2026年シーズンのLIVゴルフにおいて、最も安定した強さと凄みを放っている男は間違いなくジョン・ラームだ。新チーム「Legion XIII」のキャプテンとして、開幕戦のリヤド、第2戦のアデレードと2戦連続で単独2位。優勝こそ逃しているものの、その圧倒的なボールストライキングと存在感は他の追随を許さない。しかし、第3戦となる「香港大会」を前にした公式記者会見で、彼の口から飛び出したのはゴルフの好調ぶりに関するポジティブな言葉ではなかった。それは、DPワールドツアー(欧州男子ツアー)の体制に対する、強烈な怒りと不信感の爆発だった。
画像: LIVゴルフ・香港の開幕を前に記者会見で欧州ツアーへの不満を口にしたジョン・ラーム(写真はLIVゴルフ・リヤド、提供/LIV GOLF)

LIVゴルフ・香港の開幕を前に記者会見で欧州ツアーへの不満を口にしたジョン・ラーム(写真はLIVゴルフ・リヤド、提供/LIV GOLF)

一方的な条件への反発「なぜ今になってペナルティがあるのか」

怒りの発端となっているのは、LIVゴルフに籍を置く選手たちに対して、欧州ツアーが科している「罰金」と、過酷な「出場条件」の問題だ。欧州ツアーのメンバー資格を維持するためには、ツアーが一方的に定める条件をクリアしなければならない。

会見の席で、ラームは顔を強張らせて語り始めた。

「現在、彼らが我々に署名させようとしている契約や条件が、とにかく気に入らないんだ。最低6試合の出場を求められ、そのうち2試合は彼らが場所を指定してくるなど、到底同意できない点がある」

ラームの不満の根底にあるのは、自身のこれまでのゴルフ界への貢献が軽視されているという強い憤りだ。

「自分はキャリアを通じて、PGAとDPワールドツアーのデュアルメンバーとして両方の発展に尽くしてきた。これまで、どちらのツアーに出るためにも『リリース(出場許可)』なんて求められたことは一度もなかったんだ。なぜ(LIVに移籍した)今になって、こんなペナルティを科されなければならないのか」

「我々を利用している」「これは恐喝だ」

決して、ラームが欧州ツアーを完全に切り捨てたいわけではない。彼は、母国で開催されるスペインオープンを含め、これまで通り年に4試合は欧州ツアーに出場する意志があることを明確に伝えている。

「『条件を4試合に下げてくれるなら、今夜にでもサインする』と伝えた。しかし、ツアー側は全く応じようとしないんだ」

彼の怒りは、歩み寄りを拒絶するツアー側の政治的な思惑への痛烈な批判へと変わっていく。

「彼らが裏で何のゲームをしているのかはわからないが、我々の名前と影響力を利用して、自分たちの利益を得ようとしているようにしか見えない。これは、ゴルフの政治とは無関係な若い選手や、私のような選手を『恐喝(extorting)』しているようなものだ。私は絶対にこんな条件には同意しない」

マキロイへの反論、そしてライダーカップへの熱き想い

この問題が複雑に絡み合う最大の理由は、欧州ツアーのメンバー資格が、国や地域を背負って戦う対抗戦「ライダーカップ」の欧州代表入りに直結しているからだ。

先日、ローリー・マキロイがラームに向けて、こんな皮肉を放ったことがあった。

「『アメリカ人選手は報酬を求めているが、自分は純粋な名誉のためにプレーしている』とあなたは言っていたよね。だったら今度は、自分が罰金を払ってでもライダーカップに出場することで、その言葉を証明する良い機会じゃないか」

これに対し、ラームは真っ向から反論する。

「対象となる12人全員が同じように罰金を払うというなら、まだ意味もわかる。だが、(ティレル・ハットンと自分の)2人だけがそれを求められるのはどう考えてもおかしい」

罰金や条件闘争という泥沼の中で、ラームが守ろうとしているのは「純粋な誇り」だ。

「我々は皆、純粋なゴルフへの愛のためにプレーしている。ライダーカップの代表に選ばれるなら、喜んで自費でだって行くつもりだ。だが、DPワールドツアーのメンバーであり続けるために、自分が本来果たすつもりでいるコミットメント(出場約束)に対して、さらにお金を払いたくはないんだ」

国や欧州を背負う情熱と、理不尽な政治的システムへ屈することへの反発。彼の中では、この2つは全く別次元の問題なのだ。

埋まらない溝と、スター選手の葛藤

今季からLIVゴルフが大会を72ホールに拡大し、世界ランキングポイントへの対応を見せるなど、競技フォーマットを「世界基準」へ歩み寄らせる動きを見せている。しかし、その一方でツアー間の政治的な溝は依然として深く、冷え切ったままだ。

「恐喝」という強い言葉を用いたラームの痛烈な批判は、トップ選手たちがコース外で抱え続けているフラストレーションを克明に浮き彫りにした。絶好調のゴルフとは裏腹に、スーパースターの心に渦巻く葛藤。この対立の火種は、香港の地でもくすぶり続けている。


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