「ピンピン」しない。打感の進化が止まらない「複合系」アイアン
GD 今日は4月17日に発売となった「プロギア」のニューモデル「01」と「02」アイアンをゴルフ場で試打してきました。まず「02」ですが、7番でロフト30度、PWで44度という“飛び系アスリートモデル”です。前作からの変更点は、スコアラインが少しヒール寄りになったことと“打感の向上”でしたが、こうしたクラブが誕生した背景を長谷部さんはどう見ていますか?
長谷部 昔はロフト35度前後のマッスルバックが主流で、そこから少しロフトを立てたハーフキャビティが90年代に出てきました。それがさらにストロングロフト化が進む中で、ステンレス鋳造の大型ヘッドの「やさしく飛ばせるモデル」が別カテゴリーとして存在した。その「上級者向け鍛造小ぶりヘッド」と「大型のやさしいアイアン」のギャップを埋めたのが、今の「鍛造系の複合アイアン」というジャンルと言えるでしょう。
その背景には団塊の世代などを中心に上級者層の年齢が上がり、飛距離不足を感じ始めた方の“やさしく上げて飛ばしたい”というニーズがあった。そこにちょうど女子プロがハマったんですよね。男子プロのようなハードなモデルは使えないけれど、見た目はすっきりした形状を求める女子プロの需要が、このジャンルを確立させたのだと思います。
GD 今回のキーワードである“複合系”についてですが、かつて上級者モデルは“一枚モノ”が当たり前で、複合は別物という扱いでした。しかしタイトリストの「AP2」が登場し、PGAツアー選手が使う複合系として認知されました。複合のメリットとストロングロフトが融合して、この新しいカテゴリーが盤石になったと考えていいでしょうか。
長谷部 そうですね。例えばブリヂストンも昔からフェース溶接の鍛造アイアンを作っていましたが、当時はまだ打感重視で軟鉄の板材を採用していました。「AP2」以降、重心設計で飛ばす発想に加え、クロモリ鋼など薄肉化できる高反発なフェース材を、鍛造ボディに溶接する手法が広まりました。
本来はシニアや低ヘッドスピード向けのフェース素材技術を、上級者向けに転用したのが現在の鍛造系複合アイアンと言えるでしょう。ロフトを立てて低重心化し、初速でも飛ばす。これが「力の衰えてきた上級者」や、大型アイアンからステップアップしたい「上達志向の層」のニーズに合致し、ひとつのジャンルとして確立されたのでしょう。
GD ちなみに、複合系アイアンで人気のスリクソン「ZX5」のフェース面も軟鉄鍛造ではないですよね。
長谷部 そうですね、フェースには反発性と打感の良いクロムバナジウム鋼材を使っています。
GD となると、プロやトップアマがこうした「弾き系」の性能を認めている、ということでしょうか。
長谷部 はい。単に軟鉄一枚モノの打感にこだわるだけでなく、それを上回るほどの反発性能と、工夫を凝らした「打感の良さ」の両立が受け入れられています。今日打った「02」もまさにそこが進化していて、説明を受けなければ「少し弾くかな」と感じる程度で、慣れれば一枚モノに近いソフトな打感に仕上がっていると思います。
GD 前作の「02」はもう少し「ピンピン」と弾く感じが強かったですが、今作はかなり抑えられていると感じました。弾き系フェースでも、許容できる範囲でしたか?
長谷部 その通りです。構造を聞くと、フェース下部を厚くしつつ、裏側に溝を掘って反発性能をコントロールしている。こうした工夫でロフトなりに初速を上げつつ、打感も一枚モノに近づける努力が見て取れます。
GD プロギアは国産メーカーらしい雰囲気が残っていて、外ブラのアイアンがエッジを丸くする傾向にある中で、カクッとしたメリハリのある顔立ちです。
長谷部 例えばミズノやスリクソンは海外選手の声も反映して丸みを持たせていますが、プロギアは国内のアマチュアやプロの意見を中心に作っている違いが如実に出ていますね。フェースの輪郭の出し方、スコアラインの位置、ネック形状など、伝統を維持する細かいこだわりを感じます。
GD 昔からのゴルファーだと、この「トウ高」で三角形に近い形状は安心感があります。外ブラとは削り方が違う。
長谷部 全然違います。海外ブランドはショートアイアンになるほどヒール側を低くする傾向があり、スリクソンもそれに近い。一方、プロギアはトップラインの輪郭などは7番から8番、そしてウェッジへとつなぐ流れを計算して作り分けている。昔ながらの良さを残しつつ、やさしさを感じさせる顔ですね。
GD もう一つの「01」アイアン。こちらは軟鉄鍛造の一枚モノで、キャビティ内で重心を操り、強い球を打とうとする意図を感じます。こちらはいかがですか?
長谷部 どちらもオフセットが控えめで、一見すると見分けがつかないほどです。「02」が形状を進化させて上級者の満足度を高めている一方で、「01」はリーディングエッジの面取りをはっきりさせ、ソールの抜けの向上とヒール重心による操作性を追求しています。パッと見は似ていても、機能的には明確な操作性の違いが感じられました。
GD 「01」はスリクソン「ZX7」やブリヂストン「241CB」、「02」は「ZX5」や「242CB+」がライバルになりますね。ユーザーはどちらを選ぶべきか迷いそうですが、どう判断すればいいでしょうか。
長谷部 「上達したい」、「フェースコントロールを身につけたい」という人は、やはり一枚モノの「01」を選んでほしいです。芯を外した時の手に響く感触が、自分の反省や上達に繋がります。
逆に「02」や「ZX5」のような複合構造は、ミスヒットしても結果が真っすぐ行ってしまうので、自分のミスを許容してしまいそうですが、それは競技でシビアに一打を争う上級者でも、結果重視の考え方で「02」を選んでもいいし、逆に練習頻度が少ないけれど、ゴルフを楽しみながら上手くなりたい人には、あえて一枚モノをお勧めしたいですね。
今の技量よりも「将来どうなりたいか」という目的に合わせて選ぶのが正解だと思います。
GD 今、アイアン市場はその2つのカテゴリーが中心に動いているように思います。
長谷部 アイアンは一度買うと長く使う人が多いですが、ギアに関心のある上達志向の人は2~3年で買い替えます。そうした層にとって、同じシリーズの中に「鍛造一枚モノ」と「複合キャビティ」の選択肢があるのは、自分の現状からスコアアップやスウィング矯正を考える上で非常に楽しみな状況だと言えます。同じメーカーの同じ形状設計は、買い替える際にも選びやすいと思います。
GD 機能面で他に気づいた点はありますか?
長谷部 「02」については、フェースセンター重心の設計が効いています。ショートアイアンでトウ側に外れても真っすぐ飛んでくれるのは、アベレージ層には大きな助けになります。
逆に「01」はヒール重心で操作性が高く、ウッド系ともつながる重心設計の考え方が一貫しています。シリーズとしてセットを組む際にも統一感が出せるでしょう。
GD かつてアイアンは進化しにくいと言われてきましたが、今は方向性が集約され、完成に近づいている気がします。
長谷部 数年前の中空ブームなどを経て、今は「鍛造の素材感」と「高機能な寛容性」が整理されてきました。マッスルかキャビティかという二択ではなく、キャビティの中で細分化が進む現状は、ユーザーにとって良いことですし、この日本の細かな作り込みが世界のブランドにも影響を与えていると思います。
GD 確かに海外ブランドのラインナップも変わってきましたね。
長谷部 昔のテーラーメイドはこれほど鍛造系アイアンを豊富に販売しませんでしたが、今は「Pシリーズ」で拡充しています。キャロウェイが日本市場で「Xフォージド」に注力するのも同じ理由でしょうね。そもそも米国市場で日本の鍛造アイアンの人気は高く、三浦を筆頭に姫路系のアイアンは高価格で扱われています。
日本市場が作った「中間カテゴリー」のジャンル分けが、世界に影響を与えているとも考えられ、ラインナップが多すぎて「迷走」と捉えられる面もありますが、その中で構造やロフトの基準が定まりつつあります。ウッドが「LS」、「コア」、「MAX」の3モデルに定着してきたように、アイアンもいずれ同じコンセプトの3~4つのシリーズに固定されていくのではないでしょうか。
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