聖地エビアンで見せた「2日連続の64」と歴史的快挙
通算19アンダーでユ・ヘランとのプレーオフに敗れたヘンダーソンだが、彼女の最終日のプレーはまさに驚異的だった。ホールインワンを含む3つのイーグルを奪取し、前日に続く2日連続の「64(7アンダー)」という猛チャージを披露。実はこの「2日連続の64」というスコアは、彼女が2022年にこのエビアン選手権でメジャー優勝を飾った際と全く同じ驚異的な打数であり、彼女がいかにこの舞台を得意としているかという相性の良さを改めて証明する形となった。
圧巻だったのは、土壇場の72ホール目(18番パー5)だ。首位のユ・ヘランに追いつくためにはイーグルが絶対条件という極限の状況下で、彼女は起死回生のイーグルを奪い取ってみせた。勝負をプレーオフへと持ち込んだこの一打は、メジャー制覇にかける彼女の凄まじい執念を世界中のゴルフファンの記憶に焼き付けた。
さらに驚くべきは、彼女がこの大会で達成した歴史的快挙である。最終日の3イーグルを含め、ヘンダーソンが今大会4日間で奪ったイーグルの総数はなんと「6」。これは1つのトーナメントにおけるLPGAツアー史上最多記録だ。
バーディ合戦を通り越し、イーグルでリーダーボードを駆け上がる豪快なゴルフ。試合後の会見で彼女は、「もう少し良いプレーができればよかったけれど、ヘランが素晴らしいプレーをしたのだから彼女を称えたい。たくさんのバーディやイーグルが獲れて、本当に楽しかったわ」と、清々しい笑顔で自らのプレーを振り返った。
死闘の裏にあった「レマン湖の静寂」と家族の絆
この激しいイーグル合戦という極限のストレス下において、彼女がどうリラックスしていたかという情景にも、ヘンダーソンらしさが垣間見える。彼女は今大会中、「バルコニーに座ってレマン湖を見渡すのが、このストレスの多い状況下でとても平和で心を落ち着かせてくれる」と語っており、その静寂がタフなプレーの原動力となっていたのだ。
そして、彼女のこの堂々たる戦いぶりを支えていたのが、温かい家族の絆である。会場には、彼女の愛らしい姪、サハリーちゃんが応援に駆けつけていた。
大会初日の会見で、ヘンダーソンは「実はここ数年、メンタル面があまり良い状態ではありませんでした。でも、コース外の生活(姪の誕生など)がとても素晴らしいものになったことで、それがコース内でのプレーにも良い影響を与え始めているんです」と明かしている。サハリーちゃんの誕生は、近年の不調を脱し、前戦3位、今大会2位と大舞台で完全復活を遂げるための明確な特効薬となっていたのだ。
さらに、離れていても共に戦う姉の存在も大きかった。以前彼女のキャディを務めていた姉・ブリタニー(サハリーちゃんの母親)について、ヘンダーソンはこう語っている。
「姉はもうキャディはしていませんが、スウィングやパッティング、コース戦略などすべてにおいて今でも私を助けてくれています。毎日姪っ子の写真を送ってもらって、それが私を笑顔にしてくれるんです」
キャディの座を離れてもなお、「チーム・ヘンダーソン」としての絆は健在であり、毎日の写真が彼女の闘志を優しく支えていた。
「姪っ子が来てくれて本当に興奮したし、素晴らしかった。火曜日にまた彼女に会えるのが楽しみ。家族と一緒に本当に素晴らしい時間を過ごせたわ」と、充実感をにじませたヘンダーソン。
逆襲へ向かうカナダのヒロイン

「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」では3位、「アムンディ・エビアン選手権」では2位と非常に良い状態にあるブルック・ヘンダーソン
前戦のメジャー「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」での3位に続き、今回も2位と、大舞台での強さを遺憾なく発揮しているヘンダーソン。彼女の視線はすでに、次なるメジャー「AIG女子オープン(全英女子)」へと向けられている。
「自分のゲームは非常に良い状態にあると感じていて、とてもワクワクしているわ。AIGでは過去あまり良いプレーができていないけれど、今年は違うストーリーになることを願っているの」
敗れてなお、ツアー史上最多となるイーグル記録を打ち立て、歴史にその名を深く刻んだブルック・ヘンダーソン。豪快なプレーと温かい人間性を併せ持つカナダのヒロインが、次戦でどのような新しいストーリーを紡いでくれるのか。彼女の力強いスウィングから、これからも目が離せない。
写真/大会提供
