ホブランにとっての2026年PGAツアー初戦。ノルウェーでの長いオフを終え、ドバイを経てアリゾナに降り立った彼が、復帰戦にこの地を選んだ理由は単なる「カオス好き」だからだけではない。
「ここにはPING(本社)があるからね」
契約メーカーのお膝元であるこの地は、最新のギアをテストし、調整するのにうってつけの場所でもある。実際、彼のバッグには新たな武器と、決して手放せない古刀が混在していた。会見で語られたそのギア哲学は、トッププロがいかに繊細な感覚とデータの狭間で戦っているかを物語っている。
「ヒールとトウのスピン量の差がない」新ドライバーの衝撃
PGAツアー通算7勝のうち、実に6勝を「G425 LST」で挙げているホブラン。昨年の「バルスパー選手権」優勝時もこの絶対的なエースドライバーを握っていたが、同年のマスターズでは「G440 LST」を投入するなど、次世代モデルへの移行も模索してきた。そして今週、彼のバッグにはテスト中の「G440 K」が収まっている。その理由を問われると、彼は興奮気味にこう語った。
「フェースのスピン一貫性は、もはやジョークだね(笑っちゃうくらい凄いよ)」
ホブランによれば、これまで愛用していた「G425 LST」は、トウ(先)側で打てばスピン量が2000回転以下に落ち、ヒール(根元)側で打てば3000回転近くまで増えるという「大きなスピン量の差」があった。対して、テスト中の「G440K」はそのバラつきが極めて少ない。
「2000から2600回転の間に収まるんだ。その差は極めてタイトだよ」
さらにボール初速も速いとなれば、変えない手はないように思える。
だが、即決とはいかないのがゴルフの難しさだ。
「問題は、少し打ち出しが高すぎること。そして今の僕のスウィングだと、右に抜けるミスが出やすい」
スピンが安定しても、右へのミスが強調されてしまっては試合で使えない。そこで彼は担当者に連絡し、シャフトを0.25インチ短くしたモデルを用意させた。
「昨晩試したけど、かなり良くなったよ」
実験は今も続いている。
「技術が先か、道具が先か」60度ウェッジの流儀

GLIDE 2.0はホブランの変えられない1本(PHOTO/Getty Images)
一方で、頑として変えないクラブがある。60度のロブウェッジだ。 50度と56度に関しては「新しいモデルが出ればすぐに変える」というホブランだが、60度だけはいまだに数世代前の「ピン GLIDE 2.0」を使い続けている。
かつて「チップショットが下手だ」と公言していた彼も、今やスタッツを劇的に改善させた。その自信の裏には、道具への徹底したこだわりがある。
「GLIDE 2.0のスクエアなフェース形状、ヒールの小ささ、ソールの抜け感が好きなんだ。感覚的なものだけどね」
新しいモデルに変えない理由は、彼なりの上達論にある。
「まだ技術に取り組んでいる最中だからね。そのプロセスに『新しい道具』という不確定要素を入れたくないんだ」
まずは基本的なショットを完璧にし、技術を固める。道具のソール形状やバウンスをいじるのは、その後だ。
「技術が確立していないのに、道具で解決しようとはしない」
世界屈指のボールストライカーは、どこまでもストイックに自らの腕を磨き続けている。
