スコットランドのナショナルオープン「ジェネシス・スコットランドオープン」の裏でケンタッキー州ルイビルにあるハーストボーンCC(7056ヤード・パー70)で開催される「ISCO選手権」。日本からも金谷拓実と平田憲聖の2名が出場する本大会だが、いわゆる“裏大会”といわれてもおかしくないこの舞台に、現在フェデックスランク49位のマックス・ホーマが参戦している。ホーマはルーカス・グローバーと並び、今大会の出場選手のなかで最多となるPGAツアー6勝を挙げている実績トップの選手だ。大会の顔とも呼ぶべき看板選手が、この地にとどまることを決意した背景には、彼らしい心温まるドラマがあった。

全英行きの吉報と、背中を押した「スーパースター」の妻

先週の「ジョンディアクラシック」で2位に入り、復調の兆しを見せているホーマ。彼のもとに吉報が届いたのは、興奮冷めやらぬ月曜日のことだった。世界ランキングの資格により、次週のメジャー最終戦「全英オープン」への出場が決まったという電話だ。

思いがけない知らせに、彼は「少しパニックになった」と正直に振り返る。「これで数週間は家族に会えなくなる」と焦る彼だったが、彼自身が「スーパースター」と称賛してやまない妻が、「(全英へ)行ってきなさい」と優しく、そして力強く背中を押してくれたという。

もし全英に出場できると最初から分かっていれば、今週はヨーロッパへ飛び、前哨戦である「ジェネシス・スコットランドオープン」に出場したかったというのが彼の本音だ。全英特有のコースに対応するため、ロブウェッジをバッグから抜き、代わりに3番アイアンを入れるなど、彼にはどうしてもリンクスに向けた準備が必要だったからだ。

「裏大会」への敬意と、見捨てないという矜持

しかし、ホーマは「ISCO選手権」の出場をキャンセルしなかった。彼は会見で次のように語っている。

「皆が知っているように、これは裏開催の大会であり、知名度はそれほど高くありません。しかし、DPワールドツアーとの共催であり、素晴らしいフィールドが揃っています」

自らが置かれた状況を客観的に理解しつつも、あえて出場を続ける決断を下した裏には、彼ならではの誠実さがあった。

「ここへプレーしに来ることに、良い意味での義務感(義理)を感じていたんだ」

また、彼がルイビルでのプレーを決断した理由の一つには、「以前にバチェラー・パーティ(結婚前の祝賀会)でこの地を訪れたことがあり、この街が大好きだから」という、人間味あふれる個人的なエピソードも隠されている。

大会関係者との対話や、彼の出場を心待ちにしている多くの人々からの熱い声は、彼の元にしっかりと届いていた。

「もし大会をすっぽかすような真似をして見捨てたら、自分自身をひどく責めることになる」

スケジュールよりも、自分を待ってくれている人への義理や、開催地への愛着を重んじる。それがマックス・ホーマというプロゴルファーの矜持だった。

すべてが報われた「手作りのサイン」

画像: リンクスで調整するよりケンタッキーの地で勝負することを決めたマックス・ホーマ(写真は25年ザ・セントリー)

リンクスで調整するよりケンタッキーの地で勝負することを決めたマックス・ホーマ(写真は25年ザ・セントリー)

スコットランドの風の中ではなく、ケンタッキーの地でプレーするという選択。その決断が間違いではなかったと悟るのに、長い時間はかからなかった。

火曜日の練習ラウンド、4番ホールでのことだ。コースに隣接する家の裏庭に、彼を歓迎する手作りのサインを掲げて立っている一人の少年がいたのだ。

「あの姿を見たとき、正直言ってすべてが報われた気がしたよ」

年齢を重ねるにつれ、自分の一挙手一投足が開催都市やファン、そして自分自身にどれほど大きな影響を与えるかに気づかされるとホーマは微笑んだ。

全英行きの切符を急きょ手にしてもなお、目の前のファンとの約束と義理を果たそうとするマックス・ホーマ。彼のその温かな人間性は、どんなスーパーショットよりも深く、ルイビルの人々の心に刻まれるはずだ。

写真/岩本芳弘

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