
「優勝した試合はドライビングディスタンス2位(351ヤード)、SGオフ・ザ・ティー1位、FWキープ率7位、平均パット数が8位。データは少ないですが、飛んで小技も上手い選手と言えるでしょう
PGAツアーではこんなこともあるんだと改めて驚かされたのが、10月最終週のバンク・オブ・ユタ選手権。同大会はフェデックスカップ・フォール7試合のひとつ。今季からPGAのシードは125位から100位以内となりましたが、8月のシーズン最終戦のウィンダム選手権時点で50位にラインが引かれ、51位以下の順位を決めるのがフォールシリーズです。日本で開催されたベイカレント C レクサスもそのひとつで、最終戦のRSMクラッシックを終えて久常涼が95位、金谷拓実が99位で来季のシード権を獲得しました。
それはともかく今回の主人公は、マイケル・ブレナン。バージニア州生まれ、ウェークフォレスト大出身の23歳。なんとプロになって初出場で優勝したのです。アマチュア時代には22年のジェネシス招待、23年の全米オープンに出ていますがいずれも予選落ち。つまりプロとしては初出場、アマチュア時代も含め3試合目で初めて予選通過した選手がいきなり優勝したわけです。
アーノルド・パーマーの出身校で知られる名門のウェークフォレスト大時代は8勝し、オールアメリカンにも2度選出、同大の長い歴史の中で平均スコアは歴代4位。学業も優秀で表彰されたこともあります。PGAツアーユニバーシティで12位とし24年のPGAアメリカズ(3部ツアー)の出場権を獲得。6月からの10試合中5試合でトップ10に入り、ランク18位で同ツアーのシード権を獲得しますが、Qスクールをセカンドで失敗。今季もアメリカズで戦うことを余儀なくされました。
同ツアーは前半戦が南米で6試合、カナダで10試合の計16試合で開催されます。2部のコーンフェリー昇格は、同ツアーのランク5位まで。残り6試合の時点でランク5位だったブレナンですが、8月以降の残り6試合で3勝とトップ5が2回。圧勝で26年シーズンの昇格を決めました。
その頑張りも評価されて、推薦で出場したのがバンク・オブ・ユタでした。2日目に65で首位に立つと、決勝も64、66で2位に4打差をつけての圧勝。26年シーズンはコーンフェリーで戦う予定だった選手が、この優勝によりいわば〝飛び級〟でPGAデビューすることに。それどころか現時点で世界ランクは35位で、マスターズ委員会からの招待状も届くでしょう。
24年から始まったこの大会の、1回目の優勝者はマット・マッカーティ。その時点ですでにコーンフェリーのランク1位でPGAツアー昇格が決まっており、推薦で出場した3試合目、しかも初の予選通過での優勝でした。こうした〝シンデレラ物語〟も、今後この大会の見どころとなるかもしれません。
驚かされるのがPGAツアーを支える選手層の厚さ。彼がいい選手でバンク・オブ・ユタを見る限り、すごい怪物が出現したと思いますが、一方でこのレベルの選手はたくさんいるのが今のゴルフ界の現実なのでしょう。キャリア3試合以内で優勝した選手は史上7人目。しかしスピード優勝というのは選手のハードルを一気に上げてしまうので、その後のゴルフが難しくなる場合も少なくない。どんな道を歩むか注目したいです。
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※週刊ゴルフダイジェスト2025年12月23日号「さとうの目」より


