いよいよ開幕する第126回「全米オープン」。歴史的名門シネコックヒルズGCでの過酷な戦いを前に、選手たちはどのような準備を進めているのか。大会開幕前の月曜日、ドライビングレンジに導入されたT-Mobileのトラッキングシステム「RangeCast」によって計測された、「134人が打ち込んだ全8215球」に及ぶ貴重なデータの一部が公開された。数字が浮き彫りにする、メジャーの裏側に迫ろう。

次元が違う!「初速85m/s超え」の怪物たち

画像: ブライソン・デシャンボー(後ろ姿)と談笑するジェイク・ナップ(中央)。ボール初速ではこの日、最高になる192mphを記録した

ブライソン・デシャンボー(後ろ姿)と談笑するジェイク・ナップ(中央)。ボール初速ではこの日、最高になる192mphを記録した

データからまず目に飛び込んでくるのは、日本人選手が立ち向かわなければならない海外ツアーの怪物たちの規格外のパワーだ。「最高ボール初速(Top 10 Fastest Ball Speed)」部門では、ジェイク・ナップが192mph(約85.8m/s)という驚異的な数値を叩き出してトップに君臨している。

画像: 月曜の練習場でパワーを見せつけたブライソン・デシャンボー

月曜の練習場でパワーを見せつけたブライソン・デシャンボー

さらに、ブライソン・デシャンボーも190mph(約84.9m/s)を連発して同部門の2位〜4位、さらには10位(189mph)までも独占し、圧倒的なスウィングスピードを見せつけた。また、「最長飛距離(Furthest Ball Hit)」では、パトリック・カントレーが322ヤードを記録している。

しかし、海外勢の脅威はパワーだけではない。「最高到達点(Top 10 Highest Apex)」の部門では、マックス・グレイサーマンが167フィート(約50.9メートル)という、ビル15階建てに相当する驚異的な高さを記録しているのだ。

シネコックヒルズの硬くアンジュレーションの強い砲台グリーンを攻略するためには、ただ遠くに飛ばすだけでなく「天からボールを落として止める」という異次元のショット力が求められる。タフなセッティングを規格外の技術と力でねじ伏せようとする海外勢の脅威が、データからもはっきりと伝わってくる。

松山英樹&大岩龍一に見る「猛練習」の執念

圧倒的なパワーの差を前に、日本人選手たちは「準備と執念」で立ち向かっている。「最も球数を打った選手(Top 10 Most Balls Hit)」のデータを見ると、1位はアレックス・ノレンの196球だが、それに次いで大岩龍一が144球で4位、松山英樹が141球で6位にランクインしている。

画像: 練習の虫といわれる松山英樹は月曜にこの日6位となる141球を打席練習場から放った

練習の虫といわれる松山英樹は月曜にこの日6位となる141球を打席練習場から放った

ちなみに、同じ月曜日のドライビングレンジにおいて、世界ランク1位のスコッティ・シェフラーはわずか50球、世界ランク2位のロリー・マキロイは45球しか打っていない。効率を重視して調整を終えるトップ層に対し、難攻不落のシネコックヒルズを攻略するため、海風の計算や硬い芝の感触など、あらゆる状況を想定して黙々と球を打ち込み続ける日本人選手たち。その泥臭い姿には、この大舞台に懸ける並々ならぬ覚悟と執念が滲み出ている。

久常涼&大西魁斗が「飛ばさない」深い理由

さらに興味深いのは、「平均飛距離が短かった選手(Shortest Average Distance)」のデータだ。久常涼が平均106ヤード(47球)で3位、大西魁斗が平均125ヤード(73球)で7位に名を連ねている。

もちろん、これから読み取れるのは決して彼らが「飛距離が出ない」ことではない。フルショットの練習を削ってでも、徹底してウェッジやショートアイアンでのアプローチ練習に時間を割いていた証拠と読み解くべきだろう。

昨年の全米オープン覇者であるJ・J・スパーンは、月曜日の会見でシネコックヒルズの強風対策について、「空中戦のゴルフではなく、クラブをコントロールして弾道を抑える感覚や、キャリーの数字を調整する練習をたくさんした」と語っている。

強風と砲台グリーンが特徴のこのコースにおいて、風の中でスコアを作るためには、まさに久常や大西のような「短い距離の緻密なコントロール」とグリーン周りの精度こそが勝負の最大の分かれ目となるのだ。彼らは力勝負を避け、本番を見据えた極めて賢明なコースマネジメントの準備を行っていたのである。

データが示す、日本勢の準備は万端

パワーと圧倒的な高さでコースを凌駕しようとする海外の怪物たちに対し、豊富な練習量とショートゲームの緻密な精度で立ち向かう日本勢。松山、大岩、久常、大西の4人が見せた月曜日のリアルな姿は、本戦での大躍進を予感させるには十分だ。彼らの周到な準備が、シネコックヒルズでどのような実を結ぶのか。いよいよ熱戦の幕が上がる。

写真提供/USGA


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