フロリダ州オーランド。伝説のゴルファー、アーノルド・パーマーの魂が色濃く宿る「ベイヒルクラブ&ロッジ」にて、PGAツアーの選ばれしエリートのみが出場を許されるシグネチャー・イベント「アーノルド・パーマー招待」が幕を開ける。長年、選手たちを苦しめ、そして数々の劇的なドラマを生み出してきたこの名門コースが、今年はさらに洗練され、より手強い「罠」を張り巡らせて彼らを待ち受けている。

孫が明かした改修の意図。復活した「手刈りのランオフ」

今年のコースセッティングについて、パーマーの孫であり、大会ホストを務めるサム・サウンダースが興味深い「改修の裏側」を明かしてくれた。

「11番ホールは右手前のバンカーを取り除き、アプローチにスパイン(尾根)を作って戦略性を高めました。14番では左のバンカーを一つにまとめ、昔からそこにある伝統のヤシの木を活かす美しいレイアウトにしています」

しかし、今年のベイヒルにおいて、PGAツアーのトッププロたちを最も震え上がらせている変化は他にある。

「最も大きな違いは、すべてのグリーン周りのショートゲームエリアの芝を、手作業で短く刈り込んだことです」

コロナ禍以降、人手不足もあってグリーン周りは深いラフに覆われていた。アマチュア目線では「深いラフのほうが難しいのでは?」と思いがちだが、プロのレベルになると事情は異なる。深いラフに入れば、選択肢は「ウェッジで強く打って出すだけ」に絞られ、距離感を合わせるのはある種のギャンブルになる。

しかし、短く刈り込まれたランオフ(こぼれ球が転がり落ちる傾斜地)は違う。少しでもボールへのコンタクトが狂えば、ダフって芝に食われるか、トップしてグリーン奥へと消えていく。選手はライをシビアに見極め、チッピング、ピッチエンドラン、あるいはパターを使うかなど、多様な引き出しと極限のタッチを要求されるのだ。

「グリーンに向かって打つ際、このタイトに刈り込まれたエリアは視覚的にも強烈なプレッシャーを与えます。今年は、グリーン周りで非常にバラエティに富んだ、面白いショットが見られるはずです」とサウンダースは自信を覗かせる。

昨年の王者ヘンリーが回顧する「上がり2ホール」の極限の重圧

画像: ディフェンディングチャンピオンのラッセル・ヘンリーが連覇に挑む(写真は25年ツアー選手権、撮影/岩本芳弘)

ディフェンディングチャンピオンのラッセル・ヘンリーが連覇に挑む(写真は25年ツアー選手権、撮影/岩本芳弘)

この美しくも残酷な要塞の恐ろしさを、誰よりも知っているのが、昨年のディフェンディングチャンピオンであるラッセル・ヘンリーだ。昨年の最終日、ヘンリーは16番ホール(パー5)で、モメンタムを完全に引き寄せる劇的なチップインイーグルを奪った。誰もが「これで勝負ありだ」と思った瞬間だった。しかし、本人の感覚は全く違っていたという。

【動画】25年ベイヒル16番でのR・ヘンリーの完璧なチップインイーグル【PGAツアー公式X】

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「あのイーグルで勢いに乗れたのは確かです。でも、ベイヒルの残り2ホール(17番、18番)は、プレッシャーの中ではとてつもなく難しい。あの時点でまだ1打差しかなく、自分がやらなければならない仕事は山のように残っていると感じていました」

事実、硬く、速く、そして風が吹き抜けるベイヒルの上がりホールは、一瞬の気の緩みも許さない。ヘンリーはその極限の重圧を耐え抜き、見事に赤いカーディガンに袖を通した。「硬く仕上がったコースでプレーするのが本当に楽しみです。純粋に、この場所での挑戦が大好きなのです」と、連覇へ向けて王者の風格を漂わせる。

アーノルド・パーマーの遺志を継ぐ戦い

「私の祖父は、ゴルフコースを難しく設定するのが大好きでした。今のベイヒルの状態を見たら、きっと喜んでくれるはずです」

サウンダースは、誇らしげにそう語った。

深く絡みつくラフではなく、薄く刈り込まれた残酷な芝が、選手の想像力と技術の限界を試す今年のベイヒル。PGAツアーの精鋭たちは、アーノルド・パーマーが空から見守るこの極上のテストを、いかにして攻略するのか。予測不能のドラマが、いよいよ幕を開ける。

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