イングランドのロイヤルバークデールで開催されている第154回「全英オープン」。大会2日目を終え、予選通過のカットラインは「1オーバー」。極度に硬く乾いたフェアウェイとグリーン、そして気まぐれな風。世界最高峰のトッププロたちでさえ、このリンクス特有の過酷な洗礼の前では、残酷なまでに明暗が分かれることとなった。

完璧なショットをあざ笑うリンクスの理不尽さ

「今日は3、4回良いショットを打ったのに、全く運に恵まれなかった」

画像: 大会前の公式会見では好調を口にしていたマット・フィッツパトリックだが無念のカットに

大会前の公式会見では好調を口にしていたマット・フィッツパトリックだが無念のカットに

そう不満を吐露したのは、通算4オーバーで無念の予選落ちを喫したマット・フィッツパトリックだ。PGAツアーで28試合連続予選通過という現在最長の輝かしい記録を継続していた彼だが、その記録もこのリンクスで途絶えることとなった。ちなみに、フィッツパトリックの予選落ちにより、松山英樹がPGAツアーでの連続予選通過記録の最長保持者(今大会の予選通過で28試合連続)となっている。

彼の言葉からは、全英オープン特有の「理不尽さ」が痛いほど伝わってくる。

「自分が狙った通りに完璧に打てたショットが3回あった。なのに、1球は30ヤードも奥の茂みに突っ込み、もう1球はグリーン上に15秒間もとどまった後に転がり落ちてしまった。そして突然、バンカーの壁に目玉(深く埋まる状態)になってしまうんだ」

極度に硬い地面では、完璧なショットが必ずしも良い結果を生むとは限らない。

「それがリンクスゴルフだ。これほど硬いと、バウンドの運やライの運という要素が大きすぎる。今週は、悪いショットをたくさん打ったとは全く感じていない。これがリンクスゴルフのやり方なんだ。こういう硬いコースでは、運の要素が大きすぎるよ」

世界のトップで戦うショットメーカーに「自分の力だけではどうにもならない」と言わしめるのが、全英オープンの恐るべき魔力なのだ。

ラームへの警告と、ローズの美しい引き際

極限のストレスは、時に選手たちの感情を爆発させる。首位と5打差の通算3アンダーで上位争いに踏みとどまっているジョン・ラームでさえ、自らをコントロールしきれない瞬間があった。彼は15番ホールでのミスショット後、感情に任せた振る舞いを見せ、競技委員から「行動規範」違反の警告を受けてしまったのだ。

画像: 警告を受けたジョン・ラームだが、上位争いのなかで「自身のプレースタイルは変えない」と明言する

警告を受けたジョン・ラームだが、上位争いのなかで「自身のプレースタイルは変えない」と明言する

「あれはただの悪いショットだった。ティーグラウンドでは風も距離も完璧で、何十万回もやってきたスウィングをしたはずなのに、信じられないようなミスになってしまった。あんな反応をするべきではなかった」とラームは素直に反省の弁を口にした。

その激しい焦りの背景には「15番、16番、17番はバーディを狙えるチャンスホールになり得る。それなのに、自分の悪いリアクションのせいでその流れを台無しにしてしまった」という、メジャーの週末へ向けてスコアを伸ばすべき勝負所でミスをしてしまった痛恨の思いがあった。一方で、「私は他の選手たちよりも感情的というか、情熱的で激しいタイプだ。自分を変えすぎようとすれば、コース上でマイナスに働くこともある」と、自らのプレースタイルへの信念も覗かせた。

画像: 思い出の地ロイヤルバークデールでの予選落ちで早すぎる帰宅になったジャスティン・ローズ

思い出の地ロイヤルバークデールでの予選落ちで早すぎる帰宅になったジャスティン・ローズ

対照的に、美しい引き際を見せたのがベテランのジャスティン・ローズだ。彼もまた週末の2ラウンドをプレーできないことに強い失望を示したが、最終18番ホールで地元ファンから受けた大歓声には心を救われたという。

「自分の殻から抜け出して、この素晴らしい18番ホールの歩みを楽しもうとした。歩いていると鳥肌が立ったよ。素晴らしい1週間だった」と、ファンへの深い感謝を述べてコースを去った。

彼にとって、この地は1998年にアマチュアとして全英4位に入り、世界にその名を知らしめた原点の舞台でもある。「ファンのみんなは、私がかつてこのバークデールの18番を歩いたときのことを思い出してくれているのだと思う。そして、それ以来の私のキャリアに対する評価でもあると感じた」と振り返るその表情は、どこまでもエモーショナルで誇らしげだった。

残酷な舞台で生き残るタフネス

完璧なショットを弾き出す硬い地面。そして、それによって引き出されるトッププロたちの怒り、嘆き、そして感謝。全英オープンの真の過酷さは、風やラフの難易度だけでなく、選手たちの人間臭い感情の起伏を容赦なくさらけ出させる点にある。

この理不尽なサバイバルを生き残り、週末へと駒を進めた選手たちがいかに精神的にタフであるか。決勝ラウンドのリーダーボードが、より一層重みを増して見えてくる。

写真/R&A提供


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