5月に行われた「リゾートトラスト レディス」で、初優勝をかけて河本結とのプレーオフを闘った吉澤柚月。あと一歩で勝利を逃したものの、その高いポテンシャルで一躍脚光を浴びた。あの日から約一カ月を経て迎えた「EARTH MONDAMIN CUP」の大会初日。河本結、そして韓国ツアーで通算3勝を挙げるコ・ジウォンと同組という注目のペアリングのなか、前半の9ホールとなるインコース(10番〜18番)に帯同し、彼女のプレーの根底にあるものを探った。
画像: 悪状況下のなかで耐えのゴルフを貫いた吉澤柚月

悪状況下のなかで耐えのゴルフを貫いた吉澤柚月

日にち1番(570・5)2番(324・4)3番(425・4)4番(158・3)5番(328・4)6番(436・4)7番(331・4)8番(520・5)9番(189・3)10番(399・4)11番(413・4)12番(383・4)13番(188・3)14番(544・5)15番(171・3)16番(382・4)17番(421・4)18番(517・5)
初日(16位タイ、通算イーブンパー)
2日目(17位タイ、通算1アンダー)
3日目 (34位タイ、通算1オーバー)
4日目 (43位タイ、通算2オーバー)
吉澤柚月のスコア
画像: 大粒の雨が降り続けるなかでも黙々とパター練習を行っていた

大粒の雨が降り続けるなかでも黙々とパター練習を行っていた

張り詰めた空気の中に見せる、不思議な俯瞰力

画像: ショットの不調を感じていたという吉澤(撮影/有原裕晶)

ショットの不調を感じていたという吉澤(撮影/有原裕晶)

10番からのスタート。ティーショットを打ち終えてセカンド地点へ向かう道中で、吉澤は河本と何やら談笑し、互いの健闘を誓い合うような雰囲気が漂っていた。セカンドショットはグリーンの左に行き、出だしからピンチを迎えたが、冷静にピンそばまで寄せるアプローチの技術にギャラリーから拍手が送られた。

その後も17番で見事なアプローチを見せ、同組の河本から「ナイス!」と声が飛んだ。「たくさん言ってくれるので私までつられて笑顔になる」と、ライバルからの声援も力へと変えていた。

一方で彼女自身の一打一打に対するリアクションは決して大きいものではなく、キャディとの会話も必要最低限に留めているように映った。9ホールを通して気になったのは、そうした彼女の「スッとした」佇まいと、ふとした瞬間に前後の組を遠目に見つめる印象的な視線だった。

コース上で気丈に振る舞う理由と、等身大の葛藤

大会最終日を終えた吉澤に、初日に見せたあの静かな佇まいについて尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「喜怒哀楽を出すと(自分は)あんまりよくないタイプ。プレーに影響が出ちゃうので、出さないようにはしているんです」(吉澤・以下同)

以前から、身近な人たちは彼女について「いつも笑顔で明るい。でも内側に秘めているものは熱い」と口を揃えていた。本来の明るさや熱い感情の波がプレーに直結することを深く理解し、コース上ではあえて気丈に振る舞うよう意識しているのだろう。彼女の聡明さから生まれる、感情のコントロール術がそこにはあったのだ。

画像: 表情には変化がある(撮影/有原裕晶)

表情には変化がある(撮影/有原裕晶)

また、前後の組を遠目に見つめる視線については、「せっかちなんで(笑)。だから前の組がどこにいるか、いつも見てる。まぁ、見ちゃう! 癖ですかね(笑)」と笑った。しかし、調子が悪いときは頭の中を色々な考えが巡るという。

「悪くなると結果を気にし始めたり、ゴルフのことばかりを考えてしまう。不安なほうを気にしちゃいますね。いいときはたぶん何も考えてないです」

そんな等身大の葛藤を抱えつつも、それを乗り越える強さが彼女にはある。大会開幕前の練習日、あのプレーオフでの敗戦について振り返った言葉がそれを物語っていた。

「もっと『緊張したり、体が動かなくなるかな』と思っていたんですが、思っていたよりも体は動いていたし、緊張はあったけどなんか楽しめていたなって思います。自分にもできるんだっていうことがわかったし、知れた試合だったので。経験という意味ではすごく大きかったかなと」

画像: 吉澤の心情が表情に溢れ出ていた「リゾートトラスト レディス」最終日(撮影/大澤進二)

吉澤の心情が表情に溢れ出ていた「リゾートトラスト レディス」最終日(撮影/大澤進二)

極限状態での悔しさを味わいつつ、現在地を確かめポジティブに消化する。この客観視できる俯瞰力と自信こそが、あの佇まいの正体なのだろう。

4日間を戦い抜く覚悟と、さらなる高みへ

画像: 今季は逃げずにピンを狙っていく姿勢を意識している(撮影/岡沢裕行)

今季は逃げずにピンを狙っていく姿勢を意識している(撮影/岡沢裕行)

精神的にも体力的にも重圧のかかる展開となった4日間を終え、彼女はこう自己評価する。

「調子は良くないなかでも耐えられた。全体的にスコアを落とさなくなり安定してきたのが昨年から一番変わったところです。やることは変えてはいないので、気持ちの面もあると思います。(例えば)ピンが左右に振られている時は逃げちゃうことも多かったので、そこを逃げない気持ち・考え方を持てるようになりました」

画像: 「思ったことがそこまでできなかった4日間。でも来週以降につながる試合でした」(撮影/岡沢裕行)

「思ったことがそこまでできなかった4日間。でも来週以降につながる試合でした」(撮影/岡沢裕行)

自身の成長を冷静に見つめ、「4日間いいゴルフをし続けることが優勝につながる。確実にできる選手になりたい」と高みを見据えた。俯瞰して自身を見つめる冷静さと、等身大の素顔との魅力的なギャップ。プロ入りして3年。経験を重ねて培われてきた精神力と確かな技術が噛み合い、念願の初トロフィーを掲げる日はそう遠くはないはずだ。(文/川野真美)


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