フロリダ州ネープルズにあるティブロンGC(6897ヤード・パー72)で現地時間の15日、2026年のPGAツアーチャンピオンズ第2戦「チャブ・クラシック」の最終日が開催され、59歳のベテラン、デビッド・トムズが優勝。2023年以来となる通算5勝目を挙げた。しかし、その勝利の味は、過去のどれとも違う、脂汗と鎮痛剤の味が混じったような壮絶なものだった。最終日、トムズのスコアは「73」。オーバーパーでの優勝。それが、この日の過酷さと、彼が置かれた状況のすべてを物語っている。

2番ホール、悪夢の「グキッ」

悲劇はスタート直後に起きた。首位で迎えた2番ホール。フェアウェイからのセカンドショットは、ボールが足元より低い「つま先下がり」のライだった。クラブを振り抜いた瞬間、トムズの腰に電流が走った。

「背中(腰)がいってしまった」

それ以降、彼のゴルフは変貌した。

「7番アイアン以下の短いクラブならなんとかなる。でも、ドライバーや長いクラブを持つと、インパクトで体がすくんでしまうんだ」

スウィングのたびに走る激痛。本来なら棄権してもおかしくない状況だ。しかし、この日のフロリダに吹き荒れた強風が、皮肉にも彼を救うことになる。

「もし無風なら、優勝するには5つも6つも伸ばさなきゃいけない。でもこの風だ。みんな苦しんでいる。パーを拾い続ければチャンスはある」

痛みに耐え、歯を食いしばるサバイバルゴルフ。それを支えたのは、長年連れ添ったキャディ、スコット・グナイザーの存在だった。

アーニー・エルスに“貸し出し”ていた相棒のために

トムズとスコットの間には、多くを語る必要のない信頼関係がある。昨年末、トムズが持病の腰痛でツアーを離脱していた間、スコットはアーニー・エルスのバッグを担いでいたという。

「僕の背中のせいで、彼には苦労をかけた。彼が戻ってきてくれた復帰戦で、彼のために勝つことができて本当に良かった」

痛みに顔を歪めるトムズを見ても、スコットは動じない。状況を理解し、あえて何も言わずに淡々とクラブを渡す。その無言の連携が、崩れそうなトムズのメンタルを支え続けた。

18番バンカー、プロの技「チャンク&ラン」

画像: 18番ガードバンカーで見せた「チャンク&ラン」でD・トムズは見事バーディフィニッシュ(PHOTO/Getty Images)

18番ガードバンカーで見せた「チャンク&ラン」でD・トムズは見事バーディフィニッシュ(PHOTO/Getty Images)

首位タイで迎えた最終18番。トムズのセカンドショットはグリーン左のバンカーへ。しかも、またしても「つま先下がり」のライだ。腰に爆弾を抱え、痛みで体がすくむ状態では、最も避けたいシチュエーションである。

ここでトムズが選択したのは、華麗なスピンショットではない。彼が「チャンク&ラン(chunk and run)」と呼ぶ、泥臭い一打だった。

「手前の砂を厚く取って(ダフらせて)、あとは転がすだけさ。神経質になる場面では、こういうショットが一番頼りになるんだ」

【動画】これがシニアの技! D・トムズが18番で見せたチャンク&ランのバンカーショット【PGAツアーチャンピオンズ公式X】

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砂と共に放たれたボールは、コロコロとピンに寄り、タップインできる位置に。この短いバーディパットを決め、通算13アンダー。連覇を目指したジャスティン・レナードら2位とは1打差をつけての薄氷の勝利だった。

「娘には『アーカンソーの鴨狩りからオクラホマの鴨狩りに変えたから勝てたんじゃない?』なんて言われたよ」

会見でそう明かしたトムズ。「ゴルフの腕前じゃなくて、ただの気分転換のおかげでしょ?」という娘なりの愛あるイジりに、彼は苦笑いを浮かべた。その笑顔の裏には、老いと怪我、そして自然との闘いを制した者だけが知る、深い充足感が漂っていた。


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