松山英樹の“切れる”アイアンショットの秘訣は右手首にアリ⁉ 世界屈指のアイアン巧者のスウィングをAIで分析

こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野達郎です。今回はタイガー・ウッズが大会ホストを務めるツアー外競技「ヒーローワールドチャレンジ」で、見事に逆転優勝を成し遂げた松山英樹選手(以下、松山選手)の後方からのアイアンスウィングをスポーツボックスAIのデータと共に解説していきます。

前半は松山選手とアマチュア、それぞれインパクト直前から直後のクラブの動きを比較。後半は松山選手のフォロースルーからフィニッシュを取り上げて、「インパクト後も両手よりヘッドが右にある状態を保つ」の2点を解説させて頂きます。それでは早速チェックしてみましょう！

インパクト直前から直後のクラブの動き（松山選手はダウンブロー、アマはアッパーブロー）

まずはインパクト直前から直後にかけてのクラブの動きの違いに注目しましょう。画像➀と➁の左側は松山選手、右側はアマチュアのインパクトです。まず画像➀を比較すると、松山選手はクラブヘッド（以下、ヘッド）がボールよりまだ上の高さに見えていますが、アマはすでにヘッドがボールと同じ高さまで落ちているのがわかります。

この両者のショットはそれぞれパー3のティーショットなのですが、インパクト後にターフが取れている松山選手と、インパクト後も芝がほとんど削れていないアマチュアのアイアンショットは、クラブの入射角（アタックアングル）がまったく異なることを意味します。簡単に言えば、松山選手は「ダウンブローに打てている」状態です。入射角のチェックはGCクワッドやトラックマン等で計測できますが、それがない場合でもスウィングを後方から撮影すればチェックは可能です。

【撮影時のポイント】
➀スマホをベルト付近の高さに合わせて、アドレス位置から約3～4ｍ後方にセット
➁スウィング動画はスローで撮影する
➂上下左右に映像が傾いてないかチェックして、スマホをなるべく真っすぐに固定する

この3つを心がけて下さい。もしダウンブローに打てていない場合は、ヘッドがボールと同じ高さに落ちるタイミングが早いはずです。正しい位置からスロー動画で撮影したときに、ヘッドがインパクト直前までボールより上に見える状態になるよう心がけて、クラブの軌道をチェックしてみましょう。

インパクト後も両手よりヘッドが右にある状態を保つ

続いて、松山選手のフォロースルーからフィニッシュを見てみましょう。「Club-Hand Gap」と呼んでいるのですが、これは後方から見た時に「ヘッドと両手の前後差」を表します（マイナスはヘッドが両手より背中側、プラスはヘッドが両手よりボール側。クラブヘッドと両手が重なった位置を0cmと規定）。松山選手のフォロースルー（P8ポジション：フォローでシャフトが地面と平行の位置。以下、フォロースルー）でのクラブと手の前後差はプラス20.1cm、フィニッシュでのクラブと手の前後差はプラス41.5cmで、それぞれヘッドが手より右にある位置関係を保ったままフィニッシュまで振り抜いているのがわかります。

SPORTSBOX AIが独自で調査した、海外男子ツアーのフォロースルーでのクラブと手の前後差の範囲は、マイナス8.9cm～プラス11.9cmですので、松山選手は海外男子ツアープロの中でもヘッドが手よりも右にある位置関係を長く保つタイプであることがわかります。

この手よりもヘッドが右にある状態を保つには、右手首が甲側に曲がったまま角度を保つ「背屈」の状態をいかにキープできるかがカギです。これができると手首のフリップやキャスティングといったエラーを防いで、ヘッドのロフトを立てたままダウンブローに打つアイアンショットに近づきます。

この右手首の背屈を習得する練習ドリルには、クロスハンドドリルや右手の片手打ち、スプリットハンドなどの練習ドリルがありますが、まずは左右の手を逆に握るクロスハンドの練習から始めるのが良いでしょう。右手をグリップエンドに近い位置で握ることで、自然に右手首の背屈を作りやすくなりますので、是非試してみてください。

今回は松山英樹選手の後方からのアイアンスウィングを解説させて頂きました。今年は開幕戦の「ザ・セントリー」以降、優勝から遠ざかっていた松山選手ですが、今大会でまた本来の強さを見せつけてくれました。来年は松山選手を含む5人の日本人選手がPGAツアーに参戦しますが、そのエースである松山選手のさらなる飛躍に期待しましょう！

松山英樹アイアン後方連続写真！（PHOTO／Yoshihiro Iwamoto）9