ケンタッキー州で開催されている米国男子ツアー「ISCO選手権」。日本勢は金谷拓実が4アンダー(6バーディ、2ボギー)で13位タイと好発進した一方で、平田憲聖は1イーグル、2バーディを奪うものの6ボギーと躓き、2オーバーの112位タイと大きく出遅れる初日となった。全体に目を向けると、フレッシュな若手たちの躍動に注目が集まっていた開幕前の予想とは打って変わり、初日のリーダーボードの最上段には、ツアーの酸いも甘いも噛み分けたベテランたちの名前が並んだ。首位に並んだ4人のうち、ひときわ存在感を放っているのがルーカス・グローバーとトロイ・メリットだ。共に「63(7アンダー)」という見事なスコアを叩き出し、首位タイ発進を決めた。彼らのゴルフには、若さゆえの勢いとは違う、ある種の「達観した境地」が漂っている。

ルーカス・グローバー、ツアー23年目が辿り着いた「純粋な喜び」

ツアー通算583試合目の出場となるグローバーは、先週の「ジョンディアクラシック」でも初日に「63」をマークして最終的に3位タイでフィニッシュしており、現在ツアーで8ラウンド連続の60台をマークするなど絶好調だ。今大会の初日も「18ホール中17ホールでパーオン」という驚異的なボールストライキングを見せ、見事ノーボギーで回ってみせた。

画像: ルーカス・グローバーはPGAツアー通算6勝(うちメジャー1勝)で、今大会の出場者の中でマックス・ホーマと並ぶ(写真は25年全米プロ)

ルーカス・グローバーはPGAツアー通算6勝(うちメジャー1勝)で、今大会の出場者の中でマックス・ホーマと並ぶ(写真は25年全米プロ)

「ツアー23年目になるけれど、今でもこの世界と引き換えにしたいものなんてない。自分の愛することを仕事にできているんだから」

そう語るグローバーだが、これだけのキャリアと実績を重ねても、彼の根底にあるのはゴルフへの深い愛情と先人へのリスペクトだ。

「自分がいっぱしの選手だと思っても、ジェイ・ハースは僕の出場試合数よりも多くの『予選通過』を果たしているんだから驚くよ」

彼が畏敬の念を込めて引き合いに出したジェイ・ハースは、PGAツアー史上最多となる「592回」の予選通過記録を持つ生ける伝説である。グローバーの今大会が通算583試合目であることを考えれば、彼が語った言葉は決して比喩ではなく、文字通りの事実なのだ。ハースは68歳にして最年長予選通過記録も更新しており、長きにわたりツアーの第一線で戦い続けてきた先人たちの途方もない背中を見ているからこそ、グローバーは今、純粋にこのスポーツの楽しさを噛み締めている。

「パットが入り、悪いバウンドではなく良いバウンドになり、ボールがホールから遠ざかるのではなく向かって転がっていく。何でもできるような気がするんだ。ゴルフが本当に楽しいよ」

彼の言葉からは、好不調の波を乗り越えてきた者だけが辿り着ける、穏やかな喜びが伝わってくる。

不運と不調を味方につけたトロイ・メリットの「無欲の境地」

一方のメリットは、信じられないようなドタバタ劇の中で初日を迎えていた。フライトのキャンセルが重なり、火曜日の夜7時過ぎにようやく現地入り。さらに、水曜日の午後のプロアマ戦では「補欠の1番手」として待機してウォーミングアップを行っていたものの、悪天候を知らせるホーンが鳴り、「もう待機しなくていい」と告げられてしまったのだ。結局、事前にコースの下見にあてられた時間はわずか15〜20分しかなく、完全な“ぶっつけ本番”で初日を迎えていた。

画像: PGAツアー2勝の実績を持つトロイ・メリット。今大会は今季の6試合目(写真は23年ソニーオープン・イン・ハワイ)

PGAツアー2勝の実績を持つトロイ・メリット。今大会は今季の6試合目(写真は23年ソニーオープン・イン・ハワイ)

しかし、そんな不運すらも彼は意に介さない。「ホールを見ていなかったからこそ、最も自由なゴルフができることもある」という言葉通り、無欲の凄みを発揮して本番で素晴らしいプレーを見せた。

圧巻だったのは、初日のスタッツで1位を記録したパッティング(ストローク・ゲインド・パッティング)だ。彼は会見で、パターだけでなく「両手(の不調)とも戦ってきた」と満身創痍の現状を明かした。しかし、ここ数週間は木曜日と金曜日に手がとてもフレッシュな状態だと感じており、「過去3週間の木曜日と金曜日だけで、トータル28アンダーくらい出している」と、自身の状態を巧みにコントロールするベテランならではの熟練の技を語っている。

「過去4年間、パターと自分の手にどれほど苦しんできたことか。今はもう、どんなストロークであれ、入ってくれれば文句は言わない。ただ入ってくれたことを喜ぶだけだよ」

理想のストロークを追い求めるのではなく、泥臭くても結果を受け入れる「無欲の境地」。それが、彼を首位へと押し上げた原動力だった。

シビアで奥深いPGAツアーの「世代間闘争」

熟練の技と達観したメンタルでスコアを伸ばすベテランたち。その一方で、次世代のスターとして大きな期待を背負う17歳のアマチュア、マイルズ・ラッセルは1オーバーの97位タイ、大学ゴルフ界のスーパースターでプロ転向2戦目となるジャクソン・コイブンは3アンダーの24位タイと、プロのフィールドで懸命に食らいついている状態だ。

【練習ラウンド英語動画】タイガーの練習の秘けつをベテランキャディのポール・テソリが17歳マイルズ・ラッセルに伝授【PGAツアー公式X】

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圧倒的な経験値で悠々とコースを攻略するベテランと、プレッシャーの中で藻掻きながら成長を続ける若手たち。この残酷なまでの世代間のコントラストこそが、PGAツアーの持つシビアで奥深い魅力なのだ。

週末にかけて、彼らの世代間闘争がどのような結末を迎えるのか。ゴルフファンにとってたまらない人間ドラマが、ケンタッキーで幕を開けた。


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