過酷なサバイバル戦となった今年の「メモリアルトーナメント by ワークデー」。日本勢にとってもミュアフィールド・ビレッジの洗礼は厳しく、松山英樹は通算7オーバーの43位タイ、久常涼は通算16オーバーの52位タイと、ともに下位に沈む苦しい結果で4日間を終えた。選手たちを大いに苦しめたこの難関大会を、「2歩進んで1歩下がるような一週間だった」と総括したのがローリー・マキロイである。最終日に順位を伸ばしきれなかった彼は、次週に控える大舞台「全米オープン(シネコック・ヒルズ開催)」に向けて、自身の抱える技術的な葛藤、そして現代メジャー大会の「異常な練習環境」について赤裸々に語った。

ミリ単位のスウィングのズレとドライバーへの不満

マキロイは今大会を振り返り、アイアンやウェッジの感触には手応えを得たものの、ドライバーショットに不満を抱えている。

「ダウンスウィングでクラブがプレーンの下に入りすぎてしまうんだ。それを無理にハンドファーストに引っ張ってアジャストしようとすると、今度はトウ寄りにミスヒットして左に引っ掛けてしまう」

誰もが羨む圧倒的な飛距離を持つ超一流選手であっても、ミリ単位のスウィングのズレと常に格闘している。全米オープンに向けて、このドライバーの修正が彼の最優先課題となる。

取り巻きで大渋滞。メジャー大会の「異常な練習環境」

しかし、その最終調整の場となるはずのメジャー大会本番週(月曜〜水曜)の練習ラウンドについて、マキロイは顔をしかめながら現代ゴルフ界の奇妙な実態を明かした。

「今のメジャー大会は、ロープの内側に『取り巻き』が多すぎるんだ。関係者があふれかえり、進行が信じられないほど遅くなっている」

マキロイによれば、もはやメジャーの練習ラウンドで18ホールを回ろうとする選手は一人もいないという。

「誰もが9ホールをプレーするだけで3時間もかかるという事実を、半ば諦めて受け入れているんだ。だから皆、あちこちから何球もボールを打って時間を潰すしかない」

この異様さは、昔のメジャー大会の光景を知る者からすると信じがたいものだ。かつてはアーノルド・パーマーやジャック・ニクラスが練習ラウンドで「69」や「70」で回ったことがニュースになっていたが、今ではまったく状況が異なる。記者の問いに、マキロイはこう答えている。

「今は練習ラウンドでスコアをつけることなんて不可能だ。だって、ピンを狙うことすらしないのだから。本番用のカップの場所は温存されていて、(練習日には)わざと4〜5度の傾斜の途中にカップが切られているんだよ」

最高峰のタイトルを争う真剣勝負の準備期間であるはずが、コース内は大渋滞を起こし、まるでサーカスのような喧騒に包まれているのが現代のメジャー大会のリアルなのだ。

喧騒を避けるマキロイ流「早朝逃亡」と、驚きの裏技

画像: タイガーと同じく、練習ラウンドは早朝スタートだと話すローリー・マキロイ(写真は26年トゥルーイスト選手権、撮影/岩本芳弘)

タイガーと同じく、練習ラウンドは早朝スタートだと話すローリー・マキロイ(写真は26年トゥルーイスト選手権、撮影/岩本芳弘)

では、この劣悪な練習環境の中で、マキロイはいかにして自身のスウィングを研ぎ澄ませているのか。彼が実践しているのは、喧騒を置き去りにする「早朝逃亡」である。

「朝6時半にティーオフして、他の連中がバックナインを回り始める前の8時半にはハーフを終えるようにしている。とにかく誰よりも前に出ること、それしかないんだ」

しかし、早朝スタートであっても、ランダムな選手と同組に入れられてペースを乱されることはないのだろうか。そう問われたマキロイは、笑いながら自身の「裏技」を明かしている。

「たまにあるよ。でも、僕はスタート係といい関係を築いているから、自分の名前を書いたら、残りの3枠は『Reserved(予約済)』にして埋めてしまうんだ」

この夜明けとともにコースに出るルーティンは、かつて全盛期のタイガー・ウッズが10年以上にわたって頑なに実践していた「ウッズ流」のアプローチそのものである。余計な取り巻きや喧騒を排除し、静寂の中でコースと対話するためには、誰よりも早く起きるしかないのだ。

シネコック・ヒルズの罠と、全米オープンへの決意

華やかな熱狂に包まれるメジャー大会の裏側には、選手たちの孤独な闘いと、それを阻む予期せぬ障害が存在する。

マキロイがこれほどまでに静寂を求め、ドライバーの「左への引っかけ」を警戒するのには、全米オープンの舞台となるシネコック・ヒルズのコース事情が大きく関係している。すでに現地を視察しているマキロイは、切実な思いを語った。

「シネコックのフェアウェイはここ(ミュアフィールド・ビレッジ)よりも広いからありがたい。しかし、ファーストカットのラフは5インチ(約13センチ)もある。フェアウェイを1ヤードでも外せば、とんでもない悪いライからのショットという罰を受けることになる」

1ヤードのズレが命取りになる5インチの深いラフ。だからこそ、ミリ単位のプレーンのズレを本番までに絶対に修正しなければならないのだ。

さらに、過去に度々物議を醸してきたUSGAの過酷なグリーンセッティングに対しても、「月曜の時点の速さ(スティンプメーターで11から11.2くらい)で十分だ。これ以上速くする必要はない。そうすれば過去数年の全米オープンのような惨事は避けられるはずだ」と、チクリと牽制することも忘れない。

異常な喧騒を極限まで避けるため、マキロイは今大会終了後、ただちに夏の拠点であるロンドンへ帰り、イギリスで6日間の静かな調整を経てから本番直前の土曜日に現地入りするという徹底したスケジュールを組んでいる。

スウィングの葛藤を抱えながらも、マキロイは徹底した「隔離」とウッズ流の静かな早朝ラウンドで自らを研ぎ澄まし、全米オープンのタイトル獲得へと静かに向かっていく。


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