イングランド北西部の海岸沿いに位置するサウスポート。その地に居を構えるロイヤルバークデールで開催されている第154回「全英オープン」は、地元出身のトミー・フリートウッドにとって、単なるメジャー大会以上の意味を持っている。「僕が7歳のとき(1998年)、全英がここバークデールで開催されたんだ。僕の『プロゴルファーになりたい』という夢は、間違いなくあのときにここから始まった」と明かす地で、大観衆の期待を一身に背負う巨大なプレッシャー。しかし、彼は見事にその重圧と向き合い、第2ラウンドを終えて首位のルーカス・ハーバート(オーストラリア)とわずか4打差の好位置につけた。「あと少しで手が届く位置にいるのは、本当に素晴らしい気分だ」。彼の声には、週末に向けた確かな手応えが滲んでいた。

初日の乱れと名匠ブッチ・ハーモンへのSOS、そして執念の粘り

フリートウッドにとって、地元開催の重圧は決して軽いものではなかった。「昨日は本当に緊張していて、スウィングのリズムに苦労していたんだ」と本人が告白するように、初日は極度のプレッシャーからスウィングが早くなり、本来の滑らかな動きを失っていた。

不調を察知した彼は、その日の夜に自身のスウィングコーチである名匠ブッチ・ハーモンに連絡を取った。

「僕が少し早打ちになっていて、動きの同調(シンクロ)が取れていないことは明らかだった。ブッチとは、テークバックとリズムについて話し合ったよ。緊張が高まっている状況では、こうしたマイナーチェンジがすごく重要になるんだ」

信頼するコーチからの的確な助言により、彼は自らのスウィングを取り戻すための明確な意図を持って第2ラウンドに臨むことができた。

振り返れば初日は、ショットの不調から常に守勢に立たされ、自分の悪いスタッツが追いかけてくるような苦しい気分だったという。それでも大崩れしなかったのは、見事なスクランブル(寄せワン)で凌ぎ切ったからだ。「苦しい時間帯に、ギャラリーの声援が間違いなく僕を運んでくれたんだ」と、地元の熱い後押しに深く感謝していた。

苦境を救った地元ファンの「規格外」の大歓声

スウィングの修正とともに、苦しむ彼をどん底から救い上げた最大の要因がある。それは、コースを埋め尽くす地元ギャラリーの熱狂的なサポートだった。

画像: 地元のギャラリーに感謝するトミー・フリードウッド

地元のギャラリーに感謝するトミー・フリードウッド

「彼らは信じられないほど素晴らしい。昨日、僕が苦しんでいた時に大いに助けてくれたし、今日も彼らの前でプレーするのが本当に楽しかった」

自国(それも生まれ育った場所のすぐそば!)開催のプレッシャーが重荷になることはないのかという問いに対し、フリートウッドは「彼らは僕をサポートするためにそこにいる。ネガティブな要素なんてひとつもないよ」と断言する。

「僕自身の期待も大きいし、ここには夢が詰まっている。プレッシャーはもちろんあるけれど、それは良いものばかりだ」

特にバックナインに入ってからの歓声は凄まじかった。「15番での歓声は信じられないほど、規格外だったよ」と笑顔で振り返る。終盤にかけて本来の流れるようなスウィングを取り戻し、大歓声と完全に一体化した瞬間だった。

アパレル契約フリーの自由と、タイガー・ウッズを巡るユーモア

プレッシャーから解放されつつある彼の充実した精神状態は、公式会見の最後に見せたユーモアにも表れていた。

画像: 「Sun Day Red」を着るフリートウッド

「Sun Day Red」を着るフリートウッド

フリートウッドは今年、特定のアパレル契約を結んでいない。だからこそ、自分が着たいと思ったクールな服を自由に着られる立場にあるのだ。そんな彼がこの日、純粋にお気に入りの一着として選んで着用していたのが、タイガー・ウッズが展開するアパレルブランド「Sun Day Red」のウェアだった。

記者から「何か特別な理由があってタイガーのブランドを着ているのか?」と突っ込まれると、彼は少し照れくさそうに「いいシャツだし、いい色だからね。うん、すごくいいよ」と笑顔で回答した。

さらに「携帯電話を開いたら、タイガーからのメッセージが届いているんじゃないか?」と茶化されると、「その連絡は待っているところだよ」と切り返し、会見場を大きな笑いに包んだ。

極度の緊張から始まった地元でのメジャー大会は、コーチの助言とファンの大歓声によって、彼にとって最高にポジティブな舞台へと変わりつつある。

首位と4打差。地元サウスポートのヒーローが、熱狂的な大歓声を背に受けて、週末にどのような大逆転劇を見せてくれるのか。ロイヤルバークデールの熱気は、さらに加速していく。

写真/R&A提供


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