不調のどん底からのギアチェンジと「保守的かつ攻撃的」な哲学の復活
過去2年以上にわたり、ケプカは深刻なパッティングの不調とメカニクスの問題に深く苦しんできた。「WMフェニックスオープンの後が、僕にとってフラストレーションの限界だった」と彼は正直に振り返る。そこで彼は長年愛用してきたパターを変更し、コーチのマイクらとともにメカニクスの徹底的な修正に取り組んだ。
さらに、不調の要因は思わぬところにも潜んでいた。先週の大会中、ドライバーショットでスピンがかかりすぎていることに違和感を覚えた彼は、トラックマンでのテストを実施した。「ドライバーのヘッドが少し潰れていて、亀裂が入っているか何かがおかしくなっていた」という事実が判明したのだ。彼自身「先週はそれで優に6〜7打は損をした」と語るが、クラブの不具合という物理的な問題が解決したことで、現在の彼は万全の状態を取り戻している。
ギアの不安が完全に消え去り、パットの自信を取り戻したことで、ケプカの心に「最強のマインドセット」が蘇った。パットが不調だった苦しい時期、彼はティーショットやフェアウェイから無理にでもピンをデッドに狙ってバーディを獲らなければならないという焦りに囚われていた。しかし今は違う。「2017年から2019年の絶好調だった時のように、忍耐強く自分の順番を待つゴルフができるようになった」と確信を込めて語る。焦らなくても、1ラウンドで5回は必ず良いチャンスが訪れるため、ただそれを待てばいいのだ。絶対にダブルボギーを叩かない安全なラインを選びつつ、確実に巡ってくるチャンスを無慈悲なまでにモノにする。彼が自ら「保守的かつ攻撃的(conservatively aggressive)」と呼ぶこのプレースタイルこそが、メジャーを量産していた黄金期の冷徹な勝負師の哲学である。
ケプカが仕掛けた「150ヤードの罠」
心身ともに研ぎ澄まされたケプカが、そのマインドセットを試す舞台として選んだのがメモリアルパークGCだ。2019年のコース改修において、ケプカは設計に強く関与した。その中で彼が最も強いこだわりを見せたのが、15番のパー3である。近年のPGAツアーでは、選手の飛距離向上に伴い250ヤードのパー3が半ば常識のように配置されている。しかしケプカはこれに強い不満を持っていた。
「私を狂わせることの一つがそれだ。世界最高のパー3はすべて150〜160ヤードなんだ」
彼の哲学が反映された15番ホールは、ウェッジや短いクラブで弾道とスピンをミリ単位でコントロールしなければならない。「バーディ(2)を獲るのも簡単だが、簡単に5(ダブルボギー)にもなる」と、少しのミスが命取りになる過酷なショートホールを生み出した経緯を誇らしげに語る。
オーガスタと重なるセッティングでの「最終テスト」

ブルックス・ケプカは優勝争いをしてラストピースを埋められるか、注目だ(写真は23年全米プロ、撮影/岩本芳弘)
メジャー大会に向けた現在のゲームの仕上がりについて、ケプカは準備ができていると確かな自信を見せる。しかし、メジャーを制するために唯一彼に足りないものがある。「残り9ホールで優勝争いをする感覚(juices flowing)だ。これこそが、オーガスタ前にここで成し遂げなければならない最後の欠けたピースなんだ」と語気を強める。
そして、このメモリアルパークGCのセッティングが、オーガスタでの戦いを想定する上で完璧な舞台であることを彼は指摘する。
「ラフの長さや、グリーン周りの芝がプレーヤーに向かって刈り込まれている点(逆目)が、オーガスタに非常に似ているんだ」
彼自身が設計に関わった複雑なアンジュレーションと厄介な芝の組み合わせは、最高峰のフィールドでヒリヒリするようなプレッシャーを味わうのにふさわしい。優勝争いの痺れる緊張感を取り戻すこと。それこそが、ケプカがグリーンジャケット奪還に向けて描く、緻密で冷徹なシナリオなのだ。
