永遠に転がるボールと「飛ばす恐怖」
現在の世界ランク1位であり前回覇者のシェフラーは、今年のバークデールを「ボールが永遠に転がり続ける」と表現した。

現地時間の14日、「ヒーローズ・クラシック」に参加したスコッティ・シェフラー
「今週のフェアウェイは本当にタイトだ。横風が吹く中で、これほど硬く速い地面にボールを止めるのは至難の業だよ」
この言葉を裏付けるような衝撃的なエピソードを明かしたのが、マット・フィッツパトリックだ。数週間前にコースを回った際、弟のアレックスが「11番ホール(434ヤードのパー4)で、ドライバーをグリーン手前30ヤードまで飛ばした」というのだ。しかもそれは風の強い日ではなく、少し穏やかな日の出来事だったという。
ただパワー任せに飛ばすだけでは、ボールがどこまで転がってトラブルに陥るか予測できない。だからこそベテランのジャスティン・ローズは、物理的な「ギア(道具)」のレベルからこの異常事態への対応を明言している。
「普段アメリカでは7番ウッドを入れているが、今週はそれを抜き、2番、3番、4番のロングアイアンをすべてバッグに入れるつもりだ。低い球でバンカー手前まで転がす必要があるからね。さらに、バウンス角の少ない(ソールが滑りやすい)ウェッジへの変更も必須だ」
シェフラーが「ドライバーを打ってラフを受け入れるか、アイアンで刻むか」と頭を悩ませる中、トッププロたちは文字通りバッグの中身を根本から入れ替えて、このコンクリートと化したリンクスにアジャストしようとしているのだ。
アイアンで300ヤード:牙を剥くバンカーと「10ヤードの手前」
さらに驚愕の証言をしたのが、メジャー2勝を誇るジョン・ラームだ。彼はこの超高速リンクスがもたらす「異常な飛距離」について警戒を強めている。

公式会見で「異常な飛距離」について熱弁するジョン・ラーム
「もしこのままコースが硬くなり続け、同じ方向の風が吹けば、6番アイアンで280ヤードも飛んでしまうホールがいくつも出てくるかもしれない。こんなことは前代未聞だ」
2017年大会の覇者であるジョーダン・スピースもこの意見に同意し、「追い風になれば、5番アイアンが300ヤードも転がっていく」と語る。しかし、真の恐怖はその先に待っている。スピースは「コース設計者は、ドッグレッグホールの手前のちょうどその距離(300ヤード付近)にバンカーを配置しているから非常に危険だ」と指摘する。異常な飛距離が出るだけでなく、その転がった先に見事な罠が待ち構えているのが、このコースの意地悪さなのだ。
この一筋縄ではいかない罠を、ローリー・マキロイはさらにアグレッシブな「裏の戦略」でねじ伏せようとしている。
「数週間前に来たときはラフが深かったが、今は日光で完全に枯れ果てている。だからこそ、あの危険なフェアウェイバンカーを避けるために、あえてドライバーを全力で振り抜いて枯れたラフまで飛ばし、そこからウェッジで狙うという攻め方をとる選手も出てくるだろう」
コンクリートのように弾くフェアウェイと、確実にペナルティとなるバンカーを嫌い、「あえて枯れたラフを安全地帯として狙う」というマキロイの常識破りのコース攻略は、まさに知略の限界を競う全英ならではの面白さだ。
この狂った距離感は、短いクラブを持つアプローチですら例外ではない。予選会を突破して大舞台に挑むジョー・ディーンは、「50度や54度のウェッジで、かなりスピンがかかったとしても、ピンの10ヤード手前に落とさなければならない」と証言する。どの番手を持っても、ピンを直接刺すことは許されないのだ。
姿を変えた冷酷な上がりホール
異常なのは地面の硬さだけではない。コースデザインそのものも、選手たちに鋭い牙を剥いている。
シェフラーが「全く別のゴルフコースのようだった」と驚愕したのが、改修された14番、15番、16番の上がりホールだ。「グリーン周りの傾斜が非常に厳しく、とてつもなくチャレンジングになっている」と警戒を隠さない。
ラームもこれに同調し、特に15番と16番の危険性を指摘している。
「グリーンを横に外してしまうと、非常に厄介な場所に転がり落ちてしまう。今回は間違いなく、より大きな罰(ペナルティ)を受けることになるだろう」
ただでさえ止まらない高速グリーンに、少しでも狙いを外せば奈落の底へ突き落とされる厳しい傾斜。終盤のホールには、一瞬のミスが致命傷となる冷酷な罠が張り巡らされているのだ。
牙を剥く高速リンクス:求められる想像力と決断力
雨一滴降らない異常乾燥と、吹き荒れる横風、そして冷酷に改修されたグリーン周り。自然の猛威とコースデザインが融合したロイヤルバークデールは、まさに「究極のテスト」として選手たちを待ち構えている。
6番アイアンで280ヤード、5番アイアンで300ヤードを転がす異次元の想像力。そして、ロングアイアン3本を武器にピンチを切り抜けるか、それともマキロイのようにラフを味方につけてアグレッシブにねじ伏せるか――。
世界トップの選手たちが、この前代未聞の超高速リンクスにどう立ち向かうのか。週末の激闘から、一瞬たりとも目が離せない。
写真/R&A提供
