10年に一度のドライバー革命!ゴルファーの反応は?
GD 2026年3月になり、上期に発表予定だったドライバーのニューモデルが概ね出揃いました。発売から1カ月未満のモデルもありますが、ここまでの動向をどう分析されますか?
長谷部 まず先陣を切ったのが、テーラーメイドの「Qi4D」でしたね。約1週間後にはピンの「G440K」が発表されました。この2強の争いが今年のスタートとなり、昨年発売された「ゼクシオ14」をどこまで追いやるのかが興味深い点でした。テクノロジー的には、この2モデルには正直それほどの斬新さはありません。
そのため、これまでのテーラーメイドファンやピンファンといった既存ユーザーが動いているのかな、という印象です。
GD そこから少し遅れて、ミズノが多層構造のドライバー「JPX」を、キャロウェイも多層構造のドライバー(クアンタム)を出しました。これまでとは違うテクノロジーが加わった戦いが2026年のスタートだったわけですが、この辺りはどう見ていますか?
長谷部 1月、2月の販売データを正確に把握しているわけではないので印象論になりますが、少し「様子見」の印象もある気がします。ピンやテーラーメイドを狙っていた層はすでに購入していますが、それ以外の人たちは、「クアンタム」や「JPX」の動向、そして試打評価のレビューを待っている状態ではないでしょうか。
いずれも試打、予約の流れが順調に推移しているようですがフェース構造が変わったこの2モデルは、どちらも打感が良く、カーボンや異素材の効果でチタンの層を従来以上に薄く作れているのが売りです。
「薄く作れる=反発性能が高い」ということですが、CT(フェースとボールの接触時間をマイクロ秒単位で測定する反発性能の指標)やCOR(衝突時のエネルギー伝達効率を示す反発係数。ルール上限は0.830)という言葉を使わずに言えば、「初速が速くなる」ということ。この恩恵をしっかり打って判断しようという人が多い気がしますね。
GD これはテーラーメイドのカーボンフェースを意識している可能性も考えられます。多層構造が採用されたということは、カーボンフェースという存在がある程度、市場に認められたと考えていいのでしょうか。
長谷部 ドライバーに関して言えば、テーラーメイドはミニドライバーを出す際に「地面から打つことがあるのでカーボンフェースにしていない」とはっきり言っていますので、カーボン素材の意義は、ティーショット専用のギアとして認知されているということです。
私も「Qi4D」を1カ月以上使っていますが、打感は良いですし、音のカーボン感はまったくありません。このフィーリングを気に入ってしまえば、素材の違いに対するネガティブな声はもう出ないでしょうね。
GD 基本的な考え方として、多層フェース構造というのは、以前テーラーメイドが説明したように「一度ルール外まで反発を高め、そこから戻してくる」という手法によって、反発をルール内に収める考え方で合っていますか?
長谷部 それは、かつて「SIM」などで採用していた“スピードインジェクション”の話に近いですよね。
GD そうです、一度外に出したものを戻すという手法です。チタンフェース単体で見れば明らかに高反発な状態に、何かを足すことでルール内に戻してくるという考え方でいいのでしょうか。
長谷部 チタンの場合、テーラーメイドも言う通り研磨や金属の製造過程の誤差がどうしても生じるため、反発を精密にコントロールするのが難しい。一方でカーボンは成形物なので、一定の基準で作れば品質の安定度はチタンより高いと考えられています。そのため、高いレベルの反発性能を維持して作るにはカーボンのほうが適していると考えられます。
一方、チタンをメインとするキャロウェイやミズノの「JPX」に関しては、チタン単体ではルールを超えてしまうほどの反発性能を出しつつ、裏側にカーボンを貼る、あるいは異素材を使うことで逆に反発を抑えている。結果として「高反発を制御する」という仕組みの考え方は、テーラーメイドのジェル調整と同じ視点になりますね。
GD そこで言うと、ミズノは内側がチタンで打球面がナノアロイ(複数のポリマーをナノ単位で分散させ、高強度と柔軟性を両立させる東レの素材技術)、キャロウェイは内側がカーボンで打球面がチタン。この構造が逆転している点については、どう考えられますか?
長谷部 「JPX」の考え方は、飛びすぎて使用禁止になった金属バットの『ビヨンドマックス』の発想で、非常に面白いストーリーです。余談ですが、この複合金属バットが実は日本シャフトで作られていることはあまり知られていませんね。金属の表面を柔らかい素材を貼り付け打面の硬度を変化させてボールとのマッチングを高めるという手法は、ひとつの考え方として野球でも実績を出して成立しています。
一方でキャロウェイは、あくまでフェースはチタンであり、高反発と強度をコントロールする手段としてカーボンを使っています。新しく発表されたミニドライバーも同じフェース構造でして、キャロウェイのほうが可能性を感じる部分もあります。
フェースがチタンなら地面からも打てますが、「JPX」のナノアロイ(樹脂をベースとした複合素材)は地面から打つとナノアロイに不具合が発生する懸念があり、ティーショット専用の構造だからです。安定度やフェアウェイウッドへの発展性を含めると、フェース裏をカーボンにした「クアンタム」の設計に一歩分がある気がしますね。
GD 2026年はそうした新しいフェースの考え方が出てきた一方で、市場で一番売れているのはピンのように既存構造を進化させたモデルです。新旧の概念がぶつかり合っている現状に、何を感じますか?
長谷部 日本人の保守的な考え方がひとつあるでしょう。ランキング上位の常連である「ゼクシオ」もそうですが、多くのアマチュアが「これまでのブランド」を使い続けたい、あるいは「曲がらない機能」を求めていることの表れです。
既存技術でも十分なパフォーマンスを出せている「G440K」などが選ばれるのは、トヨタのプリウスに似ています。プリウスが先行してハイブリッド市場を作り、後から新技術や水素車が出ても、先行して実績があるハイブリッドが選ばれ続ける。それと同じような現象が起きている気がします。
GD この後も、昨年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」でプロトタイプが支給されたプロギア「DUO」や、サイクル的にタイトリスト「GT」の後継も出てくるはずです。2026年のドライバー戦線はまだまだ続く予感がしますが、どうでしょう。
長谷部 結局は「飛び」、つまり初速をどこまで高められるかというパフォーマンスが判断基準になります。「曲がらないこと」を優先するか、「初速性能」を求めるか。今回は特に「打感や音」も大きく変わっているので、複合フェースに対する評価も重要になります。練習場だけでなく、自分のホームコースでコースボールを打ったときの実戦評価で、意見が変わってくるでしょう。
特に「JPX」はシャローフェース設計なので、適正なスピン量で飛ばせる人は打点が安定している方に限られるかもしれません。ハードヒッターだとスピンが増えすぎる可能性もあり、日本市場ではややヘッドスピードが遅めの人にメリットがあるといった住み分けができる気がしますね。
「JPX」は、スタートダッシュの予約が好調で一部では、入荷待ちの状況ということでしばらく話題になりそうです。
GD ドライバーの変遷を振り返ると、初速の高速化のスタートは2016年のプロギア「RS」、翌年のキャロウェイ「GBBエピック」でした。それから約10年、進化がマンネリ化してきたタイミングで、今回の多層構造のような新しい幕開けを予感させる技術が出てきた。
2016年の時のように「とにかく飛ぶ」という噂が立てば、また大きな市場の動きが起こるのでしょうか。タイトリストの「GT2」が注目されましたが、ブランドイメージもあり、そこまでの爆発的な動きには至りませんでした。今回、多層構造によって新しい幕開けが起きるのかどうか。
長谷部 大MOI競争が一段落と解説していた昨年から期せずして、いくつかのブランドでフェース進化を打ち出していて、年初の見立てでは「クアンタムMAX」(コアモデル)が独走すると思っていました。しかしある3月上旬のランキングを見ると、トップ10に入っているのは「トリプルダイヤモンドMAX」です。これは本来ニッチなモデルであり、キャロウェイの中でもコアなモデルではなくこうした派生モデルが売れているということは、まだ特定の層にしか響いていない可能性があります。
本当の意味で「飛び」を求めている層の反応が、意外と鈍いのが正直な感想です。今年のゴルフフェアでも、来場者は増えて活気はありましたが、SNS等を見てもギアの情報発信が少なかったし、ゴルファーの関心がギア以外に向いている可能性もあり、良いものができたからといってすぐに大衆層が動くとは限らないという危機感もあります。
大衆層がピンやゼクシオで満足し、新技術まで手を出さないのだとすれば、特にキャロウェイのような新規性を得意とするブランドにとっては心配な点ですね。
GD ゴルファーを牽引していくような、シンボリックなクラブが必要ですよね。これだけの大きな構造変化が起きているのに、市場を引っ張る一本はまだ見当たらないのでしょうか。
長谷部 存在しないわけではないのですが、魅力がうまく伝わっていないのか、まだ話題になりきっていないのか。「クアンタム」の試打評価自体は店頭でも非常に高いと聞きます。皆さんが様子を見ている段階なのかもしれませんが、本来「打ちたい」という欲求が高まれば、昨年のピンのように一気に独走するモデルが出るはずです。
それが聞こえてこないのは、突出したモデルがなく、ユーザーが選びあぐねている「戦国時代」のような状態だからかもしれません。
GD 逆に言えば、それだけピンの存在感が強いとも言えますよね。
長谷部 ええ。ピンとしては「飛び」を強調していても、ユーザーは「曲がらない」という評価で買っている。このギャップがピンの強さになっています。メーカーが「今までより飛びます」と言っても、消費者は「曲がらないから使っている」。このギャップのある満足感が非常に強く働いています。
GD 各ブランドには熱狂的なファンがいて、そこは動きますが、それ以外の層を巻き込むような大きなうねりはまだ見えてこない感じですね。
長谷部 「打倒ピン」となり得る決定的な一本がまだ現れていない。私はそれがキャロウェイだと思っていましたが、今のところ大きなうねりになっていないのが気になります。
ただ、ゴールデンウィークまでの1カ月間で、評価が一気に高まる可能性もあります。キャロウェイはここ数年、追加モデルが出たりしていつの間にかTopランキングを占めているという傾向もあるので、あと1カ月、市場動向を注視したいですね。
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