今回も6月30日、7月1日に、韓国で開催された障害者ゴルフの国際大会「2026ソウルKDGAアダプティブオープン インターナショナルチャンピオンシップ」(ベイヒルCC永宋/仁川)からの報告です。
今回も6月30日、7月1日に韓国で開催された障害者ゴルフの国際大会「2026ソウルKDGAアダプティブオープン インターナショナルチャンピオンシップ」(ベルヒルCC永宗/仁川)からの報告です。

KDGAのソ会長とJDGAの石塚専務理事。ここからまた交流は深まっていくのです
まずは、日本から参戦した山本篤さん(左大腿切断)の感想を聞いてみましょう。
「コースは、ティーグラウンドが洋芝っぽくてフェアウェイは野芝。地面は硬く、僕は好きな感じでした。でも、グリーンも結構硬いのでボールが跳ねるから高さを出して止めないといけない。そこで止めきれず、またアプローチもファーストバウンドが跳ねてしまうので、寄せるのに苦労しました。もう1つ大変だったのがOB杭がフェアウェイから近くて、予想外のOBになってしまうことです。でも、結果的には上手くまとめられて、80台前半で回れてよかった。自分のゴルフは少しずつ、よくなってきているんですけど、プレッシャーのかかる場面で1ペナやOBが出てしまったり、決めたいところで決められなかったり。でも今回はバーディも何個か出たので、そういう意味では、成長しているのかなあと思いました」
パラリンピストとして陸上・走り幅跳びで銀メダルを獲得した、日本のパラアスリート界の第一人者である山本さん。ゴルフ競技でもまさに“伸びざかり”です。実はパラ陸上では韓国選手に会ったことはないそうですが、豊富な国際大会の経験から、今回も感じることは多かったようです。
「今後、この大会が世界ランキング対象になってくれたらいいなと思います。韓国は日本から近いですし、今回のコースは仁川空港から近いのですごく交通の便がよくて、泊ったホテルの周りにもいろいろなものがあったのですごく過ごしやすい環境でした。“日中韓のゴルフ交流戦”の話もあるようなので、アジアとして“パラゴルフ”が発展してくれたらいいなと思いますし、どんどん強い選手が出てきたら素晴らしいなと思っています」

真剣にプレーする山本篤さん(右)と有迫隆志さん。遠くにチョンナンブリッヂが見えます
さて、同じく本大会に参戦した有迫隆志さん(左上肢機能全廃)にも聞いてみましょう。
「とてもよい状態で韓国入りできたので、しっかり練習ラウンドで馴染むことができれば上位に入れると思っていました。しかし初めての韓国。やはり日本とはまったく異なるゴルフ環境で、練習ラウンドでは地面の硬さやグリーンスピード、風、気温など、馴染むことにかなり苦労しました。
初日は17番ホールまで『75』ペースでラウンドできて、とてもよい流れでした。しかし、18番ホールで運が尽きてしまったかのような大叩きをして、2日目もよい流れに乗れることなく終わってしまいました。でも、最後のホールではバーディを取って終えることができましたし、悪い流れを最後で断ち切れたのではないかと思っています。これまで国際大会では、意気込んでスコアを大きく崩すことが多々ありましたが、今回は大きくスコアを崩すことなくラウンドできたので自信になりました」
初めての韓国。試合はもちろん、選手や大会関係者、地元の人々との交流や食事なども大いに堪能できたようです。
「コース以外では、言葉や文化の違いで不安に思うことが多々ありましたが、KDGAのソ・ユンジョン代表をはじめとする、理事メンバーの方々に手厚いサポートをいただき、何不自由なく過ごせてとても充実した期間でした。
共にアジアを代表するゴルフ大国なので、しっかりタッグを組んで大きな国際大会になればよいなと思います。そのためにも、お互いにしっかり選手を育て、たくさん交流して、どんどんレベルアップしていきたいと強く思いました。まずは韓国語を勉強することからスタートします!」
“おもてなし”は日本の文化でもありますが、韓国の“大歓待”文化にも心を動かされた選手たち。ここからさらに交流と相互理解は深まっていくはずです。
「障害の垣根を越えた大会を」KDGAソ会長の熱い思い
「初めて開催する国際大会、心配だったのは、体が不自由な皆さんが、果たして安全に入国できるかどうか。無事に終わってまずはホッとしています。とにかく皆さんに美味しいものを提供して、いい思い出を作って帰ってもらいたい、それが一番の私たちの望みでした」
そうニコやかに語るソ会長に、KDGAの成り立ちについても聞いてみました。
我々がよく知るNF(その国の統括団体)である「韓国ゴルフ協会(KGA)」は、大韓民国政府の文化体育観光部傘下の団体です。一方、「韓国障害者ゴルフ協会(KDGA)」は社団法人の民間団体であり、2015年にソ会長が自ら設立しました。
2001年からPGTAというティーチングプロ協会の代表理事を務めてきたソ会長は、10年が経ったあるとき、韓国における障害者ゴルフ協会の必要性を強く感じたといいます。
「PGTAを運営しているとき、目が見えない方が一生懸命ゴルフに取り組んでいる姿を見る機会がありました。そういった方々も出場できる試合を運営する組織を作りたいと考えたのです」

国内大会は、視覚障害者、聴覚障害者も一緒に参加しています。表彰は部門別に行われます
2014年に10組の視覚障害者の大会からスタートし、翌年の第2回大会からは、知的障害者、身体障害者も含めて80人(20組)を集めて開催。それまで韓国には「障害種ごと」の大会しか存在しませんでしたが、あらゆる障害種を網羅した大会を実現させたのです。現在、韓国でこうした活動を行っている団体はKDGAだけだそうです。
「2020年からはソウル特別市が後援してくださり、新韓銀行をはじめとする主要銀行からも関心を持って後援していただいております」
これまで120人規模の大会をショットガン方式で開催したこともあれば、地方で50人規模の大会を行ったこともあるそうです。
現在のクラス分けは、視覚障害の部(全盲の部、弱視の部)、聴覚障害の部、知的発達障害の部、肢体不自由の部。表彰式は部門別に行われます。今年で12回目を迎えた同大会ですが、今回そこに初めて「国際大会」という枠組みを加えたのです。
「2013年にアメリカの世界大会を見学に行き感銘を受け、そこで日本のDGAの松田治子会長にもお会いしていろいろと話をするなかで、ぜひ韓国でも国際大会を開催したいと考えたのです」
視覚障害と聴覚障害の選手は各団体を通して参加者を募り、それ以外はHPや口コミを通じて応募を集めているそうです。
日韓の未来をつなぐ、ゴルフという「伴侶」
KDGA理事であり、今大会で日本語通訳も務めたジョン・ジョンウンさんはこう語ります。

日本選手3人と通訳を務めてくれた“明るい”ジョンさん。韓国のおもてなしに皆大感激
「韓国のゴルフ人口は(インドアの)スクリーンゴルファーを合わせると550万人から600万人くらい。日本は650万から700万人といったところでしょうか。でも、日本ではゴルフは一般の方々のスポーツですが、韓国ではある程度富裕層でないとできないスポーツ。障害者の方が取り組むこともハードルは高いと思います。日本ではDGAが障害者ゴルフに以前から取り組んでいる。やはり先進国だなあと感じるのです。日本で車椅子ゴルファーを見て励みになりました」
「本当はもっと多くの海外選手を招きたいのですが、今年はまだそこまで予算が作れませんでした」と語るソ会長。ご自身のゴルフの腕前は“80台”。ゆったりとしたスウィングで、安定感のあるプレーをされます。
「ゴルフは総合芸術だと感じています。観衆をギャラリーと呼ぶように、自然と共に楽しめる文化だと思います。そのなかで自分自身と競争しながら心身の健康を図り、ゴルフの規則を通じて他人への配慮やマナーを学べる点が魅力です。そして私にとっては、人と人をつなぐコミュニケーションの言語であり、生涯を共にできる伴侶のような役割を果たしてくれる、友人のような存在です」
会長の国際大会開催に対する覚悟は相当なもので、「大きな気持ちがないと、こういった活動はできません」ときっぱり。
課題も多く、韓国にはフェアウェイにカートが乗り入れられるコースがまだ1カ所しかなく、それを可能にするためのコースとの交渉もこれから進めていくそうです。
「KDGAは国際障害者ゴルフ大会の国際ルールに合わせて大会開催に尽力する計画であり、障害者ゴルフ文化において先進的である日本とも協力を図ることで、障害者ゴルフの国際社会における韓国の地位を確立していく計画です。また、国際障害者ゴルフ大会に出場できる選手の育成も目的としており、実力ある障害者選手の養成に力を入れるとともに、国際大会に参加する韓国の障害者ゴルフ選手の支援も目的としています。今後、こういう大会を盛り上げていきたいので、関心を今以上に持っていただきたいですね」

優勝は秋山卓哉さん、2位はドン・サンヒさん、3位は山本篤さん。“日中韓交流戦”の夢も生まれました
日本障害者ゴルフ協会の専務理事、石塚義将さんは大会をこう総括します。
「今回は韓国での初の国際大会ということで日本から3名の選手と共に参加させていただきました。韓国には非常に強い選手が多く、日本とはよい意味でライバル関係にあります。そこで今回、日本の秋山卓哉選手が優勝できたことは非常に嬉しい結果でした。今後も韓国とは交流をより深めていきたいと思っています」
障害者ゴルフを通じた温かい“日韓交流”。そこから、未来のパラゴルフ界を牽引する新たな光が間違いなく生まれるはずです。


