トッププロたちがしのぎを削るPGAツアーの現場は、クラブメーカーにとって究極の開発ラボだ。そこでは今、我々アマチュアには到底理解できない“プロ特有の贅沢な悩み”から生まれた秘密兵器がテストされているという。未発表の「ミニドライバー」プロトタイプ誕生の裏側、そして、トーナメントでの劇的勝利を裏で操っていた専属パターエンジニアの存在。PINGの強さを支える、PGAツアー最前線のリアルな「対話」と「戦略」をレポートする。【全3回・3回目】

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画像: PINGの開発責任者ライアン・ストッケ(Ryan Stokke)氏

PINGの開発責任者ライアン・ストッケ(Ryan Stokke)氏

ヘッドスピードが速すぎるツアープロの贅沢な悩み

現在、一部のPGAツアープロたちの間で使用され、ギアファンの間で密かな話題を呼んでいるPINGの「ミニドライバー」。なぜ今、ドライバーとフェアウェイウッドの中間のようなクラブが必要とされているのだろうか。ライアン・ストッケ氏は、その背景にあるツアープロ特有の「贅沢な悩み」を明かしてくれた。

PINGがツアー専用のミニドライバーのプロトタイプをテストしている理由は、ヘッドスピードが極めて速いプロたちの「3番ウッドをティーショットで使うと飛びすぎてしまう」という悩みに応えるためだ。現代の進化した3番ウッドは、彼らの圧倒的なパワーをもってすればドライバーに匹敵する飛距離が出てしまい、レイアップ(刻み)の役割を果たさなくなっているのだ。

さらに技術的な課題もある。3番ウッドはフェースがシャロー(薄い)なため、ティーアップして打つ際には打点が上下にブレやすく、テンプラやダフリのミスが出やすいという欠点がある。そこで白羽の矢が立ったのがミニドライバーだ。ヘッド体積が3番ウッドよりも少し大きいため寛容性が高く、フェアウェイキープ率が向上し、距離のコントロールもしやすくなるメリットがある。プロにとって、より確実で安全にフェアウェイを捉えるための究極の「お助けクラブ」として機能しているのだ。

ただし、このミニドライバーには明確な“弱点”も存在する。ストッケ氏は「芝の上(フェアウェイ)から直接打つ場合は、3番ウッドのほうが低重心でフェースもシャローなため、良い結果になることが多い」と語る。ミニドライバーはフェースがディープで重心が高くなるため、芝からは打ちづらい。つまり、「フェアウェイからは打ちづらいが、ティーショットでは最強」という極めてピーキーな特性を持つことになる。

いかにプロのセッティングがシビアで、特定の状況に特化した秘密兵器であるかがうかがえる。このプロトタイプを一般市場に投入するかどうかについて、ストッケ氏は「現在学習中の段階である」と慎重な姿勢を崩していない。

創業者のDNAを受け継ぐ、専属パターエンジニアの存在

PGAツアーの現場では、PINGの緻密なサポートは、ドライバーだけにとどまらない。PINGのアイデンティティともいうべきパターでも、極めて専門的なチームが動いている。パターはパフォーマンスの差をデータで実証するのが最も難しいカテゴリーだが、PINGは専属のパターエンジニアを毎週帯同させ、選手と密接に連携しているのだ。

画像: PINGのアイデンティティともいうべきパターたち

PINGのアイデンティティともいうべきパターたち

特筆すべきは、この現場に帯同するエンジニアの“血統”だ。ストッケ氏によれば、「彼はPINGの創業者であるカーステン・ソルハイムと一緒に働いた歴史があり、ジョン・A・ソルハイム、ジョン・K・ソルハイムと、代々PINGのパター開発のDNAを受け継いできた人物である」という。単なる優秀な担当者ではなく、創業者の魂を直接受け継ぐ熟練エンジニアが自ら毎週ツアー現場に出向いている。ここにも、PINGのパター開発にかける本気度と他メーカーにはない歴史の重みが表れている。

この密接なリレーションシップが、最高の結果をもたらした実例がある。クリストファー・レイタンが新しい「Alley Blue」スタイルのパターにスイッチし、見事優勝を果たしたのだ。ツアーエンジニアが現場で選手のフィーリングと最新テクノロジーを融合させ、即座に結果へと結びつけた見事な連携プレーである。

彼らが提案する最新のパターテクノロジーの凄みは、データによっても裏付けられている。最新モデルに搭載された「EYE-Qテクノロジー(Quiet Eye)」は、プレーヤーが視線を向けるフォーカスポイントを明確にしたデザインにより、視線をしっかりと固定し、集中力を高める効果が実証されているという。視覚という極めて感覚的な要素にまで科学のメスを入れ、プロの過酷なプレッシャーを軽減させているのだ。

プロの常識外れの悩みから生まれたプロトタイプと、大会を裏で支えるエンジニアの献身。PINGの強さの秘密は、テストラボの中だけでなく、勝負の現場におけるリアルな対話の中にこそ隠されている。

彼らの献身の先には、ツアー優勝という最高の結果を出した者にのみ許される、本社保管庫の「黄金のパター(Gold Putter)」コレクションに、また新たな一本を加えるという究極の目標があるのだ。(文/山口哲平)

写真/有原裕晶


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