堀川未来夢と蟬川泰果の死闘から1年。今年も「宍戸ヒルズカントリークラブ 西コース」を舞台に、「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」が幕を開ける。予選と決勝でパー設定が異なる変則の2番ホールや、ティーの新設により距離が34ヤードも伸びた難関8番ホールなどを持った、難攻不落のチャンピオンシップコースだ。この大舞台でドラマを作ってくれそうな若手選手たちに話を聞いた。

「一発」を狙う木村太一

先週のACNツアー「太平洋クラブチャレンジトーナメント」で優勝を果たした木村太一

先週の下部ツアー(ACNツアー)「太平洋クラブチャレンジトーナメント」で5打差の完全優勝を果たし、この会場に乗り込んだ木村太一(27歳)。DPワールドツアーに参戦している桂川有人や、昨年の「日本プロ」覇者である清水大成とは日大の同期だ。

近年、ACNツアーでの優勝からチャンスをつかみ、レギュラーツアーでも結果を出す選手を多く見てきた。

「僕は昨年のサードQTで失敗し、今回はリランキングの対象ではないので、まずはACNツアーで3勝して裏シードを取ることを目指しています。ただ、この大会で本当に一発(優勝など)が出れば……。練習量やトレーニングを増やし、ゴルフ漬けの生活を送ったおかげで、先週やっと一度結果が出て自信になりました」

焦りはもちろんある。しかし、同期に置いていかれるつもりはない。合宿などで慣れ親しんだこのコースで、“一発”を狙う。

「調子はいいです。ここはグリーンが難しい。もちろんそこ(グリーンにたどり着くまで)も難しいですけど、グリーンに乗ってもカップインするまで油断できません。ただ4年前(2022年大会)、予選が終わってトップタイに立ったこともありますし、苦手意識はあまりないですね。あのときは最終日に崩れたので、今年は丁寧なマネジメントで戦いたいです」

米澤蓮を筆頭に、チーム東北福祉大で練習ラウンド

画像: 前澤杯にてツアー3勝目を挙げた米澤蓮、左から鈴木晃祐/米澤蓮/湯原光/古瀬幸一朗

前澤杯にてツアー3勝目を挙げた米澤蓮、左から鈴木晃祐/米澤蓮/湯原光/古瀬幸一朗

今季すでに「前澤杯」でツアー通算3勝目を挙げ、先週の「ミズノオープン」では“イーグル締め”で2位タイに入って全英オープンの出場も決めた米澤蓮(26歳)。彼は、東北福祉大の後輩たちである鈴木晃祐(25歳)、湯原光(23歳)、古瀬幸一朗(22歳)と練習ラウンドをしていた。

4人で回るのは「今回が初めて」と偶然一緒になったそうだが、後輩たちは先輩のプレーから多くを学んだようだ。

「もう上手すぎて、死ぬほど勉強させてもらいました。アプローチで聞いたことのない、ガッツリとスピンが入っている音がしていました」(湯原)
 
「コースは、今のところ今年回ったなかで一番難しいという印象です。フェアウェイに置いて、グリーンの真ん中に乗せていかないと」(古瀬)

今年はフェアウェイが少し広がり、ラフも少々短く刈られているというが、米澤は「ティーグラウンドが新設されたりして、より難しくなっている。ここはダブルボギーを打たないようにすることが大事です」と引き締める。それに対し、後輩たちは「さすが先輩!」と感嘆の声を上げた。

記者が「この4人の中から優勝者が出ると書いてもいいか」と尋ねると、米澤が「彼が一番仕上がっています。(副賞の)BMWの車にも試乗していましたよ」と鈴木に水を向ける。

「ボギーもたくさん出るコースなので、ミスをいかに引きずらないようにするか。そうすればバーディチャンスはいくつか来ると思うので、耐えて、耐えて……この試合はメジャーなので、優勝したい大会ではありますね」(鈴木)

そう意気込む後輩に目を細める米澤。彼自身も、昨年は3日目までトップタイにつけ、結果的に3位タイで終えている。「昨年も優勝争いをした相性のいいコースです。今週も頑張ります」と不敵に笑い、ティーイングエリアへと向かっていった。

兄の炎がクラブレップを務める大嶋宝

画像: 「ミズノオープン」でホストプロとしてプロ入り後初めて戦った大嶋宝

「ミズノオープン」でホストプロとしてプロ入り後初めて戦った大嶋宝

先週の「ミズノオープン」をホストプロとして戦った大嶋宝(23歳)は、全員が日本アマ出場歴を持つ「大嶋四兄弟」の三男だ。長男の炎(28歳)と四男の港(21歳)もプロゴルファー。次男の光(25歳)も含め、4人で教え合い、切磋琢磨し続けてきた。

先週はホストプロとしてかなり緊張したそうだ。

「(大会に出場するのは)2回目でしたけど、ミズノさんの試合ですし、地元(岡山)での開催でしたから。僕はあまり緊張することはないんですが、先週はなぜか初日から、とにかく予選は通らないといけないとプレッシャーを感じてしまって……」と語る弟の横で、今はミズノのクラブレップとして弟を見守る兄の炎が、「社長がスタートホールの目の前にいたからじゃないですか?」と優しく突っ込む。先週は、兄にとっては自身の職場であり、弟にとっては大切な契約先が主催する、特別な舞台でもあったのだ。

「(兄がレップで)めっちゃやりやすいです。僕はまだまだ下っ端なので、メーカーの方には言いにくいこともあるんですけど、兄にはちゃんと言えます」(宝)
 
「今まではなかなか一緒にラウンドできなくて、年に3回くらいしか宝のスウィングを見なかったけど、今は毎週見られる。体の変化や調子がわかるのがいいですね。今、クラブは合っていると思いますよ」(炎)

とても仲の良い兄弟なのだ。今週も、兄が見守るなかで弟は上位を目指す。

「ここは2回目ですけど、めちゃくちゃ難しいです。昨年はインで3日目、4日目ともに5オーバー。でも今年は経験値が少し上がって、打ってはダメなところとか何となくわかっているので。ティーショットが大事なのと、でもやっぱりセカンドも……結局全部大事ですね。ミスするとボギー、いやダボでもすまないようなところもある。それは避けたい。“ボギー列車”に乗らないようにしたいです」

この日も、いつも一緒に練習ラウンドをするという同学年の小林大河(22歳)、小田祥平(22歳)と回っていた。

「同世代がたくさんいるのは励みになります。皆、調子は上がっていますよ。この大会は僕が今のところ出られる試合で一番ポイントが高いので、リランキングに向けて、キャリアハイのトップ10に入りたいです」(宝)

大学同級生の中野麟太朗と竹原佳吾

大嶋たちと同学年で、早稲田大学で同級生の中野麟太朗(22歳)、竹原佳吾(22歳)も、淡々と練習ラウンドをこなしていた。

画像: 左から:竹原佳吾/中野麟太朗
左から:竹原佳吾/中野麟太朗

竹原はこう語る。
「このコースは難しいですね。ラウンドしたことはありますけど、あまり覚えていないですし、試合のセッティングですからほぼ初見のようなものです。ポイントはインコース、特に上がりの4ホール。アウトでどれだけスコアを伸ばし、その後耐えられるかという勝負になります。フェアウェイをキープして、2パットで“普通のパー”をどれだけ拾えるかが大事。目標はトップ10です」

一方の中野は、「僕も回ったことはありますけれど、やはりセッティングが難しい。でも、あまり知らないほうが上手くいくのかもしれません。調子は良くも悪くもなく、予選落ちすることもないような状態なので、(優勝は)いつか来るだろうなという感じで、焦らずチャンスを待っています。この大会は初優勝が多いとも聞きました。歴代チャンピオンも若い頃に勝っていますし……」と、虎視眈々とチャンスをうかがっている。

さらに、早稲田大で同級生の安保卓哉(22歳)が先週の下部ツアー(ACNツアー)で単独2位に入った話題を振ると、「安保くんの最後の18番のバーディパット、気になって後からYouTubeで見ましたけど、カッコよかったですよね。僕も頑張ります」と、中野の目の色が一段と鋭くなった。

「メーカーの担当者(レップ)の方たちが言うには、僕は気合いが入ったとき、目に出るらしいんです。今週はここからモードチェンジしていきたいです」

言葉通り、“目力”を1ランクアップさせてコースへと駆けていった。台風一過、今年はどのようなドラマが生まれるのだろうか。


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