「JPX ONE」のロフトは9度、10.5度をラインナップ。試打シャフトはメーカー純正の「TENSEI RED MM D」。メーカー情報によれば、低・新重心設計と大き目の投影面積を持つヘッドにより、さらなる直進性と安定した初速性能を実現。クラウンおよびソールの軽量化によって余剰重量を最適配置したモデルだ。
フェースにはNANOALLOYを最適化してチューニングした新「CORTECH」フェースを採用し、同社のST-MAXと比較して最大約11%の薄肉化を実現。これにより打球速度を劇的に向上させ、オフセンターヒット時でも高いボール初速を維持する広大な高初速エリアを獲得している。野球経験者ならお馴染みの軟式野球用バット「ビヨンドマックス」の飛ぶ設計を応用しているという。

ミズノ「JPX ONE」10.5度/「TENSEI RED MM D」の組み合わせ
※画像右は軟式野球バット「ビヨンドマックスレガシーメタル トップ(金属製)」(引用:ミズノ公式サイト)
小島(慶太): 見た目はどうですか?
癸生川(ケブ兄): 構えやすさはあるんだけど、実際に振ってみるとシャフトの動きがかなり速くて、僕の感覚からすると少しタイトというか、最初はちょっと振りにくそうなイメージがあるね。
慶太: 今回のミズノ「JPX ONE」は世界初の樹脂製フェースを採用していて、あの軟式野球で一世を風靡したバット「ビヨンド」を応用した技術が盛り込まれているそうなんです。設計上、表面が柔らかくて内が硬いという特性を持たせているみたいですね。
ケブ兄: なるほどね。フェースにくっ付くように感じるのか、それとも弾き感を強く感じるのか、予想できないし面白い打感になりそうだね。
慶太: その独特なフェース素材と走る系のシャフトを組み合わせることで、インパクト効率を上げて飛距離を伸ばそうという意図があるのかもしれません。今回もインドア施設で試打を行うので、データ計測は「GCクワッド」を採用し、ヘッドスピードはいつもと同じ「トラックマン4」を使用していきたいと思います。
試打で使うボールはいつも通りタイトリスト「PRO V1」。では試打開始!
42m/s前後でセンターで試打! ※ヘッドスピードはトラックマン換算
42m/s前後でセンターヒットの試打データ
ケブ兄: ちょっとつかまる感じがあるね。ドローが打ちやすいかも。
慶太: データを見ると、やっぱりダイナミックロフトがあまりついてこないですね。打ち出し角が10.7度しかありません。このヘッドスピード帯をターゲットにするならもう少し上がってほしいところですが、落下角が32.4度と、弾道がかなり強い(低い)球になっています。
ケブ兄: 球が上がりにくいのは、このフェースの影響なのかな?
慶太: スピン量はしっかり入るものの、打ち出しが低くなるように設計されている可能性があります。「キャリーを落とさずに、ランも含めたトータルで前へ飛ばす」というコンセプトは伝わってきますね。ただ、球が上がりきらない分、アマチュアの方にはコントロールが少しシビアに感じられるかもしれません。ケブ兄がさっき「なんか振りにくい」と言っていたのは、この辺りが原因ですね。
【GCクワッドのデータ】
クラブスピード●42m/s
ボール初速●61m/s
打ち出し角●10.7度
スピン量●2669rpm
落下角度●32.4度
キャリー●218Y
飛距離●241Y
Hインパクト●4ミリ・ヒール
Vインパクト●0ミリ高
42m/s前後でトウ側で打ってみる ※ヘッドスピードはトラックマン換算で42m/s
42m/s前後でトウヒットの試打データ
ケブ兄: トウヒットのわりには、球が上がってくれているような気がする。
慶太: そうですね。案外トウで球が上がってくれるので、打ち出しの高さが確保されています。その結果、スピン量が少し減るマイルドな挙動になっていますね。
ケブ兄: じゃあ、ミスしても飛距離は落ちていない?
慶太: いえ、データを見るとクラブスピードが少し上がっている割には、ボール初速が61m/sから59m/sへと、2m/s落ちています。同じヘッドスピードで換算したとしたら、キャリーとトータルで6〜7ヤードはロスする計算になりますね。ヒールほどではないですが、芯を外した時の初速の落ち幅は普通にあります。もともと球が上がらないタイプのゴルファーだと、トウヒットでドロップしてしまうリスクもありそうです。
【GCクワッドのデータ】
クラブスピード●43m/s
ボール初速●59m/s
打ち出し角●14.2度
スピン量●2537rpm
落下角度●36.9度
キャリー●218Y
飛距離●239Y
Hインパクト●28ミリ・トウ
Vインパクト●6ミリ高
42m/s前後でヒール側で打ってみる ※ヘッドスピードはトラックマン換算で42m/s
ケブ兄: うわ、ヒールに当たった……。衝撃が手にダイレクトに来るね。でも、ヒール特有の右にすっぽ抜けてスライスする感じは少ないな。逆に引っかかりそうな雰囲気すらある。
慶太: 確かに曲がらないという方向性の利点はありますね。右にパンと抜ける球にはなっていません。ただ、問題はボールスピードの落ち方です。いくら27ミリという大外れのヒールとはいえ、ボール初速が2m/s以上もガクンと落ちています。同じクラブスピードで換算すると、実際は2.5〜3m/s近く初速をロスしている計算になります。
ケブ兄: 初速がそれだけ落ちると、飛距離もかなり厳しくなるね。
慶太: はい、トータルで20ヤード近く飛距離をロスしてしまっています。「慣性モーメントが大きいヘッド」とのことですが、芯を外したときの距離の落ち具合が顕著に出ていますね。センターヒットなら飛ぶヘッドですが、この「外したときの距離の寛容性のなさ」が、アマチュアにとってミズノが「飛距離が出にくい」と言われてしまう理由かもしれません。ヒールにミスしやすい人には、このクラブはちょっと厳しいセッティングになりそうです。
【GCクワッドのデータ】
クラブスピード●43m/s
ボール初速●59m/s
打ち出し角●10.8度
スピン量●3336rpm
落下角度●34.5度
キャリー●202Y
飛距離●223Y
Hインパクト●27ミリ・ヒール
Vインパクト●3ミリ低
総評

分析を担当した小島慶太プロ(左)と試打を担当した癸生川喜弘プロ(右)
慶太: センター、トウ、ヒールと検証してきましたが、確かにヒールヒット時の飛距離ロスなどシビアな面は見られました。しかし、ここで注目すべきは「方向性の圧倒的なバラけなさ」です。ケブ兄が外した瞬間に「感触が悪い」とリアクションしていましたが、実際のデータを見ると左右のズレはほぼゼロで、球がねじれる雰囲気がまったくありませんでした。ゴルフは結果のスポーツですから、ミスをしてもフェアウェイに残るという点では、非常に優秀な結果だと言えます。
ケブ兄: 確かにね。ヒールに当たっても右にパンとすっぽ抜けないし、トウ側に外した時は案外球が上がってくれてキャリーもしっかり維持されていた。プロでも毎回センターに当たるわけではないから、自分の打点ミスがそのまま大きな曲がり(OB)に繋がらないというのは、実戦で大きな安心感になるよね。
慶太: そうなんです。センターヒット時はダイナミックロフトが抑えられた強い弾道で、ランも含めたトータルでの推進力があります。打点がブレても球が真っ直ぐラインドライブしてくれるので、狭いホールでタイトに攻めたいゴルファーや、アゲンストの風に負けない球を打ちたい方にとっては、スコアを出す上で非常に理にかなったクラブ構造になっています。
ケブ兄: もともと弾道を低めに抑えたい方や、フェースパスでコントロールされたフェードを打ちたい実戦派のプレーヤーには、この直線的な強さは抜群にハマるヘッドだと思う。芯を外したときの距離の落ち方にさえ慣れてしまえば、トウ側のミスには強いし、何より「大怪我をしない」という絶対的なメリットがある。ミズノ独自の新しい複合フェースのポテンシャルを引き出すためにも、純正シャフトだけでなくフィッティングを活用して最適な組み合わせを見つければ、コース攻略がぐっと楽になるオススメの1本だね。

データ分析担当:小島慶太
インドアゴルフスタジオ「ゴルフアップ」を主宰するトラックマンマスター。トーナメントプロ、ティーチングプロの資格を持つ。6店舗すべてレッスン受け放題、通い放題で各種スペックが揃った無料レンタルクラブも完備。稲毛海岸店ではGCクワッドが導入されている個室プレミアムルームも完備されている。

試打担当:癸生川喜弘
大学卒業後にオーストラリアに単身ゴルフ修行、2006年に日本プロゴルフ協会のプロテストに合格。現在はシニアツアーに挑戦する傍ら、アマチュアへのレッスンやダブルイーグル恵比寿店(毎週月曜日・火曜日)、ヴィクトリアゴルフ六本木ヒルズ店に勤務している。
THANKS/ゴルフアップ 稲毛海岸マリンピア専門館店



