金谷拓実や平田憲聖、中島啓太ら日本勢が参戦している「RBCカナディアンオープン」。日本のゴルフファンにとって彼らの動向は最大の関心事だが、開催国カナダのファンがいま最も熱い視線を注いでいるのは、地元出身のアダム・スベンソンだろう。

「世界的赤っ恥」からの見事なバウンスバック

彼は初日、強風が吹き荒れる難コンディションの中、見事なノーボギーの「65(5アンダー)」をマーク。首位とわずか1打差の7位タイという絶好のスタートを切った。しかし、この素晴らしいプレーの裏には、彼が直前に経験した「世界的赤っ恥」からのドラマチックなバウンスバック(立ち直り)があった。

事の発端は、今週初めに行われた次週のメジャー大会「全米オープン」の最終予選会でのことだ。スベンソンはプレーオフを戦っていたが、それが「オルタネート(補欠)枠」を争うものだとは全く気づいていなかった。「上位3名が通過する」とだけ聞かされていた彼は、本戦への通過ラインに届かないと悟ったのか、あるいは勝負がついたと勘違いしたのか、自らのパットを打たずにボールをピックアップしてしまったのだ。

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このプロらしからぬ痛恨の勘違いシーンは、瞬く間にSNSで拡散され、世界中のゴルフファンの間で格好のネタとしてバズってしまった。

精神的に大きなダメージを引きずってもおかしくない失態。しかし、地元カナダでの大一番を前に、スベンソンは逃げなかった。記者会見でこの気まずい話題について問われると、彼は一切の言い訳をせずにこう答えた。

「100パーセント、僕の責任だ。補欠枠を争っているなんて全く知らなかったんだ。相手がパットを決めたから、それで終わりだと思ってボールを拾い上げてしまった」

自らの非を率直に認める潔さは、一流のプロフェッショナルとしての確かな人間性を感じさせた。

「出すのがやっと」の深いラフと強風を制す

そして迎えたRBCカナディアンオープンの初日。スベンソンは己のクラブで、その失態を見事に断ち切ってみせた。

舞台となるTPCトロントのコースは、深く厄介なラフを誇る。実際にスベンソン自身も「昨日のプロアマ戦でラフに入れた時なんて、ただ外に出すのがやっとだった」と舌を巻くほどだ。さらに上空では「フロリダのような重い風ではないが、フォローから突然アゲンストに変わったり、左右に巻いたりして、どこから吹いてくるのか判断するのが非常に難しい」と彼が分析する強風が選手たちを苦しめていた。

そんな中、スベンソンは完璧なボールストライキングを披露する。

画像: ドライバーが好調なアダム・スベンソン。母国ナショナルオープンの初優勝を狙う(写真は26年ソニーオープン・イン・ハワイ)

ドライバーが好調なアダム・スベンソン。母国ナショナルオープンの初優勝を狙う(写真は26年ソニーオープン・イン・ハワイ)

「フェアウェイを外したのは、おそらく1回だけだったと思う(編集部注:フェアウェイキープは14回中13回で初日2位タイの記録)。ティーショットが本当に良かった。今までで最高とは言わないが、この風の中では最もソリッドに球を打つことができた」

深いラフを徹底的に避け、ピンチらしいピンチを作らずにノーボギーで18ホールを駆け抜けた圧倒的な安定感。SNSでの嘲笑を、自らの実力によって大歓声に変えてみせたのだ。これこそがプロの意地である。

会場を包む「カナダ熱」。大観衆の赤を味方に

予選会でのドタバタ劇により、全米オープンに出場できるかどうかは神のみぞ知る状況となってしまった。しかし、スベンソンの眼差しはすでに前だけを向いている。

「全米オープンの出場権のことは、あまり心配していないんだ。もし出られたら素晴らしいけれど、今は今週のプレーに集中し、良いゴルフをすることだけを考えているよ」

折しも翌日の金曜日は、大会恒例となっている、ファンが赤い服を着て応援する「レッド・アンド・ホワイト・デー」。さらに今年は同じ日に、地元トロントでサッカー・カナダ代表のワールドカップの試合が行われるという奇跡的なスケジュールが重なっており、会場は尋常ではない「カナダ熱」と赤色に包まれるはずだ。

このことについて聞かれたスベンソンは、「サッカーはあまり詳しくないけど、カナダに関することなら何だって興奮するよ」と笑顔で地元愛を覗かせている。

自らの失敗を潔く受け入れ、目の前の1打に全力を注ぐ。精神的な逞しさを身につけたカナダのタフガイが、熱狂する大観衆の「赤」を味方につけ、地元での悲願の初優勝へ向けて静かに闘志を燃やしている。

写真/岩本芳弘


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