1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材し、現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員として活動する吉川丈雄が、ラウンド中に話題になる「ゴルフの知識」を綴るコラム。第55回目は、アメリカ・カナダ、そしてフィンランド・スウェーデンの国境線上にまたがる稀有なゴルフ場の歴史と、時差や法律が絡み合う不思議なプレー体験について。

打ち込んだら「密入国」!? カナダとアメリカの国境に横たわるコース

画像: アルーストック・バレーCC(写真引用:avcc公式サイト)

アルーストック・バレーCC(写真引用:avcc公式サイト)

プレー中に大きく曲げてコースの外に打ち込んでしまった時、キャディさんに「あそこに打ち込むとボールを拾いに行けないです」と言われたらどうしますか?

「だってそこにあるし見えるよ」と反論しても「でも、そこは別の国ですから」というのは、まるでコントみたいな話だが、実は現実なのです。

カナダ南東のニューブランズウィック州とアメリカのメイン州にまたがるアルーストックバレーCC(1929年開場、18H/6304Y/P72)は、国境線に沿ってレイアウトされている。

カナダのゴルファーは国境検問所を通過してコースに入ることになるが、アメリカのゴルファーはハウス進入路がアメリカ側だけにあるためコースに行くのは面倒ではない。

ところがコロナ以降、検問所が封鎖されてしまった。それまではカナダ側から検問所を通過してアメリカ側に入りブラウン・ロードをほんの僅かの距離(私道を含む)を走ればコースに行くことができたため、現在はかなり不便になってしまった。そのためカナダのゴルファーは迂回路を33キロも走らなければコースに行くことができない。

なぜこのようになったかといえば、開場したのがアメリカの禁酒法時代であり、アメリカのゴルファーが自由に酒を飲むことができるようにハウスもカナダ側に造られたのだ。そしてなぜかプロショップはアメリカ側にあることから、カナダのゴルファーが高額な商品を購入すると税金を払わなければならないことにもなる。

コースとハウスはカナダ側にあるのに進入路がアメリカ側のみというのはなんと不便なことだ。

画像: フィンランド(SUOMI)とスウェーデン(SVERIGE)の国境を示す標識(母国語表記)(写真引用:greenzonegolf公式HP)

フィンランド(SUOMI)とスウェーデン(SVERIGE)の国境を示す標識(母国語表記)(写真引用:greenzonegolf公式HP)

もうひとつ国境にあるコースを紹介しよう。 北欧のフィンランドとスウェーデンの国境にあるグリーンゾーンGC、通称トルニオGCだ。コースはフラットで池やクリークがある。スウェーデン側に11ホール、フィンランド側に7ホールあり、プレー中に4回国境を越えることになる。

あるホールではグリーンの真ん中に国境があることからピンとボールの位置により国境を跨いでパットをすることもありうる。池越えの6番・113M・パー3はフィンランドとスウェーデンの国境を跨ぐことからボールの飛翔時間は約1時間にもなる。その理由は時差があるからだ。

コースの規模は18H/6180M/P72とメートル法で表示されている。夏は白夜になることから24時間プレーすることが可能だ。このコースのハウスはそれぞれの国側に建てられていることからアメリカ、カナダ国境にあるアルーストックバレーCCのような不便さがないのが嬉しい。

文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中

関連記事はこちら!


This article is a sponsored article by
''.