
「ショットメーカーにして、グリーン周りもパットも上手いオールラウンダー。PGAツアー初挑戦時にはホームシックにかかったという一面もありますが、これも強い郷土愛の裏返しでしょう」(佐藤プロ)
ライダーカップ翌週のアルフレッド・ダンヒルリンクスで、欧州ツアー4勝目を挙げたのが地元スコットランドのロバート・マッキンタイア。同大会はPGAツアーのペブルビーチに倣い、3日間の予選と決勝1日のプロアマ大会。
ユニークなのは、セントアンドリュースオールドコース、カーヌスティ、キングズバーンズの3コースを使うことです。
天候もまさにリンクス。2日目は雨風に見舞われ、3日目は強風で中止。迎えた最終日は寒波が襲い、スウィルカン橋に座って撮った優勝記念の写真のマッキンタイアは毛糸の帽子をかぶっていました。地元スコットランド人の優勝は、05年のモンティことコリン・モンゴメリー以来20年ぶり。ちなみに昨年制したスコットランドオープンは、こちらも99年モンティ以来、25年ぶりの快挙でした。
寒そうに白いニット帽をかぶって記念撮影をするマッキンタイア【DPワールドツアー公式X】
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x.comマッキンタイアと優勝を争ったのがティレル・ハットン。ライダーカップメンバーのタフさというかエネルギーの強さを感じました。ライダーカップの死闘の翌週、舞台をニューヨークからスコットランドに移しての戦い。その間にはSNS上の動画でもわかるように優勝チームのどんちゃん騒ぎも。普段、おとなしそうなトミー・フリートウッドが酒を飲み、歌い、叫ぶ姿も新鮮でしたが、その騒ぎの中心にいたのがマッキンタイアでした。
マッキンタイアが中心に勝利に酔いしれる【ライダーカップヨーロッパ公式X】
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x.comボクが初めてマッキンタイアを知ったのは、ロイヤルポートラッシュで開かれた19年の全英オープンです。彼にとって初のメジャーでしたが、この試合で6位タイに食い込みます。しかし印象に残るのは、よくも悪くもそのエネルギーの強さでした。一緒に回ったカイル・スタンレーの放ったボールが、自分のキャディの母親に当たりそうになったとき、当時22歳の〝若造〞が、9歳年上のスタンレーに向かって「なぜフォアと叫ばなかった」と激怒。ホールアウトしても怒りは収まらず、スコア提出所でも激しくやり合ったということを記事で読みました。
その後、23年には「自分は勝ちたいのにもっと熱くなってくれなきゃ困る」とキャディを解雇したり、昨年PGAツアー初優勝を飾ったカナディアンオープンでは、上空を飛ぶ撮影用のドローンの音がうるさいと移動を要請、「もう少しでクラブを投げつけるところだった」と怒りのコメントも残しています。ちなみにこの試合で急きょキャディを務めたのが父親で、目の前での優勝となりました。味方は全身全霊で愛し、守り、敵と見れば全力でかみついていく。風貌からはそうは見えませんが、一流のアスリートに見られる強いエネルギーを持った熱い男なのです。
飛躍の転機になったのは23年のライダーカップでしょう。まだ世界ランク50位以下の選手で不調を抱えての出場でした。そのため唯一、前週のフランスオープンに出場するも予選落ち。しかし2勝1分けと負けなかったことが自信となったようです。今後〝Mrライダーカップ〞と呼ばれる存在となっていくであろう熱さを持った男。いつかまたスコットランドで開催されたときには、郷土愛で全身全霊で戦うマッキンタイアを見てみたいと思っています。
撮影/岩本芳弘
※週刊ゴルフダイジェスト2025年12月2日号「さとうの目」より
