米女子ツアーに本格参戦する若手を含め、日本勢15名がそろい踏みとなった「フォード選手権」。日本のファンにとっては期待に胸が膨らむが、世界最高峰のLPGAツアーという過酷な舞台で、1年間を通じて戦い抜くのは決して容易なことではない。その厳しさを誰よりも知るのが、酸いも甘いも噛み分けてきたトッププロたちだ。今大会で久しぶりの姉妹共演を果たしたジェシカ・コルダとネリー・コルダは、公式会見の場でルーキーや若手選手に向けて、ツアーを「生き残る」ための重要な鉄則を語った。

3週間で燃え尽きるルーキーのパターン

長年ツアーの第一線で活躍し、後進の姿を数多く見てきた姉のジェシカ。彼女は、ツアーで失敗するルーキーたちの「共通点」について鋭い指摘をしている。

「ルーキーには『何も変えるな』といつも言っています。彼らはツアーに来ると、誰かが新しいクラブを試しているのを見て『自分も試さなきゃ』と焦ってしまう。ここに来られたのには理由があるのに、不安から日の出から日没までずっとボールを打ち続けてしまうんです」

結果を出したいというプレッシャーから、過剰な練習に逃げ込んでしまう若手たち。しかし、ジェシカはその行動に警鐘を鳴らす。

「最初の2、3週間でそれを見て、『ああ、彼女はきっと燃え尽きる(バーンアウトする)だろうな』と思います。そのパターンは毎年とてもよく似ているんです」

シーズンは長く、長距離移動や時差、気候の変化が選手の体力を容赦なく奪っていく。体力と集中力を年間を通じて維持できるかどうかが、シード権獲得の大きな鍵となる。練習の「足し算」ばかりをするのではなく、いかにして休むかという「引き算」の美学。長期的なコンディショニング術を持たない者はこの過酷なツアーでは生き残れないという、ベテランならではの重い教訓である。

事実、現在世界ランキング2位の妹・ネリー自身が、この「引き算」を体現している。彼女は今大会を迎えるにあたり、ツアーから6週間ものオフを取っていた。練習は続けていたものの、「完全にバッテリーを消耗させたくなかった」「ワクワクした気持ちで(試合に)臨みたかった」と語っており、意図的にツアーから離れることで心身のコンディションを見事にコントロールしているのだ。

自分を信じる“スワッガー(強気な自信)”を持て

では、不安を打ち消し、自分を見失わないためには何が必要なのか。ネリーは極めてシンプルな答えを提示した。

画像: ツアーで長く活躍するには「心地よさ」が重要と話すネリー・コルダ(写真は24年シェブロン選手権、撮影/岩本芳弘)

ツアーで長く活躍するには「心地よさ」が重要と話すネリー・コルダ(写真は24年シェブロン選手権、撮影/岩本芳弘)

「結局のところ、大切なのは『コンフォート(心地よさ)』なんです。他人と自分を比較するのではなく、自分に合ったルーティンを貫くこと。ここにいるということは、それだけで十分な実力があるということです。それを忘れてはいけません」

この「自分と他人を比較しない」という哲学は、他のトッププレーヤーにも共通している。今大会のディフェンディングチャンピオンであり、前週の「フォーティネット・ファウンダーズカップ」で優勝を果たしたキム・ヒョージュは、自身の世界ランキングが自己最高の4位に浮上したことすら「知らなくて驚いた」と語るほど、周囲の評価や数字に執着していない。

「優勝したからといって自信満々というわけではない。良い思い出を作り、楽しむことに集中すれば、それが結果的に自信に繋がる」と語るキム・ヒョージュの自然体なスタンスもまた、過酷なツアーを生き抜くメンタリティの好例だ。

そして姉のジェシカは、ネリーの説く「心地よさ」に加え、若手が壁を乗り越えるためのもう一つの武器として「スワッガー」の重要性を説く。ツアーにはプレッシャーによる不安や自信のなさが溢れていると指摘した上で、ジェシカは「スワッガー(少し生意気なくらいの強気な自信)を持っている選手こそが、このツアーでより飛躍する傾向にある」と断言した。

LPGAツアーの舞台は年々選手層が厚くなり、全体のレベルも驚異的なスピードで底上げされている。周りの選手の飛距離や技術、スタッツの高さに圧倒されそうになる瞬間は必ず訪れる。しかし、そこで過剰な練習による安心感に逃げるのではなく、己のゴルフを信じ抜く「スワッガー」を持てるかどうかが勝負の分かれ目となるのだ。

今大会に挑む15名の日本勢の中には、米ツアーの環境に適応しようと必死にもがいている選手も多くいるだろう。歴戦のトッププロたちが説いた「自分らしさ(コンフォート)」と「強気な自信(スワッガー)」を胸に、どのようにアリゾナの舞台を攻略するのか。日本のなでしこたちの戦いから目が離せない。


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