
ディフェンディングチャンピオンとしてヒューストンオープンに挑むミンウー・リー(写真は2025年「ベイカレントクラシック」、撮影/岡沢裕行)
「彼がプレーしないのは、僕らにとってはナイスなことだよ(笑)」。
リラックスした表情で冗談を飛ばすミンウーだが、その言葉の裏には、誰よりもシェフラーの凄みを肌で知る者としての深い敬意がある。
「彼は決してミスをしない。ただ淡々と、確実にバーディを積み重ねていくんだ。僕たちもそれを目指しているけれど、彼は別格だ」
時計の針を1年前に戻そう。ミンウーにとって、大会最少スコア記録となる通算「260」で頂点に立った昨年のサンデーバックナインは、まさに死闘だった。第3ラウンドで平均飛距離325ヤードを叩き出し、後続に4打差の独走態勢を築いたが、16番で放ったショットは無情にも池へと消えた。その瞬間、背後に迫っていたシェフラーとの差はわずか1打に縮まった。
「あの時の焦り、そして17番を振り返って彼がバーディを逃したのを見た時の安堵の溜息。あれで残り2ホールにクッションができた」
ミンウーは、当時の極限状態を昨日のことのように振り返る。絶対王者が不在となった今年のフィールドだからこそ、昨年のあの1打を巡るヒリヒリとした記憶が、より鮮明に浮き彫りになるのだ。
「勝つことは決して簡単じゃない。心底疲れ果てるものだ」
華やかな笑顔の裏で、勝利の代償としての精神的疲労を隠そうとはしない。昨年の最終日、彼は周囲のギャラリーを見る余裕すらなく、ただひたすら下を向いて次の1打に集中し続けていた。ストローク・ゲインド:パッティングで「+8.71」という驚異的な数字を記録した裏には、この研ぎ澄まされた没入があった。
「普段なら周りを見渡すけれど、昨年はひたすら頭を下げて自分のプレーだけに没頭していた。それが勝因だったのかもしれない」
トッププロが背負う孤独とプレッシャーは、我々の想像を遥かに超える重さを持っている。
【動画】25年ヒューストンOP、ミンウー・リーの優勝シーン【PGAツアー公式X】
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x.com最強の敵が去った今、大会の主役は間違いなくディフェンディングチャンピオンの彼自身だ。今季はパー5でのバーディ以上獲得率がツアー1位(65.91%)を誇るなど、持ち前の爆発力はさらに凄みを増している。それは同時に、自分自身のプレッシャーという新たな敵と対峙することを意味する。2004~05年のビジェイ・シン以来となる、大会史上2人目の連覇へ。重圧を力に変え、孤独な挑戦に立ち向かう若き王者の18ホールから、今週は一瞬たりとも目が離せない。
