
左から世界ランク64位の久常涼、同65位のリッキー・ファウラー、同107位のトニー・フィナウ(撮影/岩本芳弘)
久常涼の「一石二鳥」の戦い
日本勢として出場する久常涼が置かれている状況は、ヒリヒリとした緊張感に満ちている。現在、彼は次戦のシグネチャーイベント(昇格大会)である「RBCヘリテージ」への出場権を争う「Aon Next 10」のポイントランキングにおいて、578.606ポイントで堂々の5位につけている。今大会で確実に上位に食い込めば、限られたトップ選手だけが出場できるビッグトーナメントへの切符を確定させ、シーズン後半の戦いを極めて優位に進めることができる。
しかし、久常の視線の先にはさらに大きな獲物がある。彼にはまだマスターズの出場資格がない。もしこのテキサスでPGAツアー初優勝を飾ることができれば、「昇格大会への切符」と「オーガスタへの最後の1枠」を同時に手にするという、信じられないようなシンデレラストーリーが現実のものとなる。
スターたちの焦燥と「優勝のみ」のプレッシャー
今年、その「最後の椅子」を奪い合う争いは例年以上に過酷だ。なぜなら、その110名の中には、世界中のファンが愛するビッグネームたちが含まれているからだ。
PGAツアー通算6勝を誇るリッキー・ファウラーや、トニー・フィナウといったスター選手たちでさえ、今年はまだオーガスタへの切符を手にしていない。ファウラーは自身12回目、フィナウは9回目のマスターズ出場という誇りを懸けて、まさに「優勝以外に道はない」という絶望的なプレッシャーの中でティーグラウンドに立つ。彼らにとって、2位も予選落ちも同じ意味しか持たない。攻めて、攻めて、攻め抜くしかないのだ。
過去の「下剋上」の歴史が証明する奇跡
「テキサスでの優勝は、単なる1勝ではない。人生を変える1勝だ」
そう語り継がれるのには理由がある。過去6年間を振り返ってみても、この大会で優勝をもぎ取り、劇的な形でオーガスタ行きを決めた「下剋上」のドラマが幾度も生まれているからだ。
●2019年: コーリー・コナーズ
●2022年: J・J・スパーン
●2024年: アクシャイ・バティア
彼ら3名は皆、このサンアントニオの地で最後の最後にマスターズへの扉をこじ開けた。誰にでも奇跡を起こすチャンスは残されているのだ。
激闘の末、日曜日の夕暮れに18番グリーンでトロフィーを掲げるのは誰か。大会の伝統であるルケーシー社製の黒いカスタムカウボーイブーツを履き、そのままジョージア州オーガスタ行きのフライトへと飛び立つ110分の1の奇跡の目撃者になろう。

