
ツアーボール代表はツアーB X(左)、ディスタンスボール代表はツアーB JGR(右)。この2モデルでテスト

テスター&解説/松本一誠プロ(2026年度のJPDAロングドライブ日本チャンピオン/MAX 389ヤード)
試打方法/各8球打ち、上下を省いた6球の平均値(トラックマン4)
試打ドライバー/テーラーメイドQi10 MAX(ロフト10.5度/N.S.プロ Regio Formula B+ S55)
実験①HS35m/s
(34.1~35.9m/s範囲を採用)
最初の対決はHS35m/s帯。松本プロがトラックマンのHS数値を確認しながら、力加減を調整して実験スタート。
松本 一般的な女性アマよりも速くて、男性ではシニアになって少し落ちてきた人など、このHS帯は結構いますよ。スウィング的には、すべてを走らせないイメージで打ちました。テークバックは小さく、重力落下を生かさず、からだ全体を使って、あえて走らせない振り方。セルフスローモーションの感覚です。

「HS30m/s前後で、安定して振るのはからだをゆっくり使うので、結構きついです」(松本プロ)
JGR/197.1ヤード(キャリー161.3ヤード)
TOUR B X/197.1ヤード(キャリー161.2ヤード)
松本 ツアーB Xは、ズドンとフェースに乗っている感触。JGRは軟らかなインパクト感で楽。トータル距離は、全く一緒になりました。
実験②HS30m/s
(29.1~30.9m/s採用)
実験②は、HSをさらに落としてHS30m/sで対決。
松本 女性のアマチュアに多いHS帯です。試打クラブは10.5度だったので、このスピードに合うよう、ややフェースを寝かせてロフトを増やし気味にして打ちました。
JGR/162.9ヤード(キャリー125.2ヤード)
TOUR B X/163.8ヤード(キャリー126.2ヤード)
松本 JGRは、打感が軽くポンと打ち上がってくれる感じで、やはり楽ですね。ツアーB Xは、打ち出しが低く出ます。さらにズドンと手に伝わる打感です。わずか1ヤード弱ですが、ツアーB Xが前に行ったのは、やや想定外の結果でした。
実験③HS40m/s
(39.1~40.9m/s採用)
実験③は、順番を変えてツアーB X→JGRの順で打つ。
松本 ツアーB Xは、フェースの上で粘るから、特に下っ面に当たった時に押し込む感じが出せます。JGRは、そのままビューンと飛び出します。くっついている時間が明らかに違う。そういう面からも、ツアーB Xの方がコントロールできます。
TOUR B X/241.6ヤード(キャリー209.5ヤード)
JGR/243.7ヤード(キャリー211.8ヤード)
このHS帯の対決で、初めてJGRが勝利。トータル2.1ヤード先へ行った。
とはいえ、ここまでの実験①②③の結果では、予想に反してディスタンス系のJGRの飛距離が伸びていない……。
ここで松本プロが、実験の感触から、ひとつの仮説を立てた。
松本 トラックマンは、ボールが当たった瞬間のHSを計測します。2つのボールを同じ感覚で打つと、インパクトの瞬間の抵抗が小さいJGRは、HSが減速せずに振り抜けます。対して、打感がしっかりしているツアーB Xは、当たった瞬間の手応え=抵抗力となり、HSが下がる気がしました。
松本 HS30や35m/sのHS帯では、特にインパクトでの感触の違いが顕著でした。体感で言えば、(計測上の)HS帯を揃えるために、ツアーB Xは常に1~1.5m/sほど速く振る感じです。言い換えると、それぐらい体感スピードを変えないと、両者のHSが揃わなかったんです。
その言葉を受け、高HS帯の対決に入る前に、松本プロの仮説をもとに、“力感&振り抜き”揃えでの実験④を、急きょ行うこととなった。

HS32m/s相当の、“力感&振り抜き”揃え、で急きょテスト
実験④HS32m/sの力感で
HSを気にせず対決
松本 JGRは、球に負けないでパーンと飛んでいきます。ツアーB Xは、全く同じ感覚で振っても、しっかり打感のぶんインパクトで重みを感じます。とはいえ、この感触が好きという人は、自分を含めて一定数いると思いますが…。
JGR/181.4ヤード(キャリー143.9ヤード◎計測HS値33.0m/s)
TOUR B X/169.7ヤード(キャリー131.7ヤード◎計測HS値31.4m/s)
同じ力感対決では
JGRが11.7ヤードも前へ!
松本 HS自体が1.6m/s変わって、飛距離は10ヤード強の差。これが、女性アマやシニアの方のHS帯での“リアル”なのかもしれません。
松本 ボール重量は一緒でも、ボールの構造や硬さによって、打感やインパクトの抵抗が変わります。それが飛距離にも表れたのだと思います。HS帯が遅いと、クラブ側のエネルギーも小さくなるので、それが顕著になるのでしょう。ボールと飛距離とHS帯の三角関係、この発見は大きいのではないでしょうか。
実験⑤HS45m/s
(44.1~45.9m/s採用)
元々のHS別対決に戻っての実験⑤は、HS45m/s帯。ここで試打ドライバーを、松本プロ本人が使うキャロウェイ PARADYM Aiスモーク♦♦♦のロフト8度に変更。シャフトは、REVE製のワンフレックスモデル(45.5インチ)。

ロングドライブ競技で使う、エースドライバーのPARADYM Ai スモーク♦♦♦(8度)でテスト
松本 JGRは、打感が軟らかいですが、遅いHS帯の時の軽さはなくなります。ツアーB Xは、しっかり重く気持ちいい打感です。フェースに乗るぶんつかまりも良いです。
JGR/271.2ヤード(キャリー240.4ヤード/スピン量2232rpm)
TOUR B X/274.1ヤード(キャリー242.5ヤード/スピン量2052rpm)
実験⑥HS50m/s
(49.1~50.9m/s採用)
松本 HS50m/sになると、JGRもインパクトでつぶれきって抵抗が強まり、TOUR B Xと打感が近づく印象です。HS30、35m/sの時の方が明らかに軽くポーンと飛び出します。打感が近づくと言ってもTOUR B Xの感触の強さは、頼りがいがある。結果、球のバラつきも少なかったです。
JGR/307.7ヤード(278.3ヤード/スピン量2163rpm)
TOUR B X/309.0ヤード(278.8ヤード/スピン量2030rpm)

HS50m/s帯では、どちらのボールも300ヤードを超す結果が続いた
松本 実験⑤⑥のHS帯になると、クラブのエネルギーが大きくなり、ツアーB Xでの“HS減速”現象は、完全に消えます。このHS帯に見合った適正スピン量になって、JGRに負けない飛距離性能になりますね。打感は近づき合いますが、やはりツアーB Xのしっかり打感は、個人的に大好きで安心できます。
まとめ
松本 HS30~38m/sまでは、ドライバーの飛距離を重視するならば、JGR(ディスタンスボール)を使った方が有利ですね。急きょ行った実験④の結果が示すように、インパクトの抵抗力から生じる、当たり負けのスピードロス、飛距離ロスが、圧倒的に少ないと思います。そこにディスタンスボールの優位性があると感じました。
松本 HS40m/s以上になると、当たり負けが消えるので、ショットやパットの打感やショートゲームの好みで選ぶのが良いと思います。
番外実験
8Iで対決してみた
最後に番外編として、クラブを8番アイアンに替えて対決。力感は、松本プロの“6割力感”のライン出しに統一。試打クラブはブリヂストン 221CB、シャフトはN.S.プロ MODUS³ TOUR120(S)。

ブリヂストンの221CBの8Iでテスト
JGR/168.2ヤード(キャリー164.0ヤード/HS40.0m/s・BS53.7m/s・スピン量6490rpm・高さ34.5ヤード)
TOUR B X/164.2ヤード(キャリー161.8ヤード/HS40.5m/s・BS53.3m/s・スピン量6850rpm・高さ37.5ヤード)
松本 アイアンはドライバーよりも総重量があって、ヘッド重量自体もはるかに重いため、ボールの打感(種類)による当たり負け現象は、起きませんでした。ボール性能による、ボール初速(BS)やスピン量、球の高さに違いが表れる、分かりやすい結果となりました。

ディスタンスボール代表(ツアーB JGR/左)、ツアーボール代表(ツアーB X/右)
撮影/三木崇徳
