50グラム台のUT専用シャフト3モデルを打ち比べ
GD 今回は、ユーティリティ(UT)専用の3モデル、「ツアーAD U-55(S)」「スピーダーNXハイブリッド55(S)」「アッタスMB-HY55(S)」を打ち比べてもらいました。スペックはいずれも「50グラム台半ば」です。純正シャフトでは物足りないけれど、カスタムだとハードすぎるというアマチュアにとって、この重量帯は現実的な数値だと思います。
今回は「みんなのゴルフダイジェスト」で連載中の「ツアークオリティのクラブ工房(ゴルファーズラウンジby tantanto.)」で、同じヘッドでロフト、ライ角、長さ、バランス(D0)などをすべて統一してもらい、シャフトの違いが明確になるようセッティングしてきました。
長谷部 3本を打ち比べて想像以上に大きな違いを感じましたね。メーカーやブランドによって開発コンセプトがまったく異なり、それによって弾道だけでなく、振りやすさやフィーリングがガラリと変わりました。UTのリシャフトはもっと色々と試すべきだと改めて感じました。
GD プロはUTもカスタムが当たり前ですが、アマチュアは純正のままの方が多い印象です。ただ、アイアンのストロングロフト化でUTの出番が増えているからこそ、ウッドとアイアンの中間にあるUTのセッティングには、もっとこだわっていいのでは? と感じています。
長谷部 今回試打した25度の「5UT」は、4番または5番アイアンの代わりに楽に球を上げるためのクラブです。そのため、フェアウェイウッドとは切り離した、アイアンに近いスペックで短く当てやすい性能が求められると思います。
プロはアイアンと同じスチールや重いカーボンを入れがちですが、アマチュアが使用する市販品では、アイアンが90グラム台でもUTの純正シャフトはいきなり50グラム台まで軽くなるケースが多く、この「重量のギャップ」を気にされる方も多いかもしれません。
GD 3モデルの印象を伺いますが、グラファイトデザインの「ツアーAD U-55(S)」はどんな特性のシャフトでしょう?
長谷部 適度な弾き感を残しつつ、球の上がりやすさとつかまりの良さに振り切った「やさしいシャフト」だと思います。私が長く愛用していたプロ好みの硬派な「ツアーAD DIハイブリッド」とは完全に対極に位置する、アベレージゴルファーが気持ちよく打てるシャフトだと感じました。
GD USTマミヤの「アッタスMB-HY55(S)」はいかがでしたか?
長谷部 長く愛される定番モデルで、最大の特徴はスウィング中に「余計な動きをしない安定感がある」点です。フィーリングがスチールの感覚に非常に近く、打ち込みにもつかまえにいく動きにも素直に反応してくれます。今回の3本の中では、私には一番振りやすいシャフトでした。
GD 3本目は、最新モデルのフジクラ「スピーダーNXハイブリッド55(S)」です。
長谷部 実際に振ると大きなしなりを感じ、「ツアーAD U-55」よりもさらにやさしくつかまる、先の2つに比べて弾き感の強いシャフトです。フレックス表示よりも少し軟らかく感じられて、タイミングが合わない場面もありましたが、ウッド用スピーダーの弾き感をしっかり継承しており、明確に「ウッドからの流れ」を感じさせる仕上がりです。
GD 「スピーダーNX」がウッドからの流れで、逆に「アッタスMB-HY」がアイアンからの流れ、その中間が「ツアーAD U-55」という位置づけ。難易度で比較するとどうですか?
長谷部 難易度はスウィングタイプによります。私はラインを出して打ちたいので「アッタス」を一番打ちやすく感じました。「スピーダーNX」は払い打つイメージが必要ですし、「ツアーAD」は弾き感を自分でコントロールする必要があり、私には少し難しかったです。
クラブに頼ってオートマチックに球をつかまえたい人には「ツアーAD U-55」が最適です。短めのUTで何をしたいかによって選ぶ方向性が分かれます。
GD 5番アイアンの代わりにロフト25度前後のUTを入れるケースは今後増えるはずです。この番手のセッティングを煮詰めることが、スコアメイクにおいて極めて重要になるような気がします。
長谷部 「アイアンが90グラム台なのにUTが50グラム台では軽すぎるのでは?」と疑問に思う方は多いですが、近年の50グラム台のカスタムでも剛性が高いので当たり負けの心配はありません。
私も過去に70〜80グラム台のスチールをUTに挿しましたが、UTはアイアンに比べてクラブ長が長く、さらに重心距離が長いためスウィングへの負荷が大きく、ダフりやスライスの原因になりました。UTをリシャフトするなら重量の軽さの懸念より硬さやシナリの特性を吟味すべきだと思います。
GD 重量を重くするのはハードルが高そうですが、「重量の階段(フロー)」はきれいに作るべきですか?
長谷部 ヘッドの重心や形状が多様化した現代では、昔ほどの重量フローは必要なく、フレックスの連動性を気にすれば十分です。UTはアイアンより2インチ以上長いため、スウィング中の負荷は想像以上に大きく、重いシャフトを振り切るのはアマチュアにはしんどいはずです。
それならトータル350グラム以下に収まるUTで楽に振るほうが実戦的です。シャフト重量をアイアンに近づけるより、50グラム台のしっかりした硬めのSフレックスを選んで叩いたほうが結果は良くなるでしょう。
GD UTにスチールシャフトを挿す選択肢についてはどうですか?
長谷部 ニーズは理解できます。現代のアイアンは球が上がりにくく、中空アイアンも人を選ぶため、ウッド型UTにスチールを組むのはアリです。ただ、アイアンと同じスチールを挿すとヘッドが重く感じられ、コースでは負担になります。
打点がバラつくアマチュアなら、ミスの許容範囲を広げるためにも、軽量カーボンのしっかり目のフレックスや「NS PROゼロス」など超軽量スチールを選ぶほうが圧倒的に有効だと思います。
GD 今日の試打ヘッドは10年前のモデルですが、飛距離も落ちておらず、シャフトの差のほうが顕著でした。現代のUTヘッド開発はどこまで進んでいるのですか?
長谷部 UTは形状やフェースプログレッションで得られる弾道がほぼ決まるため、構造が激変しない限り、10年前と最新の差はスピン量や打ち出しの微調整レベルです。
だからこそヘッドの進化より「シャフトセッティング」が重要になります。市販品は飛ばすために「軽く・長く」なりがちですが、グリーンを狙う正確性を求めるなら、リシャフトを機に「あえて短く、硬く組む」選択は非常に有効です。その中で自分に合うしなり方のシャフトを選べばいいと思います。
GD UTの役割は「安心・安全・確実」ですから、飛びよりも確実性を重視するセッティングが正解?
長谷部 その通りです。リシャフトの際は純正の長さに固執せず、多少の飛距離を妥協してでも「振りやすさ」と「芯への当てやすさ」を最優先したほうが、実戦でのメリットは遥かに大きくなります。
私が「アッタスMB-HY」が振りやすいと感じた理由は、シャフトのバランスポイント(重心位置)がやや手元寄りだからかもしれません。短いクラブほど重心位置の影響は大きく、1パーセント違うだけで別物の振り心地になります。
GD 外から見ていても振りやすさの違いが明らかでした。同じ50グラム台でもこれだけ個性が違うと、実際のスコアへの影響も大きいですよね。
長谷部 ええ、自覚以上にスウィングに出ていました。170〜180ヤード先のピンを狙うクラブですから、狙い通りの弾道が出るかで1打の重みがまったく変わってきます。本来は非常に慎重に選ぶべき領域です。
GD 「UTのシャフト」は重要なのに、後回しにされがちなテーマです。
長谷部 予算がドライバーやアイアンに回り、UTのシャフトは最後になりがちだからです。メディアでの記事や露出も少ないですが、実戦での重要度は極めて高い番手です。
GD 雑誌の特集なども圧倒的に少ないです。
長谷部 ですが、UTは使用頻度が高いですし、何よりもトラブルからピンチを切り抜けるための最重要クラブです。170〜180ヤードからグリーンに乗るか、池やバンカーに行くかでスコアは天と地ほど変わります。確実にパーセーブに繋げるための「正確性」と「再現性」をもたらすシャフト選びは、必要不可欠な要素です。
GD ただ、アマチュアがUT用カスタムシャフトをじっくり試打できる環境が少ない現実もあります。
長谷部 シャフトメーカーさん主催の試打会などでは、UTシャフトもじっくり比較できると思います、もちろんヘッドの種類は限定されますが、ウッド型かアイアン型か選んで近いほうのヘッドで色々打ち比べると新しい発見があると思います。
GD 「合う・合わない」は人それぞれ、スウィングタイプ次第?
長谷部 その通りです。万能なシャフトは存在しません。自分のスウィングの癖やクラブに求める役割に合わせて、真摯に向き合って選ぶ価値があると思います。
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