スマホ越しの出産立ち会いと、妻からの後押し
実はスマザーマン、大会直前の月曜日の夜に、三女のグレース・エリザベスちゃんが誕生したばかりだった。本来の出産予定日は先週であったため、彼は「テキサスチルドレンズ・ヒューストンオープン」を棄権してダラスの自宅で待機していた。しかし先週中には生まれず、今週の大会のためにサンアントニオへ移動。日中に陣痛がくればすぐにダラスへ帰るつもりだった。しかし、サンアントニオのホテルに滞在している夜中の9時半、突然妻の陣痛が始まってしまう。飛行機も車も間に合わないという緊急事態の中、彼はホテルの部屋からFaceTime(ビデオ通話)越しで、新しい命の誕生を見守るしかなかった。
「ずっと男の子だと思い込んでいて、男の子の名前しか用意していなかったから、15時間くらい名前がなかったんだ(笑)」と、寝不足の疲労よりも父親としての喜びに満ちた表情で微笑ましいハプニングを振り返る。無事に娘が生まれて安堵する中、家族のそばにいられないもどかしさを抱えていた彼をコースへと向かわせたのは、妻からの「プレーしてきて(出てほしい)」という力強い後押しの言葉だった。
「母子ともに健康だと分かって安心した。『神様の計画』だと思って、ここでプレーすることにしたんだ」

首位と3打差の4アンダーで暫定15位タイにいるオースティン・スマザーマン(写真は26年ソニーオープン・イン・ハワイ、撮影/岩本芳弘)
86戦目の歓喜。「入れ!」の叫び声と奇跡のエース
家族の愛を胸にティーイングエリアに立ったスマザーマンに、劇的な瞬間が訪れたのは13番(パー3)だった。距離は220ヤード。彼が6番アイアンで放ったショットは、「グリーン手前をカバーするように打った良いショットだった。手前にキャッチして、少し左にキックしたんだ」と本人が語る完璧な弾道を描いた。その瞬間、ティーイングエリアの誰かが「入れ!(go in)」と叫ぶ。言葉に導かれるように、ボールはそのままカップへと吸い込まれた。
スマザーマンにとって、PGAツアー86戦目にして待望の初ホールインワン。さらに、このTPCサンアントニオの13番ホールでのエース達成は、2019年のニック・テイラー以来、史上5人目という歴史的な快挙でもあった。エース達成の瞬間のリアクションについて問われると、彼は照れ笑いを浮かべた。
【動画】スマザーマン、86戦目で初のホールインワン達成!【PGAツアー公式X】
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x.com「10点満点中7点くらいかな。少なくとも5秒間くらいはショックで固まってしまって、それから周りのみんなが叫び始めて、歓声を浴びながら歩いてボールを拾い上げたんだ」
「あのパットに囚われるわけにはいかない」
ラウンドの最終9番ホール、彼は約1.5メートルのパーパットを外し、ボギーフィニッシュとなった。通常であれば後味の悪い上がり方にフラストレーションを溜めてもおかしくない。しかし、今の彼には微塵の揺らぎもない。
「あれは望んでいた終わり方ではなかったけれど、今日は良いプレーがたくさんできているからね。あのパットに囚われるわけにはいかないよ」
スマホ越しの出産立ち会いから数日後、コースで生まれた奇跡のホールインワン。新しい家族の誕生という最高のモチベーションを手にしたスマザーマン。心に余裕と愛を満たしたパパの奮闘は、今週のテキサスで最も心温まるストーリーとして、週末の優勝争いを彩るだろう。

