6月25日、2026年最後のシグネチャーイベント(昇格大会)「トラベラーズ選手権」が開幕し、TPCリバーハイランズで優勝賞金360万ドル(約5億8000万円)を巡る熱戦が始まった。初日を終え、日本勢は松山英樹が3アンダーの「67」で20位タイ、久常涼は2アンダーの「68」で32位タイからのスタートとなった。そんななか、6アンダーの「64」をマークし、2位タイという絶好の滑り出しを見せたのがマット・フィッツパトリックだ。

好発進の裏にある「ギアへのこだわり」と大きな決断

「スコアリングホールでしっかりチャンスを活かすことができた。今日はほとんどすべてのプレーが本当にソリッドだった」

ホールアウト後、自身のプレーに確かな手応えを感じていた彼だが、公式会見で言葉に熱を帯びたのは、今日のスコアについてではなく「ドライバーのフィッティングの真実」についてだった。

画像: M・フィッツパトリックが今週、実戦で使用しているのはピンゴルフ「G430 LST ドライバー」

M・フィッツパトリックが今週、実戦で使用しているのはピンゴルフ「G430 LST ドライバー」

実は彼、数週間前の「トゥルーイスト選手権」の水曜日、つまり開幕前日という緊急事態に、長年愛用していたドライバーのヘッドに亀裂が入ってしまったのだ。そのため、現在新しいドライバーの調整に奔走している最中である。さらに、今週彼がテストしているのはただの新モデルではなく、「これまで長く愛用してきたメーカーとは全く異なる、別のブランドのドライバー(ピンゴルフ『G430 LST』)」であると明かしている。

ギアの大きな過渡期にある彼だが、そこで語られたのは、道具に関心の強いゴルファーであれば思わず唸ってしまうような、トッププロの極めて繊細な感覚だった。

「市販品を打てば真っすぐ飛ぶ」という誤解

「多くの人は、『プロならお店の棚にある吊るしのクラブをパッと買って打っても、簡単に真っすぐ飛ばせるんでしょ?』と思っているかもしれない。でも、決してそう単純なものじゃないんだ」

フィッティングの重要性について、彼はこう力説する。

「選手にはそれぞれ異なる癖があり、クラブの動かし方があり、様々なクラブに対する反応も全く違う」

万人に合う完璧な魔法の杖など存在せず、個々のスウィングの意図とクラブの特性を完璧にマッチングさせる詳細なフィッティングこそが、何よりも重要だというのだ。

「50ヤード右に飛ぶ」プロの繊細な感覚

では、フィッツパトリック自身はどのようなセッティングを求め、それが合わないとどうなってしまうのか。彼は自身のスウィング傾向とクラブ選びについて、生々しいエピソードを明かしてくれた。

「僕の傾向として、重心がヒール寄りにあるクラブを好むんだ。キャリアを通じてずっとその設定で生きてきたと言ってもいい」

彼にとって「ヒール寄り重心」は絶対的な基準だ。

「もし、お店で売っているようなトウ側に重心があるクラブを渡されたら、僕は(50ヤードどころか)500ヤードくらい右に飛ばしてしまうだろうね(笑)」

さらに、彼はカナダの大会で別の設定をテストした際の驚きの事実を語った。

「すべてが『ニュートラル』なクラブを試したんだけど、文字通り50ヤードも右にすっぽ抜けて飛んでしまった。それが僕のクラブに対する反応の仕方なんだよ」

世界トップクラスのスウィング技術を持つ選手であっても、自身の感覚に合わない「ニュートラル(標準的)」なクラブを握れば、50ヤードも右へスッポ抜けてしまう。これが、コンマ数ミリの重心位置の違いを感知するトッププロの繊細な感覚の恐ろしさである。

驚異のフェアウェイキープと、アイアンへの絶対的な自信

長年愛用したメーカーから別ブランドのドライバーへ持ち替えるという難しい課題と向き合いながらも、今週の彼は手にした新しいドライバーで確かな手応えを掴み、初日を見事なスコアでまとめている。

会見で「今日はフェアウェイを1回しか外さなかったね?」と記者に問われると、彼自身も「そうだね」と冷静に認めた。ギアに大きな悩みを抱えながらも、初日でいきなりこれほどのフェアウェイキープ率を見せつけ、「64」を叩き出すところに彼の卓越した技術の高さが窺える。

そして、その過渡期のドライバーをカバーし、彼に余裕をもたらしているのが、アイアンに対する絶対的な自信だ。

「今年の僕はアイアンのフィーリングがとても良くて、それが例年よりも良いスコアを出せている理由になっている。ドライバーが不調でも、他の部分で良いプレーができれば、それを補って勢いに乗ることができるんだ」

週末に向けて、彼はトラベラーズ選手権で勝つためのキーポイントを冷静に分析している。

「今週はアプローチプレーが良ければ、短いクラブで打てるホールが多いので、間違いなくバーディを量産できる」

ドライバーの微調整が完璧に噛み合い、自慢の精度の高いアイアンショットを存分に発揮できる状況が整えば、どれほどのスコアを叩き出すのか。卓越した技術と、道具に対する究極のこだわりを持つフィッツパトリック。彼がTPCリバーハイランズをどう攻略していくのか、残り3日間の戦いから目が離せない。

写真/Getty Images


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