2カ月の空白と「ザ・プレーヤーズ」での手応え
今季のイムは、長く苦しい時間を過ごしていた。1月に手首を負傷し、「そのせいで2カ月間、練習すらできなかった」と明かす。しかし、クラブを握れなかったこの「2カ月の空白」が、皮肉にも彼をさらに強くした。
「練習を再開した時、昨年から気に入らなかったスウィングの動きを修正できたんだ」
さらに、「(予選落ちに終わったものの)先週の『ザ・プレーヤーズ選手権』の週末あたりから、スウィングが戻ってきた確かな感覚があった。今週はその勢いと良い感触を活かせている」と、完全復活への手応えを口にする。
この日のラウンドでは、勝負のバックナインを前に試練も訪れた。12番で風を読み違えてバンカーに入れボギーを叩くと、続く13番でも距離がショートして連続ボギー。「心が沈むような感覚があった」と振り返るが、ここからの立て直しが見事だった。
【動画】イム・ソンジェ、16番はカート道路からのセカンドショット【PGAツアー公式X】
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x.com上がり3ホールを無傷で切り抜け、最終18番では起死回生のバーディを奪取。「2打差のリードは本当に大きい。明日へ向けて少し安心できた」と、冷静沈着な試合運びで後続を突き放した。
立ちはだかる「フロリダスウィングの魔物」
悲願の勝利まであと18ホール。しかし、彼の前に今季の不吉なデータが「魔物」として立ちはだかる。大会の公式記録によると、今季の「フロリダスウィング(フロリダ州での連戦)」において、54ホール終了時点で首位(タイ含む)に立っていた選手は、まだ誰一人として優勝できていないという衝撃の事実があるのだ。

イム・ソンジェのフロリダスウィングにおける今季初の逃げ切り優勝なるか(写真は25年ザ・セントリー、撮影/岩本芳弘)
「コグニザント・クラシック」で首位に並んでいたシェーン・ローリーとオースティン・スマザーマン、「アーノルド・パーマー招待」で単独首位だったダニエル・バーガー、そして前週の「ザ・プレーヤーズ選手権」で3打差のリードを持っていたラドビッグ・アバーグ。錚々たる顔ぶれが、最終日のプレッシャーと難コースの罠に飲み込まれ、“逃げ切り失敗”の連鎖に倒れている。この「フロリダの呪い」は、単独首位で最終日を迎えるイムにとっても決して無縁ではない。
4年ぶりの歓喜へ「自分のゲームに集中するだけ」
イムが最後に優勝カップを掲げたのは、2021年の「シュライナーズチルドレンズオープン」。約4年という歳月が流れている。しかし、彼に焦りの色はない。
「確かに4年経つが、その間も2位や3位に入り、良いプレーはできていたからね」
確かな実績が、彼の心を支えている。
「これほど首位に立つのは久しぶりだから、明日はきっと緊張するだろう。でも、自分にできる最善のことは、ただ自分のゲームに集中することだ」
フロリダの魔物を退け、4年ぶりの歓喜の瞬間を迎えることができるか。己を信じ抜くイム・ソンジェの最終日に、熱い視線が注がれる。
