「月曜日は技術の日」全米OP覇者がハンガーを手にした理由
「月曜日は僕にとって『技術的な調整をする日』なんだ。週の後半になれば、こんな練習をしている姿は見られないよ」
そう前置きした上で、クラークはハンガーを使う明確な意図を明かした。
「実を言うと、日曜日(ジェネシス・スコットランドオープン最終日)にスウィングが少し狂ってしまって、ショットの調子が良くなかったんだ。このハンガーは手首の角度を直すためのもの。左手首にもう少し屈曲(手のひら側へ折る動作)を持たせて、インパクトでフェースをよりスクエア(目標に対して真っすぐ)に保てるようにするためのドリルなんだよ」
クラークが課題としていたのは、スウィング中に左手首が甲側に折れてしまう「カッピング」という動きだった。手首が甲側に折れると、クラブのフェースが大きく開いてしまい、ショットの過度な右ブレやパワーロスを招いてしまう。この悪癖を排し、手首を平ら(フラット)な状態に矯正するために、手首の角度の変化を肌で意識しやすいハンガーを腕に挟んでスウィングしていたというわけだ。
不調を感じれば、たとえ日用品を使ってでも即座にその芽を潰す――。今年の全米プロゴルフ選手権でドライバーの不調により予選落ちを喫した直後にも、彼は腐ることなく猛練習で課題を即座に修正し、翌週の「ザ・CJカップ バイロン・ネルソン」と次のメジャー大会である「全米オープン」で優勝を飾ってみせた。この凄まじい「修正力」の高さこそが、現在の彼の強さを支える何よりの原動力だ。
【動画】公式会見で質問が殺到したウィンダム・クラークの「ハンガードリル」【全英OP公式X】
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x.com古典的ドリルの価値と、彼を支える「絶対的な土台」
では、このユニークな練習法は一体誰のアイデアだったのだろうか。
「実は僕のアイデアなんだ……と言いたいところだけど、これは昔からある古典的な練習法だね。みんな昔からやっていることさ」とクラークは笑う。
「僕が発明したわけじゃないけれど、手首の角度を整えるのに効くことは知っていたから、スウィングコーチと一緒に取り入れることに決めたんだ。手首を平らに保つには最高の方法だと感じているよ」
とはいえ、ずっとハンガーをつけたまま打ち続けるわけではなく、「正しい感覚を脳と体に染み込ませるために、だいたい15〜20球くらい打つだけ」だという。
最新テクノロジーを駆使して戦う現代のツアープロが、クローゼットの中にあるハンガーという泥臭いドリルと黙々と向き合う。その一方で、現在の彼にはメジャー覇者たる心の余裕も漂っている。会見で彼は、自身の充実したメンタルについてこう明かしてくれた。
「今、コース外の生活がとてもシンプルで充実しているんだ。素晴らしいガールフレンドや家族に恵まれていて、それがコース上での『非常に自由なゴルフ』につながっているよ」
技術的なアプローチを支える、絶対的な精神の安定。それこそが彼のゴルフに圧倒的なオーラを与えている。

ハンガードリルについて丁寧に説明するウィンダム・クラーク
極限のリンクスを切り裂く「精緻な左手首」
「月曜日は技術の日」と割り切り、早々にスウィングの違和感を矯正したクラーク。彼がここまでインパクトの正確性にこだわった背景には、今週のロイヤルバークデールが持つ特異なコンディションへの警戒と期待がある。
クラーク自身、「実はこんなに硬く(ファームに)仕上がった全英オープンでプレーするのは初めてなんだ。とても楽しみにしているよ」と語る通り、今年の会場は極限まで硬く引き締まっている。わずかなフェース面のブレが致命傷のトラブルへと直結する過酷なリンクスだからこそ、彼はハンガーを使い、基本に立ち返ったスクエアなインパクトの徹底を必要としたのだろう。
ハンガードリルによって、本来の分厚い強烈なインパクトを取り戻したウィンダム・クラーク。私生活の充実に支えられた「自由なゴルフ」と、泥臭く研ぎ澄ました「精緻な左手首」を武器に、彼が今週の北海からの強風をどう切り裂いていくのか。その一打一打から、目が離せない。
写真/R&A提供
