安定したプレーができるようにしたい。いろんな国の人と関わることができたのはいい経験になったかな。英語ももうちょっと勉強したいです」。

画像: 中島・渕チーム。淡々とプレーしていたが、バーディが取れなかったことは残念だった。「でも、今回は皆を褒めたい」(野尻総監督)

中島・渕チーム。淡々とプレーしていたが、バーディが取れなかったことは残念だった。「でも、今回は皆を褒めたい」(野尻総監督)

最年長としてもチームを盛り上げた渕暢之は、「デフリンピックの存在を知ったのは4年前。そこから何とか出られるように頑張ってきました。ここまで、デフゴルフの世界大会にも出ましたし、この年になっても、こういう国際大会に出られる。私の年齢に近い人たちにも『僕にもできる』と思ってもらえれば嬉しいです。ゴルフは人間性を高めてくれるスポーツだと思います。ゴルフ、大好きです。倒れるまでやると思います」。

ゴルフを始めてまだ4年の中島梨栄は、「将来は世界大会で3位以内を狙いたいです。経験の浅い私でも努力を重ねることで実力を発揮できると子どもたちにも伝えたいですね」。

日本デフゴルフ協会の事務局長でもある袖山哲朗は、「デフリンピックには初めて参加しましたが、雰囲気やレベルが今までの世界大会とまた違っていました。今回はプロも出場していてやはりレベルの差があった。僕自身は会社員との両立の難しさも感じました。でも目標は世界大会での個人と団体のメダル獲得です。デフゴルフ界発展のため、チームも自分も頑張ってプレーし、協会としてもいろいろなイベントを行ったりしてサポートもしていきたい。積極的に健常者の試合にも出場しないといけませんね」。

個々の向上心と好奇心が、デフゴルフ界の道を拓く。(文中敬称略)

※辻結名選手の「辻」は『しんにょう』の点が1つ

PHOTO/Tsukasa Kobayashi

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