メジャー大会という極限のプレッシャーの中で、自己最高位となる4位タイ(通算12アンダー)フィニッシュを果たしたユン・イナ(韓国)。前週の「JMイーグルLA選手権」でのトップ5入りに続くこの快挙は、彼女のゴルフが現在、最高潮の状態にあることを証明している。「自分のプロセスに集中して、とても良い仕事ができた。自分のことを本当に誇りに思う」と、最終日を「68」で回った彼女は充実感たっぷりに振り返った。しかし、このメジャーでの大躍進の直後、彼女の視線はすでに「プロゴルファー」としてではなく、「一人のキャディ」としての次なるミッションへと向けられていた。

「このコースは私のためにある」 不屈のメンタルと自信

彼女の強さは、技術だけでなくその驚異的な精神力と前向きなキャラクターにある。初日のラウンド後、新会場となったメモリアルパークGCの印象を聞かれた彼女は、「ここの芝の感じがすごく好き。オーマイガー、このコースはまさに私のためにあるコースだわ! と思ったの」と、非常に強気でポジティブな発言を残している。

しかし、その初日には信じられないような不運にも見舞われていた。大雨でぬかるんだ7番ホール(パー3)のティーショットで、なんと足が滑って大ダフりし、ボールを池に入れてダブルボギーを叩いてしまったのだ。メジャーの序盤でこんなどん底の不運を味わえば、ズルズルと崩れてもおかしくない。

それでも彼女は全く折れなかった。不運なダブルボギーを叩きながらも、初日を見事「69(3アンダー)」でまとめあげると、第2ラウンドも「68」の好スコアをマーク。ムービングデーの第3ラウンドこそ「71」と少し足踏みしたものの、重圧のかかる最終日に再び「68」を叩き出し、見事に4位タイへ食い込んだのだ。トラブルにも揺るがない自信で立て直し、4日間で3度の60台をマークする。その実力と精神力の強さは、まさにメジャーのトップ5にふさわしい凄みだ。

立場逆転! 前代未聞の「キャディへの恩返し」

画像: ユン・イナと、彼女のキャディでプロゴルファーでもあるケビン・ベンステッド(PHOTO/Getty Images)

ユン・イナと、彼女のキャディでプロゴルファーでもあるケビン・ベンステッド(PHOTO/Getty Images)

そんなタフな戦いを終えたばかりの彼女が次に挑むのは、なんとも微笑ましく、そして驚くべき「恩返し」である。 実は今週、彼女のバッグを担ぎ続けてくれた相棒であるキャディ(ケビン・ベンステッド)が、「全米オープン」の予選会に選手として出場することになっているのだ。そして、その大一番で彼のバッグを運ぶ(キャディを務める)のは、他でもないユン・イナ本人なのである。

メジャーのトップ5選手が、自身のキャディのために今度は裏方に回る。プロゴルフ界でもめったに見られないこの「立場逆転」のストーリーについて問われると、彼女は照れくさそうに笑いながら、素直な心境を明かしてくれた。

「キャディの経験なんて今まで一度もないから、すごく緊張しているの。ほら、今も緊張しているのが分かるでしょ?(笑)」

「ただバッグを運ぶだけだからね」ユーモアに隠された深い絆

自分がプレーする以上のプレッシャーを感じていると語る彼女だが、そこは気心の知れた相棒同士。ケビンに対しては、あらかじめこう“予防線”を張っているという。

「彼にはこう言っておいたの。『私はあなたのことをあまり助けられないと思うよ。ただバッグを運ぶだけだからね。それだけよ』って」

「助けられない」という言葉の裏には、互いの実力を認め合い、過度な干渉をせずに信頼し合えるプロフェッショナルな関係性が透けて見える。

「私自身のゴルフにとっても新しい経験になればいいなと思うし、何より彼が楽しんでくれることを願っているわ」

威厳と重圧に満ちたメジャーの最終日。その戦いを終えた直後の会見で、相棒への気遣いとユーモアあふれるやり取りを披露したユン・イナ。飛ぶ鳥を落とす勢いでリーダーボードを駆け上がる新星の魅力は、トラブルにも屈しない強靭なメンタルだけでなく、周囲を笑顔にする親しみやすさと温かい人間性にもある。

今週の全米オープン予選会、プロゴルファー「ユン・イナ」ではなく、新人キャディ「ユン・イナ」がどのような手腕を発揮するのか。彼女たちのもう一つの熱い戦いに、エールを送りたい。


This article is a sponsored article by
''.