
ジュニアゴルファーへ金言を送ったサヒス・ティーガラ(左)とブルックス・ケプカ(右)
「時間は関係ない。質がすべてだ。そしてレディスティーから回る勇気を」(B・ケプカ)

ブルックス・ケプカ(写真は24年全英オープン、撮影/姉崎正)
スランプや壁にぶつかった時、どう乗り越えるか。ケプカの回答はシンプルかつ本質的だ。
「トンネルの出口は、自分が思っているよりもずっと近くにある」
多くのゴルファーは、不調に陥ると練習場にこもり、ひたすら球を打ち込みがちだ。しかし、ケプカはそれを否定する。
「1000球打てば答えが見つかると思いがちだが、明確な目的を持った50球、60球のほうがはるかに価値がある。重要なのは『何時間練習したか』ではなく『質』だ」
そして、ケプカが父から教わり、自身の強さを形作ったという具体的な練習ドリルを披露した。それは「ティーイングエリアを混ぜる」ことだ。
「父とよくやったのは、レディスティー、レギュラーティー、バックティー、フルバック、そしてゴールドと、あらゆるティーからプレーすることだ」
特に彼が強調したのは、前方のティーから回る重要性だ。
「前のティーからやれば、簡単に9アンダーや12アンダーが出せると思うだろう? でも、実際はそうはいかない。なぜなら、ウェッジゲームが本当に試されるから」
短い距離からピンに絡め、バーディを獲り続けるプレッシャー。そして、実際に2桁アンダーのようなビッグスコアを出すことで、「アンダーパーを取る」感覚に慣れること。
「そのスコアが出ることに居心地の良さを感じられるようになること。それが強さにつながる」
飛距離やパワーばかりが注目されるケプカだが、その強靭なスコアメイク能力は、ジュニア時代の「レディスティー」での修練によって培われていたのだ。
「飛距離という『罠』にはまるな。好きな一点を磨こう」(ティーガラ)

22年の今大会で一躍有名になったサヒス・ティーガラ(写真は25年ベイカレント C レクサス、撮影/岡沢裕行)
一方、地元ファンの熱狂的な支持を受けるサヒス・ティーガラに「プロになるためにジュニア時代に集中すべきことは?」という直球の質問が飛んだ。これに対し、ティーガラは現代ゴルフならではの“誘惑”に警鐘を鳴らした。
「今は高校生や大学生でもツアープロより飛ばす時代だ。でも、あえて言うよ。『飛距離を追うな』と」
彼自身、飛距離を追い求めてスウィングを崩し、消えていった多くの才能を見てきたという。
「言うは易しだけど、周りが飛ばしていても無視して、自分の道を見つけることだ。技術を磨くことに集中してほしい」
では、何を磨くべきか。ティーガラにとって、それは「チッピング(アプローチ)」だった。
「僕は自分が一番好きな部分、チッピングに集中した。相手が誰であろうと関係なく、ひたすらチッピングコンテストを挑んで、誰よりも上手くなろうとしたんだ」
当時、彼はドライバーショットに深刻な悩みを抱えていた。ただ、チッピングに没頭し、スピンコントロールや技を磨いている間だけは、ドライバーの悩みなど忘れることができたという。
「『チッピングなら誰にも負けない』という自信がつけば、不思議と他のストレスがなくなるんだ」
苦手な部分を埋めるのではなく、好きな部分を突き抜けるほど磨くこと。それが結果として全体のプレッシャーを取り除き、彼をプロの世界へと導いた。
ケプカもティーガラも相性抜群の舞台で勝利を目指す
「このコースは心地いい。2勝しているからね」と不敵に笑うケプカ。プロアマではNFLのスター、トラビス・ケルシーと同組で回り、リラックスした表情を見せた。 一方のティーガラも「家族や友人がたくさん来てくれる。最高の思い出がある場所だ」と語る。
“質”を追求する王者と、“好き”を磨いた若武者。アプローチは違えど、両者の目は週末の優勝争いを見据えている。TPCスコッツデールの巨大なコロシアムで、彼らがどんな「答え」を出すのか。その一打一打が、悩めるゴルファーへの新たな教本となるはずだ。


