
2022年「TOTOジャパンクラシック」でツアー初優勝しているジェマ・ドライバラ(写真は25年TOTOジャパンクラシック、撮影/大澤進二)
残り79ヤードからの“ド派手な”幕開け
「今年最初のホールが、あんな結果になるなんてね」
ホールアウト後の会見で、ドライバラは穏やかな笑顔を見せた。
彼女の2026年シーズンは、これ以上ないほどドラマチックに幕を開けた。復帰後最初のホール(10番スタート)、フェアウェイから放った残り79ヤードの第3打が、なんとそのままカップに吸い込まれたのだ。復帰ホールの、見事なイーグル。その後、ボギーを叩く場面もあったが、それを補って余りある7つのバーディを奪うなど、驚異的なスコアメイクを見せた。
好調の要因は「グリーン上の改善」にある。昨年末にパターを変更し、オフの間も合間を縫ってパッティングコーチのニックと共に徹底的な見直しを図った。その成果は、この日の「26パット」という数字が見事に証明している。限られた時間の中で、スコアに直結する部分をピンポイントで磨き上げてきたのだ。
「FaceTime」越しの愛息と、高まる集中力
産後7週間でのツアー復帰は、肉体的にも精神的にも想像を絶するタフな決断だ。特に今回はアジアでの連戦となり、愛する我が子とは3週間も離れ離れになってしまう。「置いてくるのは本当に辛かったわ。今はFaceTimeで顔を見て、寂しさを紛らわせているの」と、プロゴルファーの顔の裏に隠された、一人の母親としての本音も覗かせる。
親になれば、当然ゴルフに費やせる時間は激減する。だが、彼女はそれを言い訳にはしない。
「確かに練習時間は減ったわ。でも、その分だけコースにいる時の『フォーカス(集中力)』が研ぎ澄まされるようになったの」
ダラダラと球を打つのではなく、与えられた時間をいかに密度の濃いものにするか。育児を通じて培われたタイムマネジメントと精神的なメリハリが、結果として彼女のゴルフをよりシャープなものへと進化させていた。
ツアー仲間からの祝福と「大物」の予感?
そんな奮闘を続ける彼女を、LPGAツアーの仲間たちも温かく出迎えている。「みんな『赤ちゃんの写真を見せて!』って言ってくれて。早く彼をツアーのみんなに会わせたいわ」と、仲間からの祝福に目を細める。
ちなみに、留守番をしている息子はすでに「大物」の片鱗を見せているという。タイへ出発する前、彼女は息子を連れて地元のお祭り「マルディグラ(※)」に出かけたそうだ。
「ものすごい大音量で騒がしかったのに、あの子ったらその間ずっと爆睡していたのよ(笑)。来年はもう少しお祭りを楽しんでくれるといいんだけど」
母になることは、決して競技者としてのキャリアの足かせにはならない。むしろ、守るべき存在と限られた時間が、アスリートをさらに強くする。パタヤの熱風の中で見せた「66」というスコアは、新しいライフステージを歩み始めたジェマ・ドライバラの、力強い決意表明だ。
新米ママの快進撃は、世界中の女性ゴルファーに勇気とエールを届けてくれるだろう。
※マルディグラ(Mardi Gras):カトリックの謝肉祭(カーニバル)の最終日を祝うお祭り。ドライバラが大学時代を過ごし、現在も拠点とする米ルイジアナ州ニューオーリンズのものが世界的に有名で、街中がパレードと音楽の熱気に包まれる。

