こんにちは、上原彩子です。私は今、スコットランドにいます。今週は、LETと米LPGAの共催試合「ISPSハンダ女子スコティッシュオープン」(ダンドナルド・リンクス)が行われます。この大会に出場するため、沖縄からツアーに戻ってきました。
まずは、先日開催された「アムンディ・エビアン選手権」での解説についてお話しさせてください。U-NEXTさんの依頼で土日の前半枠を担当したのですが、普段は他の選手たちのプレーをじっくり見る機会がなかなかないので、とてもいいチャンスをもらえました。そして何より、今の若い選手たちの強さを画面越しからでも強烈に感じることができました。
皆、自分の目標に向かって邁進する姿勢があり、自分が決めたことはしっかりやり切る“勝負師”のオーラを感じましたね。LPGAは非常に厳しく、生きるか死ぬかの世界です。“なかよしこよし”では通用しませんし、基本的には皆がライバル。そのなかで、「自分がどうしたいか」「どうなりたいか」という意志がめちゃくちゃ強いんです。自分のやりたいことに対して100%向かっていく気持ちの強さ、ゴルフに対する情熱、そして「絶対に自分が優勝するんだ」「世界一になるんだ」という思いをひしひしと感じました。もちろん、思いだけでなく、それに向かうための取り組みや行動もしっかりしています。私なんてまだまだゆるいなあと思わされましたし、本当に多くの学びがありました。

エビアンの解説をする彩子。「最初は緊張しましたけれど、普段はじっくり見られない選手たちのプレーを見て、本当に勉強になりました」
技術面も格段に高くなっています。飛距離に関しても、以前の平均は230ヤードくらいでしたが、今は250~260ヤードくらいと当然のように飛びます。それに、実は「みんなマネジメントを徹底して安全にいくのかな」と思っていたのですが、プレーぶりを見ていると結構アグレッシブに攻めるゴルフをするんです。それでもショートサイドからの難しそうなアプローチをしっかり寄せてきますし、寄せきれなくてもパットをねじ込んでボギーを打たない。昔に比べると、グリーン周りの技術も間違いなく上がっているのだなと感じました。
最後まで優勝争いを演じた岩井明愛選手に関しては、メンタルがすごく強いなあと思いました。8番パー3でブルック・ヘンダーソンがホールインワンを決めましたが、その直後のショットもしっかりいい位置につけていましたよね。初めはメジャーの緊張もあって少し硬くなっているように見えましたが、そのなかで自分と葛藤しながらも試合を組み立てていき、運を引き寄せる力がすごい。勝負どころがわかっていて、しっかり攻められる野性的な本能を持っています。
ラウンドリポーターの片平みつきさんに「メンタルコーチがいるんでしょうか?」と聞いたら、「そういう人はいないと思う。トレーナーもつけずに、セルフケアでシーズンを戦っているみたい」と教えてくれたので、そのあたりも本当にすごいなと思いました。
それにしても素晴らしい試合でした。流れ的にはブルックが勝つかなと思いましたが、ユ・ヘランが勝ちましたね。彼女も本当に強かった。これで今年のメジャーはネリー・コルダが2連続勝利、ユ・ヘランが2連続勝利という展開になりました。残すは来週の「AIG女子オープン」のみです。昨年の優勝は山下美夢有選手でしたが、今年は日本のどの選手が勝ってもおかしくないくらい、本当にチャンスがあると思います。
その山下選手とは、スコットランドでの月曜日の練習ラウンドでハーフを一緒に回ったんです。
山下選手はエビアンの最終日、スタートホールから完全に“勝負師の顔”になっていました。練習ラウンドのときに「日曜日のティーグラウンドに上がったとき、顔が変わっていたよね」と言うと、「わかりました?」と笑っていました。画面を通して見て想像していたことを、実際に本人に聞いて答え合わせができたのはすごくよかったですね。

山下美夢有と練習ラウンド。強さの秘密を感じられたという。「彼女のプレーを直接見て、私もすごくいいイメージを持つことができました」
エビアンでの山下選手は、3日目はショットがバラついていたものの、そのなかですごく上手くリカバリーし、パットも外さない。それが彼女の強さの理由だと思いました。そして4日目には明らかにショットの感じが変わっていたので、しっかり修正して最終日に向かえているのだなと感じました。
みつきさんも言っていましたが、昨年のAIGで優勝したときも、3日目が終わってショットの調子が悪く、練習場に行ってもよくならず、ホテルで確認してもダメで、次の日の朝にまた練習して「これだ!」と感覚をつかんでからスタートし、優勝を勝ち取ったそうです。自分が納得するまでやり切る強さ、その貪欲さを持っていますよね。
本人は「自分はスロースターターだから、そのへんが課題」と話していました。エビアンで勝てなかったのも、3日目にスコアを伸ばせなかったからだと。若いのにしっかり自己分析をして次につなげている点に感心させられます。
練習ラウンドでも、彼女はめちゃくちゃいい練習をしていました。パットについては「悩んでいる」と言っていたものの、結構入っていたので「どういうラインの読み方をしているの?」と聞いたら、「エイムポイントなどは使わず、傾斜を見たままで判断している」とのこと。実際に彼女がプレーしている姿を見ているだけで、私もすごくいいイメージを持てました。練習は自分で考えてやっているのかなど、聞きたいことはもっとあったんですけどね……。直接プレーを見て、これからの彼女の活躍がますます楽しみに感じました。
さて、スコットランドは今のところいい感じの天気です。気温は最高で22度くらい。週末もこのまま穏やかであることを願います。日本は猛暑で大変だと聞いていますので、皆さんもくれぐれも体調には気をつけてくださいね。

スコットランドでは4日間を戦うことになる。「気候がよくてほっとしています。コースはカチカチですけれど。でも、体調はよいので、頑張ります!」
先日の全英オープンでは、コースが硬くて茶色の芝が見えていましたが、ここも同じように芝が茶色でカチカチです。私は2017年にここでプレーしたことがあるのですが、あまり覚えていなくて……。でもやっぱりスコットランドなので、天気は変わりやすいです。変わらないでほしいですけど(笑)、風が吹くと一気にコースの印象は違ってきます。アゲンストならボールは止まりますが、フォローのときは落としどころを慎重に判断しなければなりません。低い球や転がしのアプローチを使う技術も必要になってきます。

LPGAの友人たち。タイのパジャレー・アナナルカルンや韓国のイ・ミヒャンらと。「スコットランド女子オープンはアメリカと欧州の選手が半分ずつ出ています」
そういえば練習ラウンドのとき、後ろの組で全英覇者のジョージア・ホールがプレーしていたんです。あるホールでフォローの風が吹いていたので、私はグリーン手前にキャリーさせて打ちましたが、それでもボールは止まらず奥にこぼれてしまいました。ジョージアを見ていると、セカンドをたぶん8番アイアンくらいでパンチショットのように打ち、転がしでグリーンに乗せていました。「さすがだな」と。生まれ育ったリンクスの環境だからこそできる、本能を使ったプレーという感じです。日本人にはなかなかそういう選択肢はないし、イメージしづらいですからね。
今週は久しぶりにLPGAのメンバーやキャディさんたちとも会えて、とても楽しい時間を過ごしています。(宮里)藍ちゃんのバッグをずっと担いでいたミックさんとも久しぶりに再会できたのが嬉しくて、一緒に写真を撮ってすぐに藍ちゃんに送りました(笑)。藍ちゃんも久しぶりの彼の姿に喜んでくれましたよ。やっぱりLPGAの雰囲気はいいなあと思います。試合の緊張感や選手たちの熱気が、私にもいい刺激を運んできてくれました。

宮里藍のキャディを長年していたミックさんと。「今のメインは欧州男子のキャディかな。今週は、アリヤ(・ジュタヌガーン)のバッグを担ぐそうです」
今週のスコットランドで予選を通過し、有資格者を除く上位3人に入ることができれば、翌週のAIG女子オープンに出場できます。AIG、久しぶりに出たいですねえ。もしダメでも、来週の月曜日にAIGの会場(ロイヤルリザム&セントアンズ)のすぐ隣にあるコースでマンデートーナメントに出場します。今年のAIGにも日本の若い選手たちがたくさん出場すると思いますから、私もぜひ頑張りたいですね!
(※編集部注:上原彩子は「ISPS HANDAスコットランド女子オープン」において、初日「76」、2日目「78」のトータル10オーバーとし、カットラインに4打及ばず無念の予選落ちとなった。しかし、その前向きな視線はすでに月曜日のAIG女子オープン・マンデートーナメントでの出場権獲得へと向けられている)
写真/本人提供



