
解説/竹内康弘
神経学トレーナーで、元浦和レッズコーチ。スポーツパフォーマンスの専門知識を深め修士号取得。 日本、ドイツで15年以上、1000人以上の指導経験があり、ドイツユースチームの監督も務めた。 機能神経学とコーディネーショントレーニングを融合したトレーニングを提供
まず「機能神経学」とは一体、何なのか。ごく簡略化して言うと、体の動きを介して脳に刺激を与え、感性や運動能力を高めようとするアプローチのこと。元々は、MRIなどの画像解析で異常がないにもかかわらず、目まいや神経疾患の症状がある患者に対する治療目的で発生したが、現在ではスポーツの分野でも広く応用されつつある。
ドイツでスポーツに機能神経学を応用する手法を学び、帰国後、Jリーグの浦和レッズでコーチを務めた経験もある竹内康弘氏は、「ゴルフは動きが比較的単純なので、機能神経学的アプローチがすごく有効なのではないかと考えています」と言う。

佐久間朱莉のブレークスルーを支えたのが目や三半規管などを鍛える機能神経学的アプローチ。スタッツ上でもパッティングをはじめ、多くの項目で24年から大幅に改善した
機能神経学でスポーツのパフォーマンスを向上させるという研究においては、ドイツのウルフガング・タウベ教授が第一人者で、教授の研究を土台にして、『小脳の活性化』や『眼球運動のトレーニング』といった、現在使われている機能神経学トレーニングの手法も確立された。
「これまでのスポーツコーチングの分野では、たとえば『ボールを蹴る』という動作において、軸足をどこに置くとか、蹴り足はどうするか、手はどうするかといった形を教えられて、それができるようになって初めてボールを蹴らしてもらえるわけです。これは、ゴルフでも似たような状況ではないかと思います。
実際にボールを蹴ったところで、何か上手くいかなければそれがその人の『器質』(体の構造や機能)に問題があると考え、筋トレやストレッチを交えつつも、主に反復練習で正しい動きを獲得させようとするのが従来のコーチング。しかし、機能神経学の考え方だと、たとえばひざが上手く動かないという場合に、それは脳からの命令の不具合ではないかと考えるわけです。これが、従来のコーチングと、機能神経学トレーニングの決定的違いです」(竹内氏)
機能神経学を知るうえで重要な3つのこと
1、機能神経学では“構造”ではなく“機能”の不具合を見る
同じ運動をしても上手い人と下手な人がいる場合に、それが身体能力の差だと考えるのが器質的な見方で、一般的な医学の領域に近い。下手な人は脳からの命令、あるいは神経伝達不全と考えるのが機能神経学的アプローチ。
2、人間の動作サイクルは入力・解釈・出力で行われる
手で触れる、足で踏むなどの感覚が脳に送られ(入力)、それが何で自分がどういう状況かを判断し(解釈)、どう動くべきかの司令を脳が筋肉に伝達する(出力)。このつながりが悪いと、思ったように動けない状況が発生する。
3、“入力”を担う情報で最優先されるのは視覚
脳に伝わる情報量が一番多いのが視覚情報。目隠しされるとぎこちなくしか動けなくなるのはそのため。また、感覚を伝える受容体(感覚器)は体中にあるが、分布には偏りがあり、手や唇、足などはとくに多い。
コレをやれば”機能神経学”の効果がわかる!
楔状骨を10回さする
目を閉じて片足立ちし、よりふらつく側の足の特定の部位(上図の部分)をさする。するとその刺激が小脳に伝達され、小脳が足の位置、安定を感じ取る機能が高まる。

赤丸の部分をさすると安定感を感じ取る
さすった部分を6回伸ばす
次につま先の爪側を地面に押し付ける形で、体重をかけて上下させ、先ほどさすった部分を伸ばす。その後、再度、片足立ちをすると、バランスが改善していることがわかる。

繰り返す
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「形」の反復よりも、脳への「入力」を変えることで動きは劇的に変わる——。機能神経学が示す「視覚」と「感覚」の重要性は、これからのゴルフレッスンの新たな常識となるかもしれません。後編では、この理論を実戦へ落とし込むための核心へ。脳が認識しやすい「インパクトのひと押し」のイメージ、そして感性を研ぎ澄ます「遊び感覚」の練習法とは? を解説します。
TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Tadashi Anezaki MODEL/Miyu Kamegawa(GOLULU)



