連続トップ25を「32試合」に伸ばす異次元の安定感
優勝したウィンダム・クラークの「30アンダー」という爆発的なスコアに隠れてしまいがちだが、シェフラーのプレー内容もまた素晴らしいものだった。ホールバイホールを確認すると、72ホールでボギーをわずか1つ(第3ラウンドの4番)しか叩いていないのだ。
結果として伸ばしあいの試合でも、プロのトーナメントを4日間回ってボギーを1つに抑えることは至難の業である。さらに、今大会で単独3位に入ったことで、ツアーでの連続トップ25フィニッシュを「32試合」に伸ばした。好不調の波に左右されやすいゴルフにおいて、これほど長期間にわたって上位に顔を出し続ける安定感は、全盛期のタイガー・ウッズに並ぶといっても過言ではない。彼が世界ナンバーワンに君臨し続けている最大の理由は、この圧倒的に底上げされた基礎力にある。
焦りを抑え込む「究極の忍耐力」
こうした成績を支えているのは、どんな状況でも揺るがない精神力だ。その凄みが如実に表れていたのが、同組のキム・シウーが猛チャージを見せていた第2ラウンドでのことである。
この日、自分が最もコントロールできていたのは「自分の心」だったとシェフラーは振り返っている。周囲の爆発的なスコアを目の当たりにしても、「誰かが毎ホールのようにバーディを奪い、トーナメントが自分から遠ざかっていくように感じる時こそ、無理に攻めることなく我慢強くプレーできた」と語るように、自分のペースを乱さずに耐え抜く究極のメンタルコントロールを見せつけた。
6番のチップショットに見る「勝者の運」の哲学
その達観した精神力は、最終日のプレー後にも表れていた。最終日の6番ホール、彼の放ったチップショットはカップに蹴られて惜しくも外れてしまった。もしあれが入っていれば、展開は大きく変わっていたかもしれない。
ラウンド後、この不運な一打について聞かれたシェフラーは、極めて冷静にこう答えている。
「勝っている時はああいうのが入るが、勝てない時はピンに当たって50フィート、60フィート離れてしまうものだ」
自分に運が向いている時もあれば、そうでない時もある。その理不尽さを誰よりも理解し、結果に対して過度に感情を乱すことなく受け入れる。この達観した勝負哲学こそが、彼が常に安定した成績を残し続けられる秘訣なのだろう。
バーディ合戦を勝ち切るための厳格な自己分析

4日間60台を重ね、ボギー1回でも優勝には届かなかったスコッティ・シェフラー。とはいえ、安定感は随一(写真は26年全米プロ、提供/PGAオブ・アメリカ)
最後に、彼は自分自身のプレーを客観的に、そして厳しく評価した。
「30アンダーを出す選手がいるコースで、(パー5のホールで)『5』を多く叩きすぎてはいけない」
ボギーを打たなかったことを誇るのではなく、バーディ合戦のコースにおいて「パー5で確実にスコアを伸ばしきれなかった」ことを敗因として分析している。さらに、「このようなコースでは、信じられないほど素晴らしいショットを打っていくつかのパットを決めるか、良いショットを打って大量のパットを決めるかのどちらかが必要だ」と語り、「今週の自分は『まずまずから良いショット』で、『いくつかのパット』を決めただけだった」と、自身のショットとパットの質・量のバランスを極めて客観的に測っている。
言い訳をせず、ただ自らの課題を見つめ直す。そして、最終日に「60」という異次元のスコアを叩き出した勝者クラークに対しても、「帽子を取って(脱帽して)『グッドプレー』と称えるしかない。今日『60』を打ち負かすのはかなり難しかった」と素直に惜しみない賛辞を送った。
スコッティ・シェフラーの強さの根源は、この揺るぎない自己評価の厳しさと、勝者を素直に称える器の大きさにこそあるのだ。
