複合フェースの目的は「チタンの薄肉化」にある
GD 2026年は「フェース大革命」とも言える、多層構造のフェースを搭載したドライバーが数多く登場してきました。プロギアも昨年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」でプロトタイプを披露していて、ついに「RS DUO」シリーズとして正式に発売が発表されました。今日はシリーズ3機種を試打した感想をお願いできますか。
長谷部 去年の10月頃にメディアでリーク記事が出ていましたね。私にとって「DUO」という名前は本当に久しぶりで、懐かしい気持ちがありました。2002年末の男子ツアーでの話題から2003年の発売の“デュオ旋風”と呼ばれた、ドライバーの革新的な構造(いわゆるルーフ型コンポジットと言われるもの)と圧倒的な飛びを今一度思い出させるものがあり、今回の試打ラウンドには非常に期待して臨みました。
今回、その「デュオ構造」がクラウンではなくフェース面に採用されたわけですが、今年のトレンドを振り返ると、キャロウェイの「クアンタム」やミズノの「JPX」も、フェース構造をチタン単一からカーボンなどの他素材を組み合わせた複合型へと進化させてきました。その流れの中で、「なるほど、フェース面をカーボンにしつつも、実にプロギアらしい複合構造だな」と実感しましたね。
GD プロギアの場合は表側から「カーボン・樹脂・ナイロンメッシュ・チタン」という4層構造で、キャロウェイは「表側がチタンで内側にカーボン」という多層構造でした。この層の順番が逆になっている点には、どのような意図の違いがあると思いますか?
長谷部 どちらも「チタンの反発性能を高めるために極限まで薄肉化したい」という発想が原点にあるのは共通しています。ただキャロウェイの場合は、フェースの表面にカーボンを出すことに対して慎重だったのかもしれません。「特に裏側なのでカーボン素材にはこだわっていなかった」という説明もありました。チタンを単純に薄くするだけでは強度が持たず、反発係数もルールを超えてしまう。そのルール内(CT値)に収めつつ高機能を維持するための「裏方の黒子」として、たまたまカーボンが最適だったという解釈だと思います。
一方でプロギアの場合は、それをあえてフェースの表面に持ってきた。これは長年カーボン素材の研究を続けてきた自負もあるでしょうし、同社が「ギリギリ設計」を掲げる中で、チタン薄肉化を追求するあまり2016年に飛びすぎでルール違反となってしまった「RS」のフェース設計を生かした結果と言えます。フェースをカーボンにすることによるチタンフェースの凹凸も生かした高い反発性能や、チタンボディによって得られるカーボンフェースなのに、鈍くない打音まで含めた緻密な計算がなされていると感じます。
GD 多層構造の最大の目的は、「チタンフェースを薄くしてたわみを使うこと」ですが、薄くしただけでは強度が持たず割れてしまうため、他素材を足して耐久性を高めるとともにルールの範囲内に収める。そのような理解でいいわけですね。
長谷部 ミズノの「JPX」も、軟式野球バットの「ビヨンドマックス」のように、ボールとフェース面の軟らかさを合わせて飛ばす発想を原点としています。構造としては、その裏側にチタンの薄肉化が隠れているわけです。結果として高反発構造を支えるために「ナノアロイ」を使用している。ミズノは全面的には言及していませんが、その構造の裏にはやはり「チタンの反発を極限まで高めたい」という狙いが見て取れます。
GD 考え方は各社共通しているということですね。そうなると、いち早くチタンフェースから脱却したテーラーメイドの「カーボンフェース」は、重量軽減が主な目的でしたよね。今回の多層構造と、テーラーメイドの60層カーボンフェースとでは、意味合いが異なると考えたほうがよいでしょうか。
長谷部 明確に違うと見たほうがいいでしょう。あくまでテーラーメイドが目指しているのは「余剰重量の創出」です。「Qi4D」シリーズのマックス系などでは、もはやジュラルミンのボディを採用して脱チタンを謳っているほどですから。
彼らは「カーボンウッド」と呼ぶ通り、徹底的に余剰重量を生み出して、それを慣性モーメントの最大化やフィッティングの自由度に活かすという割り切りがあります。その中で、カーボンフェースの性能をいかにチタンの打感や性能に近づけるか、という方向で進化しています。
対して、今回のプロギアを含む他メーカーは「チタンという素材をいかに進化させるか」がベースで、そういった意味では、テーラーメイドと比較するのは少し違う気がします。
GD 「チタンを薄くして弾いて飛ばす」というのはイメージしやすいのですが、「カーボンが弾くのか」という点では、アマチュアには少し分かりにくい部分があります。
長谷部 「弾く」という言葉だと伝わりにくいかもしれませんが、当然カーボンも変形して復元するので、そこは弾いていると考えて間違いありません。ただ一点気になるのは、テーラーメイドやヤマハのカーボンフェースがかなり「ディープフェース」である点です。これは現状のカーボン素材の設計上、反発性能を上げるためにはフェース面積(縦横の幅)を広く取らなければならないという理由でしょう。
ところが今回の多層構造におけるチタンフェース設計は、部分的な肉厚をコントロールできる「偏肉設計」にメリットがあります。特にキャロウェイは「AI設計」でこれを最適化していますが、これならシャローフェースでも高い反発性能を維持できる。「やさしい重心設計」を追求してシャローフェースに作るなら、この多層構造のメリットは非常に大きいのではないでしょうか。
GD 実際に打ってみると、やはり従来のチタンフェースとは異なる感触がありました。慣れないせいか少し違和感もあったのですが、そのあたりはどう感じましたか?
長谷部 そうですね。「違和感」という言葉で括ると誤解を招くかもしれませんが、まさに「新しい感触」です。これは素材が変化する過渡期に、我々が常に経験してきたことの延長線上だと思います。高反発ドライバーが初めて登場した頃も、打感はかなり硬く、甲高い音を感じましたが、それでも飛距離というメリットを優先しましたよね。
これまでのチタンボディからカーボンコンポジットボディへの移行でフィーリングの変化はありましたが、今回はボールが直接当たる「打面」そのものが変わった。そのため、我々ユーザーがその変化を敏感に認識しやすく、違いを覚えやすいのだと思います。
GD 打感に関しては、すごく軟らかく感じました。チタン特有の「パーン」と弾く感じとは違う、「吸い付き感」のようなものがあります。今までに経験したことのない飛び方をしているので、あえて「違和感」という言葉を使いましたが、飛距離性能としては決して悪くないですよね。
長谷部 いわゆる「乗り感」ですね。チタン単一の高反発ヘッドで打った時の弾き感とは全く異なります。一旦フェースにくっついてから離れるような感触は、「クアンタム」や「JPX」でも感じましたが、今回の「RS DUO」でも同様でした。
ただ「RS DUO」の場合、フェースにカーボンを使いながらも、感触としてはテーラーメイドに近く、比較的しっかりとした硬さがあります。ですから「乗って潰れる」というほど過度なフィーリングではなく、打音もそれなりに高く出る。芯に当たれば抜けるような爽快感があり、外せばそれなりに響く。そういった意味では、今回の多層構造の中でも、最もチタンのフィーリングに近いのが「RS DUO」ではないかと感じました。
GD 打音はどうでしたか?
長谷部 事前に何も言われなければチタンに非常に近いと感じるはずです。さすがに「カキーン」というような高い金属音はしませんが、かといって「ポコッ」という籠もった音でもない。すぐに慣れることができる、心地よい範囲の音ですね。「RS DUO」はボディがフルチタンなので、音、打感は「クアンタム」とも違い、フェース面がカーボンであることを忘れてしまうかもしれません。
GD 今回のプロギアの3モデル、「RS F」、「RS(スタンダード)」、「RS MAX」の違いについてはどうでしょう。
長谷部 まず「MAX」ですが、これが一番やさしいモデルでありながら、海外ブランドのいわゆる「10K(大慣性モーメント)」モデルとは一線を画す、振り心地の良さがあります。「これ本当にMAXなの?」と疑いたくなるほどの振り抜きやすさでしたね。大慣性モーメント特有の鈍重さがなく、それでいて曲がらない。この振りやすさはズバ抜けています。
中心となる「RS(スタンダード)」は、私にとっては最も振りやすく感じたモデルでした。「F」は体積445ccで、見た目も少し小ぶりです。ヒール側がシェイプされており、構えた瞬間に「叩いていける」と感じさせる形状です。ドローヒッターや左へのミスを嫌う人向けの設計ですが、重心距離をあえて長くし、重心深度も浅く設定されています。テーラーメイドが好きな方にも受ける顔かなと思いました。
3モデルそれぞれに明確な役割を持たせつつも、共通して「振りやすさ」を重視した重心距離設計がなされているのが非常に印象的でした。前作の「RS Xシリーズ」との違いはここにあるように思います。
GD 私の印象では、特に「重心深度」が影響していると感じました。極端にヘッドが後ろに伸びているわけではありませんが、3モデルで深度が異なり、最も深いのが「MAX」、浅いのが「F」、その中間が「RS(スタンダード)」でした。一番安心して振り切れたのは「MAX」で、重心深度の深さが自分のスウィングのタイミングにピタリと合った気がします。これはドライバー選びの重要なポイントになりそうですね。
長谷部 その通りだと思います。一般的に重心を深くすると重心距離も勝手に長くなってしまいますが、今回のモデルはあえてヒール側にウェイトを寄せるなどの調整で、重心を深くしつつも重心距離を長くしすぎない工夫がされています。これは非常に珍しく、日本メーカーらしい細やかな設計ですね。外ブラのMAX系を使っているけれど、どうしても気持ちよく振れないと思う方にはお勧めできる「MAX」ですね。
GD 従来のチタンフェースに慣れた人には新しい打感や飛び感があると思いますが、全体的な飛距離性能の進化についてはどう感じましたか。
長谷部 ラウンドでの試打でしたから計測データを取ったわけではありませんが、初速の速さを強く感じる「飛び姿」でした。弾道も非常に力強く、見ていて気持ちが良かったですね。
GD 確かに、打球の飛びっぷりは見事でした。
長谷部 良かったですね。特にスタンダードの「RS」は、3モデルの中で重心が最も低いと言われていますが、スピンが過度に入ることなく、強い球で飛んでいきました。期待していた以上の飛距離で、特にアゲインスト(向かい風)に対しても強い印象を受けました。
GD 前作の「RS X」でも感じましたが、プロギアの3モデルは性能差が近いところで絶妙に分けられていますよね。
長谷部 前作は各モデルの個性がかなり際立っており、自分に「合う・合わない」がはっきりしていました。しかし今回のモデルは、3つとも「すごく振りやすい」という共通の土台があります。また、ヘッド形状の違いでもフィーリングの差がほとんどありません。それぞれが「ギリギリ設計」でありながら、カーボンコンポジットフェースを採用したことで、モデルを問わず同じ質の打感が担保されているように感じました。
GD モデル名ごとの性能はしっかり継承されている、ということですね。
長谷部 性能差は明確にありますが、どれを選ぶか迷うほど振り心地が近い。これこそがトータルとしての大きな進化と言えるのかもしれません。
GD 今日ラウンドしていて、「スタンダード」と「MAX」のどちらが良いか、最終ホールまで迷うほどでした。慣れてくると「MAX」のほうが力まずに気持ちよく振れた気がします。これは数値だけでなく、フィーリングが大きく介入してくるクラブですね。
長谷部 他社の場合だと、セミアスリート向けの「LS」、中心となる「スタンダード」、寛容性の「MAX」とあって、個性が強いために「自分にはこれしか合わない」と決まってしまいがちです。しかし今回のプロギアは、一貫した振りやすさが全モデルで維持されています。
少しでも「これいいな」と感じた人は、3つのモデルをじっくり打ち比べてみるのが楽しいはずです。安定感で飛ばすなら「MAX」ですし、左へのミスを消したいなら「F」を選び、さらに「F」の中で重心位置を入れ替えれば性能を変えることもできる。この「RS DUO」独特の打感を気に入ることができれば、この3兄弟は選ぶプロセスすら楽しめる、非常に完成度の高いクラブだと思います。
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