39歳のダークホース、ライアン・フォックスの劇的バーディで幕を閉じた今年の全英オープン。予想外のチャンピオンの誕生だったが、地元のヒーロー、トミー・フリートウッドや連覇を目指したスコッティ・シェフラーの追い上げもあり盛り上がりを見せた。そんな大会に水を差したのは金曜日に起きた「ブライソン(デシャンボー)・ゲート」事件。一部のマスコミが政治スキャンダルになぞらえ「ゲート」をつけたのだが、さまざまな議論が未だ渦巻いている。
画像: 全英オープン2日目に2罰打を科されたブライソン・デシャンボー。この裁定が物議を醸している

全英オープン2日目に2罰打を科されたブライソン・デシャンボー。この裁定が物議を醸している

大会2日目ブライソン・デシャンボーは66をマークし首位と1打差の2位に浮上。優勝を射程圏内に捉えていた。ところがスコアを提出する前に急転直下、奈落の底に突き落とされた。

5番ホールでフェスキューが生い茂るエリアに球を打ち込んだ際、ライを改善したとして2罰打を科されたのだ。これは優勝争いしている選手に対して適用するには前例のないタイミングの厳罰。

ゴルフ専門メディアPRO GOLF WEEKLYは「長い歴史を誇る全英オープンで36ホール終了時点でトップ2につけていた選手がラフへ不注意に足を踏み入れたことで、後から2罰打を科された例は1つもない」とし「これは公平なルール運用というより官僚的な揚げ足取りのように感じられる」という見解を示している。

そもそも大会前から米国の多くのマスコミはデシャンボーの逆グランドスラム、つまりシーズン4つのメジャーすべてで予選落ち、を期待するような風潮があった。

ニック・ファルドの「彼はリンクスの戦略をまったく理解していない。ゴルフ自体わかっていない」という痛烈な批判もあった。LIVに移籍しただけでなく競技よりもYouTubeでのゴルフ活動を優先する彼を面白く思っていないゴルフ界の重鎮たちもいる。

さらにローリー・マキロイの発言が火に油を注いだ。以前から確執が取り沙汰されていたデシャンボーに対し「彼を擁護するつもりはない。特に好きなわけでもないし、彼の行動はいつも注目を集めるためのパフォーマンスのように見える」とルールの是非を超え個人を批判するような発言を行った。

いっぽうでシェフラーが「デシャンボーはチーター(ズルをする人間)ではない」と擁護した発言はドロドロとした展開のなか一服の清涼剤だった。

2罰打を科したことに関してR&Aは見解とコメントを発表したが、それに対し「プレー終了後のビデオ検証で懲罰的な措置を与えたこと」に違和感を覚えるとし、95パーセントのファンがデシャンボーを擁護し、彼を被害者とみなした。

もちろん3日目に挽回し優勝争いに加われれば良かったが、本人に近い関係者は「彼は精神的に立ち直ることができなかった」と語っている。

賛否両論あるが、それを超えSNSではラフのなかから打つデシャンボーを空飛ぶ絨毯の上でプレーさせる動画がアップされている。騒動をユーモアに昇華させるセンスは素晴らしい。彼をクレーンで吊り上げてフェスキューを踏まない手助けをする風刺漫画も投稿されている。

【写真】デシャンボーも自身のSNSで「ウェスキューの上で浮く」写真を投稿(スライド2~3枚目)【デシャンボー公式インスタグラム】

そういえば大会が開催された英国はブラックユーモアの国。サー(卿)の称号を持つファルドも、じつは強烈なブラックユーモアの持ち主だ。

以前彼が来日した際、あるレセプション会場でスピーチをおこなったのだが、突然夫婦喧嘩で妻が夫をクラブで殴り殺す話をしはじめて驚いた。

警官の「何打クラブで打ったんだ?」という問いかけに妻は「確か……13打だったと思う」。すると「じゃあ、12打におまけしておこう」と警官。それがオチだったのだが笑えないジョークにどう反応すればいいのかわからなかった。

ファルドもデシャンボーを批判するだけでなく、ブラックでも構わないからユーモアを交えて解説して欲しいものだ。

写真/R&A提供


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