チーム戦特有の過酷さとダメージコントロール
しかし、和やかな雰囲気の裏には、勝敗を決定づける過酷なフォーマットが存在する。それが、1つのボールを2人が交互に打つ「フォアサム(オルタネートショット)」だ。各自のボールをプレーし良いスコアを採用するフォアボール(ベストボール)とは異なり、フォアサムは一人のミスがチームのスコアへ直結する。
さらに、名匠ピート・ダイが手掛けた「TPCルイジアナ」が過酷さに拍車をかける。ブラント・スネデカーが「選手を不快にさせる設計」と評するように、ティーショットのミスが即座にチームを沈める危険が潜む。ペアを組むキース・ミッチェルも「バッグの中のすべてのクラブを試される」と語るように、このコースはチームの地力が試される究極の心理戦となるのだ。
ディフェンディングチャンピオンとして臨むベン・グリフィンとアンドリュー・ノバックのペアは、このフォーマットについて明確な哲学を持つ。グリフィンは「良いチームと勝つチームの差は、フォアサムでのスコアのばらつきに出る」と指摘。「フォアサムでミスをすればあっという間に脱落する。だからこそスマートかつアグレッシブに攻める必要がある」と危機感を口にする。互いの失敗を完全に許容し合える成熟した関係性が、極限のプレッシャーを軽減させるのだ。
勝負を分ける「使用球」と「打順」の戦略
そして、チーム戦で各ペアを悩ませるのが「どちらの使用球を採用するか」だ。マイケル・ブレナンとジョニー・キーファーの若手ペアは、プロならではの緻密な戦術を明かした。ブレナンは「プロV1」、キーファーは「プロV1x」と異なるボールを使用している彼らは、「そのホールで最も重要なアイアンやウェッジを打つほうが、自分の得意なボールを使えるようにする」という結論に至った。ブレナンは過去に女子トッププロのチャーリー・ハルからこの戦術を学んだという。スコアに直結する勝負の一打から逆算して使用球と打順を決める、徹底的に合理化された技術である。
互いの強みを引き出す最強のコンビネーション

例年マキロイと組むシェーン・ローリー(左)だが、今年は家が近所でDPワールドツアー時代からの友人であるブルックス・ケプカ(右)と組む(撮影/岩本芳弘)
さらに、ティーショットの振り分けにも深い戦略が隠されている。シェーン・ローリーとブルックス・ケプカの強力ペアだ。意外な組み合わせに見える二人だが、実はフロリダ州ジュピターで15分圏内に住んでおり、頻繁に顔を合わせる深い親交がある。
ケプカは、「シェーンのドライバーと私のアイアン、そして彼のショートゲームを考えれば、かなり良い組み合わせだ」と自信を見せる。ローリーはホールに合わせてドローやカットを巧みに打ち分ける達人だと絶賛し、「私の目に合うホールと、彼の目に合うホールでティーショットを分担している。これは大きなアドバンテージだ」と明かした。ローリーも「彼はメジャーで5勝している。私の仕事はフェアウェイにボールを運び、あとは彼に任せることだ」と語り、互いの強みを完璧に理解し合っている。
プレジデンツカップを見据えた首脳陣の視線
また、この大会における「相性」は、秋の世界対抗戦「プレジデンツカップ」を見据える両軍の首脳陣にとっても重要なショーケースとなっている。アメリカ選抜のキャプテンを務めるスネデカーは、「理想を言えば、夏の終わりの大会でペアを試せたら最高だが、現実にはそんなスケジュールは存在しない」と嘆きつつも、今大会で選手のケミストリーを注意深く観察している。世界選抜のキャプテン、ジェフ・オギルビーも、同郷のキャム・デービスと組みながら実践の中で生きた情報を収集している。
チーム戦は、単なる技術の「足し算」ではない。互いの長所を引き出し合い、緻密な戦略を共有することで生み出される「掛け算」の結晶だ。1つのボールに込められた深い信頼と高度な戦略、そして首脳陣の熱視線が絡み合う瞬間、このチューリッヒクラシックの本当の面白さが浮き彫りになる。
